Search This Blog

Saturday

小さくクールなブッシュ社の逸品 / Antique Pair of Miniature Folding Binoculars with Case

 英国アンティーク、ケース付小型双眼鏡。



















英国のマーケットで手に入れた、折りたたみ式小型双眼鏡。


黒いレザーケースにぴっちりと納まっており、中からは黒光りするずっしりと小さな物体を取り出すことが出来ます。中に納められた円柱をくるりと回転させ、レンズを廻しだせば、コンパクトな双眼鏡が出現します。



本体には以下の文字がみられます。


Busch

"Winett" Binocular

Pat. Appd for




英国サイエンスミュージアムグループのサイト、にケース付きではないですがそっくりな品物をみつけたのでご紹介しておきます。


「Pair of miniature folding opera glass binoculars」の頁

https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co4786/pair-of-miniature-folding-opera-glass-binoculars-field-glasses-binoculars



ただ、サイエンスミュージアムのコレクションは一番下の文字が「Patent」となっています。今回ご紹介するものは「Pat. Appd for/パテント申請中」という意味かと思いますので、厳密にいえばサイエンスミュージアムのコレクションの少し前の物、と推測いたします。



当店では以前同ブッシュ社のプリズムをご紹介したことがございました。その際にご紹介しましたが、ブッシュ社の歴史を少しご説明しておきます。


ドイツのベルリンで生まれた Emil Busch/エミル・ブッシュ(1820-1888)は、写真の分野において、特にカメラレンズの先駆的な仕事をしたことで有名です。

1845年に、叔父のJohann Heinrich August Duncker/ヨハン・ハインリッヒ・アウグスト・ダンカーの科学機器事業を継承したブッシュは、技術はもとより商売人としての訓練や経験を積んで事業を拡大させ、軍用光学機器なども手掛けました。

1852年、ドイツのラテノウ/Rathenow にある彼の会社/The Busch-Rathenow Company は、カメラの製造を始め、1865年に新しく開発した広角レンズ「Pantoskop」の特許を取得し、写真製品部門で賞を受賞しました。

その頃、Carl Zeiss AG / カール・ツァイスAG とも強力な関係を築き、市場をほぼ独占していたと言われています。

同社は時代とともに変化し、その名前は Optische Anstalt Rathenow となり、1872年、Emil Busch AG / エミル・ブッシュAG として株式市場に上場しました。

カール・ツァイスとの強い関係は1920年代後半まで続き、1927年、カール・ツァイスが過半数の株主となり、ブッシュはカメラの製造を続けましたが、レンズの製造は中止しました。




このように基本的にブッシュ社はドイツがメインですが、サイエンスミュージアムによればこのタイプの双眼鏡はロンドンの「Emil Busch Optical Company Limited」の品物であるとのことですので、ロンドンの「エミルブッシュ社」が販売していたものであると思われます。ヨーロッパのカメラ(レンズ)市場において多大な力を持っていた同社ですので、英国に会社を持っていたことは当然と思えます。


エミル・ブッシュには同じ「Winett」という名前のカメラシリーズが存在していました。カメラ撮影時、やや遠い対象物を確認するときに、補佐として双眼鏡も使うことがあるため、自分のカメラと同じシリーズの双眼鏡を使いたくなる・・・。その為もあって開発されたのかもしれません。



倍率は2-3倍とそれほどの高性能ではございませんが、コンパクトな黒いボディは機能的で、独特の開き方はメカニック好きな方には堪らないのではないでしょうか。

レンズ部分が動きますので、自分の眼の幅に合わせて動かすことができるという機能性も備わっています。

この双眼鏡に対し、ケースは恐らく色々なデザインがあったと思われますが、今回はブラックレザーにがま口タイプの口金で仕上げられたケースが付属します。


ポケットに簡単に納まるコンパクトサイズの双眼鏡は、実は100年近く前のブッシュ社のもの。ドイツ由来のクールな逸品をポケットに装備し、散策時にさりげなく取り出して楽しむのはいかがでしょうか。



◆England

◆Emil Busch Optical Company Limited

◆推定製造年代:c.1910-1939年

◆素材:真鍮・アルミ

◆ケース外寸サイズ:約8.2×5.1cm 厚み約2.7cm

◆本体サイズ折りたたみ時:幅約6.6cm 厚み約2.5cm 高さ約3.5cm

◆在庫数:1点のみ

◆総重量:183g




【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ変色等がみられますが、総じてコンディションは良いと思います。

*詳細は画像にてご確認ください。

*オリジナルと思われるケースが付属します。ケースには汚れや傷みがみられますが、破れはございません。口金はかろうじてとまる状態です。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。 





