英国アンティーク、ヴィクトリア時代のライティングスロープ。
格別に美しく、古い仕掛け箱のご紹介です。
このような箱はライティング・スロープ/Writing Slope、もしくはライティング・ボックス/Writing Box、ライティング・キャビネット/Writing Cabinet、ラップ・デスク/Lap Desk等と呼ばれるものです。
18世紀後半から19世紀にかけての時代、世界中へと進出した英国。彼らは小さな箱に工夫を凝らし、旅先や戦いの遠征先でも携帯していればいつでも書き物ができるように様々な造りを施しました。インク壺、ペン、そして紙。それらが効率的に収納され、しっかりと鍵をかければ誰にもみられない。ぱかり、と開けば、程よい傾斜がつけられたペン書きに最適なレザー面が現れ、船上でも、野戦地でも、すらすらとペンを運ぶことができたのです。
ライティング・スロープには様々なスタイルがありますが、基本的には贅沢な持ち物であったため、仕様は豪華。使われている材はマホガニー、ローズウッド、そしてウォールナットなどがほとんどで、そこに違う色の木をはめ込む象嵌が施されていたり、金属象嵌のものなどもみられます。
さて、今回ご紹介するのはそんなヴィクトリア時代のライティングスロープ。
幅約35.5cmと比較的小ぶりなサイズで、初めから前面はゆるやかなスロープとなっているタイプです。
まず目を惹くのは表面材の「Figured Walnut」。「Figured」とは「模様のある」「絵のような」という意味で、単なる杢目ではなく特徴的な杢目をもつ材をそう呼ぶことが多くあります。ウォールナットは根元の瘤部分をバーウォールナットと呼び、細かな渦巻のような杢目を珍重しますが、今回の材はその渦巻を処々に配しながらも間を雲のような杢目が繋ぐ、まさに「絵のような」杢目となっています。自然が作り出した造形美に感嘆させられるばかりです。
また、鍵穴飾りとカルトゥーシュ部分（中央の長方形）にはマザーオブパールが使われています。虹色を潜ませたマザーオブパールはウォールナットとよく合い、優雅な雰囲気を奏でます。カルトゥーシュ部分は希望であれば持ち主のモノグラム等を刻んだそうですが、今回は「VACANT＝空白」となっているタイプです。
手前から蓋を開ければ、ブラウンの羊皮が貼られたスロープが出現。
そしてスロープ上面の蓋を開けば、インク壺やペントレイ、小物入れのコーナーが現れます。このあたりに切手などを仕舞っていたのではないでしょうか。ツマミもマザーオブパールで、黒塗装仕上げとも良いコントラストを見せています。
向かって右側はインク壺でねじ込んで締めるようになっていますが、向かって左側の硝子瓶は蓋は乗せるだけで、蓋の裏側にはコルク状のものがついています。販売していた英国人のマダムに用途を聞いたところ、これはパッドとしてインクや紙をおさえるために使うもの、との説明がありました。コルク部分に以前は布やクッション状のものがついていたのかもしれません。
通常の業務はレザーのスロープ面に書類を置き、インク壺やペントレイを使いつつ、書き物をしていたのでしょう。
さらにスロープを開けば、内面はマホガニーの艶が美しい書類入れとなっており、ここにはA4サイズをそのままいれることができます。書き終わった書類や、必要な紙類をここに仕舞っていたことと思います。
文字をしたためる為に作られた、美しき小家具。幽玄の深みを持つウォールナットの小箱は、材や造りの美しさもさることながら、「人が文字を書く」ことの尊さも内包しているような気がします。
140年の時を超えたライティングスロープと向き合う時、貴方はどんな文字を書くのでしょうか。
◆England
◆推定製造年代:c.1880年代
◆素材：木（化粧はウォールナット、本体はマホガニー）、マザーオブパール、レザー、ガラス、金属、布
◆サイズ(一番小さい時の外寸）：幅約35.5cm 奥行約25.5 高さ約9.1cm
◆ペントレイ部分幅：約21.2cm
◆在庫数：1点のみ
◆重量：2.45kg
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。
＊レザー部分は比較的近年やりかえたものと思われます。
＊専用の鍵が付属します。中の金物は古い物ですので、頻繁な施錠はおすすめいたしません。
＊向かって左側の硝子瓶の口にわずかに欠けがみられます。蓋を閉めれば見えません。
＊詳細は画像にてご確認ください。
＊画像の備品やペンは付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