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A


Wednesday

初めて当店でお買い物をし、その際にクレジットカードご利用される方へ~決済方法を銀行振込に変更をお願いする場合がございます。


初めて当店でお買い物をし、その際にクレジットカードご利用される方にお願いがございます。


当店はクレジットカード決済システムにヤマトフィナンシャルの「クロネコwebコレクト」を利用しております。それには「不正検知システム」が備わっており、クレジットカードの不正利用を出来るだけ防ぐようになっています。


お客様サイドでは、通常通りカード決済が終わり、完了メールがお手元にいくのですが、当店へはその後に不正検知システムのアラートが届く場合がございます。


昨今はクレジットカードの不正使用が非常に多く、各決済会社ともかなりセキュリティを高くしております。それはしばしばきちんとした持ち主が適正な決済をしても、普段とは異なる方法や金額を決済すると発動してしまうこともあります。


当店としてはそのアラートが来てしまった以上、品物を発送して、もしもその後不正利用と発覚した場合、当店が代金を決済会社から受け取ることができないため、まるまる損害となってしまいます。


そのため、そのアラートが届いた決済に関しましては、当店からお客様宛にメールにて、決済方法を銀行振り込みに変更するようお願いする場合がございますことをご了承ください。


銀行振り込みの入金期限は通常1週間ですが、この場合はそれよりも長くお待ちいたしますので、期限につきましてはご相談をさせてください。


銀行振り込みにご同意いただいた場合は、速やかにカード決済の取り消しを行いますのでご安心ください。


このシステムは数年前からありますが、ここ最近急にアラートが増えました。便利な世の中ですが、それを悪用する人々もいるようで、本当に残念です。当店は出来る限り誠実なお取引を心がけておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。



トッドローリィアンティークス 野口

Monday

竪琴をつま弾く光の神のカード / Antique Playing Card with Box by The National Card Co.

 アメリカアンティーク、箱入りプレイングカード(トランプ)。















英国のアンティークフェアで手に入れた箱入りプレイングカード。


ダークグリーンのクロコダイル風パターンの紙で貼られた箱入りで、金の箔押しでシンプルに「Card」と記されています。


カードの背面には竪琴等の楽器モチーフのパターン。スペードのエースには「APOLLO」「THE NATIONAL CARD CO」「INDIANAPOLIS」「& NEW YORK」の文字が見られます。これはアメリカの「The National Card Co.」社によるカード。



若い頃英国のトランプ工場で働いていた「Samuel J Murray/サミュエル J マレー」により、アメリカ・インディアナポリスで1886年に設立された「The National Card Co.」。


同社は様々なデザインのトランプを販売していましたが、今回ご紹介するのは「APOLLO BRAND/アポロブランド」の「MUSIC BACK/ミュージックバック」とよばれるもの。ギリシアの光の神、アポロは予言・詩歌・音楽および治癒の神とされており、竪琴を持つ姿がよく描かれます。スペードのエースに描かれたアポロ神の竪琴と、背面のミュージックモチーフに通じるものがあり、わかる方には「なるほど」と思わせる意匠となっております。


そして一般のアポロは普通の紙箱に入っているのですが、このお品物の箱は特別な化粧箱となっており、ワンランク上の高級仕様であったことを伺わせます。なお、The National Card Co.は1895年で会社をたたみますが、同ブランドを冠したトランプはその後も生産されておりますので、それだけ市場が出来ていたという事なのではないかと思います。


今回のカードは52枚のセット。ジョーカー札はございません。通説として、ジョーカー札の登場は19世紀後半のアメリカとされており、ユーカー(ブリッジ等を含むトリックテイキングゲームの一種)が流行したとき、その最高位の切り札として追加されたといわれています。はっきり「何年から登場」というわけではないので、今回のお品物は、まだジョーカーが無い時のものか、もしくは無いバージョンだったのかもしれません。


あまり使われていなかったようで、カード自体のコンディションは良好。ただ、外箱に若干の破れがございますことをご報告しておきます。現在のところ開け閉めに問題はなく、蓋は摩擦によりわりとしっかりと閉まります。


アナログなカードゲームに興じることは少なくなったかもしれませんが、だからこそ揃えるカードにはこだわりたいもの。古代の神をモチーフとしたカードは実用に十分ご使用いただける佳品。


ストーリーをもつアンティークアイテムとして愛でつつ、装備しておくのはいかがでしょうか。




◆England買付/USA

◆The National Card Co.

◆推定製造年代:c.1886-1895年

◆素材:紙

◆箱サイズ:7.6×9.5×2.9cm

◆カードサイズ:6.2×8.8cm

◆在庫数:1セットのみ(52枚・ジョーカー無し)

◆箱込総重量:142g


【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、紙の擦れ、変色がみられます。

*箱には一部破れがみられます。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。 





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。


Todd Lowrey Antiques

by d+A


ヨークの眼鏡屋から始まった英国光学機器の一頁 / Antique Surveyors Brass Compass with Leather Case by T.COOKE & SONS LTD

 英国アンティーク、レザーケース入りサーベイヤーズコンパス。




























ずっしりと大きいサーベイヤーズコンパスを手に入れました。


「サーベイヤーズコンパス/Surveyors Compass」とは測量用コンパスのこと。当店で度々紹介してきたマーチングコンパス(軍用の行軍コンパス)とは異なり、測量用ですので、より大きく、そして底面にはスタンドに取り付けられるように溝が切ってあるのが特徴です。

機能としてはプリズムコンパスですが、測る方向により太陽の光をまともに受けつつ測る場合もあるため、赤いグラス、そして暗めの緑のガラスが可動式となってついており、光の具合によってどちらか、もしくは両方を通じて見ることが出来るようになっています。プリズムの窓にも小さな蓋がついているのも、アナログな器械好きとしてはたまらないポイントと言えそうです。


オリジナルのレザーケースに入っており、プリズムと可動ガラスがちょうど収まる凸部がついております。充分にお使いいただけますが、留めるベルト部分のレザーに傷みが見られます。少々補修はされておりますが、この部分は使っていればどうしても傷む部分ですので、今後はあまり負荷がかからないようにご使用いただいた方が良いと思います。どうかご了承いただきますようお願いいたします。


コンパス本体の大きさは直径約11.4cmと堂々たるサイズ。本体は黒仕上げの真鍮製で、蓋の裏側などに黒仕上げが剥げて真鍮が見えている部分があります。蓋はネジでとまっているわけでも、丁番がついているわけでもないので、とにかく力を込めて「ぱかっ」と開けてください。きつめですので、閉めた時には逆さにしても落ちないほどのきつさとなっています。


蓋には以下の文字が見られます。



T.COOKE & SONS LTD

LONDON & YORK

No. 2808




まずは「T.COOKE & SONS LTD」のご説明からいたしましょう。


創業者は「Thomas Cooke/トーマス・クック(1807-1868)」。

(英国文化をご存じの方は「あのトーマス・クック?」と思われるかもしれませんが、旅行会社を創業したトーマス・クックとは別人ですので念のため。)


ヨークシャーのアランソープで靴屋の息子として生まれたトーマスは、正式な教育は小学校の2年間のみでしたが、その後船員になることを目指し、独学で航海術と天文学を学びます。

ウイスキータンブラーの底からレンズを手で削り、フレームにはんだ付けした望遠鏡などを自作していたといわれます。その後はヨークに移り、教師として働きながら結婚。やがて眼鏡技師となり、店を持つようになります。

望遠鏡や機械技師として塔時計を製作するなど業務を広げ、1837年までには「T. Cooke & Sons」を設立。1855年にはパリ万国博覧会に出品し、7.5インチ赤道屈折装置で一等勲章を受賞しました。屈折鏡、天体望遠鏡等々の製作にかかわり、グリニッジの王立天文台用の望遠鏡も製作しています。


1868年にトーマスが亡くなった後、事業は彼の息子たちによって引き継がれました。カメラレンズや海軍用の照準補正システムの開発などにも力を入れますが、1915年にはヴィッカースが同社の経営権を手に入れ、1922年にはトラフトン&シムズと合併してクック・トラフトン&シムズとなっていきます。よって「T.COOKE & SONS LTD」のブランドは1921年までのものと思われます。


ヴィクトリア時代初期から、繁栄のヴィクトリア時代を通して大きくなり、第一次大戦後には終わりを迎えた光学機器商、T.COOKE & SONS LTD。同社の歴史は、英国の歴史の一頁をみるようです。


がっしり、ずっしりとした測量用コンパスを触る度に、ヨークの眼鏡屋から天体望遠鏡製造まで手掛けたトーマスのことが頭をよぎり、なんとも不思議な気分を味うことでしょう。


英国のアナログな器械がもつ確かな手触りを感じつつ、お愉しみ下さい。




◆England

◆T.COOKE & SONS LTD

◆推定製造年代:c.1921年以前

◆素材:真鍮、ガラス、金属、革、他

◆ケースサイズ:直径約11.5cm 凸部分含む幅約14.5cm 厚み約4.7cm

◆本体サイズ:蓋直径約10.3cm ガラス面直径約8.8cm プリズム部含む幅約12.7cm サイディングスリットを立てた時の全体高さ約10.8cm

◆本体重量:629g

◆ケース込総重量:753g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。

*コンパス内部の円針、140度のあたりが下方向に緩やかに凹んでいます。もとからこのような仕様なのか、後年そうなったのかは不明です。

*ケースにはレザーの傷みがみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A