Search This Blog

Friday

イルフラクーム港とランターンの丘 / Antique Bookmark with Stanhope Lens "IILFRACOMBE HARBOUR & LANTERN HILL"

 英国アンティーク、スタンホープ付ブックマーク。

















ブックマークとは「しおり/栞」のこと。


日本の短冊のようなしおりとは異なり、ヨーロッパにおいてブックマークは金属製のクリップ状のものが定番です。小さくて機能もシンプルなので、色々なデザインのものを見ることが出来、コレクターもいるアイテムとなっています。



今回ご紹介するのは、英国のアンティークフェアで手に入れたブックマーク。


マーク部分はシックなシルバー系の色味の金属、柄の部分はゴールド系の金属製で、柄には細かい筋状の細工が施されています。これだけでも素敵なのですが、出色は一見ではわからない場所に隠された仕掛け。


ブックマークの柄部分には直径わずか数ミリの穴が開いており、レンズが嵌めこまれています。光に向けて覗き込めば、そこには風景写真と以下の文字をみることができます。(カメラのレンズですと文字までピントが合わないのですが、直接見れば文字まで読むことが出来ます)


IILFRACOMBE HARBOUR & LANTERN HILL

イルフラクーム港とランターンの丘



イルフラクームとはデボン州の北側、ブリストル海峡に面した海辺の町。そこの港と、港に近いランターンの丘がモチーフとなっています。ランターンの丘の上には灯台を兼ねた聖ニコラス教会が建っており、そのあたりの名物となっているようです。



そして、この覗く仕組みは通称「スタンホープ」といいます。


まず、「スタンホープレンズ/Stanhope Lens(もしくはスタンホープ)」とは、18世紀後半に英国の化学者、Charles Stanhope伯爵が発明した両面共に凸形状の拡大鏡のこと。後にフランス人写真家の Rene Dagron が、自身が使い易いよう改良したものが一般的になったと言われています。


このスタンホープは拡大率が高いため、ごくごく小さな写真(マイクロフォトグラフ)も拡大してみることが可能でした。そのため、たとえばロザリオ等の中心にスタンホープを組み込み、なかにマイクロフォトグラフを仕込んで、各地のお土産物として販売することが、1870-1910年頃まで大層流行しました。レンズ自体が2ミリから3ミリとかなり小さい上に、マイクロフォトグラフを撮影するのも大変な作業だったとか。ただ、小さいが故に色々なアイテムに組み込みやすく、スタンホープコレクターもいるというこだわりの仕掛けとなっています。



おそらく、このブックマークはイルフラクームの町のお土産物として作られたと思われます。実用的でありこぶりなブックマークは荷物にならず、お土産に最適。そして小さなレンズを覗き込めば、イルフラクームの景色がみえてくる・・・・。それなりに凝った仕掛けなので、価格も安くはなかったでしょう。本当に自分の為に、もしくは大切な人のために手に入れたのかもしれません。



貴方の大切な蔵書に、古いブックマークはいかがでしょう。

100年前の人々がしていたことと同じように、そこに秘められた想い出を時折覗きつつ、ゆっくりと頁を繰るのも一興かと思います。




◆England

◆推定製造年代:c.1900年代頃

◆素材:金属、ガラス

◆サイズ:全長約8.4cm 幅約1.8cm 厚み約1.4cm

◆在庫数:1点のみ

◆重量:5g



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み等がみられます。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A


ウェールズの中世の城を眺める / Antique Georgian Print with Hogarth Frame

 英国アンティーク、フレーミングされたジョージアンの手彩色鋼版画。
















英国で手に入れた端正なアートフレーム。タイトルは「RUTHIN CASTLE DENBIGHSHIRE」。

まず、「RUTHIN CASTLE/ルーシン城」とはウェールズ、デンビーシャーに在るお城のこと。13世紀後半に建設され、戦争の拠点となったり後には病院となるなど様々な歴史を経て、現在は一部がホテルとなっています。


中にある版画は1830年に発刊された「Wales Illustrated in a Series of Views.」の1枚。ウエールズの様々な名所を集めた鋼版画(Steel engraving) 及び説明書きで構成された小冊子で、鋼版画は「Henry Gastineau/ヘンリー・ガスティノー(1791-1876)」によるものでした。


このような小冊子は当時よく発刊されており、数多くの名所を題材に数冊から10冊以上と、連続してシリーズとして発刊されることが多かったようです。写真が無い時代、各地の名所を愉しむためには格好のメディアのひとつだったのかもしれません。基本的には製本されておらず、数枚で1冊(束)だったので、額装をして家を飾ることも良く行われていたようです。


今回のお品物も額装されており、背面をみれば比較的新しい額装で、貼られたラベルには以下の文字がみられます。



Hand coloured and produced 

for

Olwen

Caradoc Evans

Conway, Wales.

tel.Conway 3241

MADE IN GREAT BRITAIN




まずは「Olwen Caradoc Evans/オルウェン・カラドック・エヴァンス」について。


オルウェン・カラドック・エヴァンスは1918年にウェールズの海辺の町「Cricieth/クリキエス」で生まれた女性。後に結婚、そしてロンドンでの仕事の後にウェールズへ戻りクリキエスより少し内陸に入った「Llanrwst/ランウスト」に「Tu Hwnt i'r Bont」をオープンし、地図、版画、海図の収集と販売を始めました。彼女は1959年に「Conway/コンウェイ」に移り、1964年に「ウェールズの地図とウェールズの地図製作者」を、1969年に「ウェールズの海洋計画と海図」を出版しました。



参考:National Library of Wales

Olwen Caradoc Evansの頁

https://archives.library.wales/index.php/evans-olwen-caradoc



以上のことから、このラベルは彼女がコンウェイに移ったのち、1959年以降のものであることがわかります。


オルウェンは1830年代のヘンリー・ガスティノーによる鋼版画に手彩色を施し、フレーミングして販売していたのでしょう。

納められているブラックベースにゴールドがポイントでついた細いフレームは「Hogarth Frame/ホガース・フレーム」と呼ばれるもの。英国では一般的にみられるこのフレームは、ヴィクトリア時代に美術版画出版社を設立し、版画販売者、額縁製作者、美術修復家としても活動していた「ジョセフ・ホガース/Joseph Hogarth(1801-1879)」が由来です。


もう一度品物をみてみましょう。木々に囲まれたルーシン城。その前を犬と共に歩くのは家族連れでしょうか。右手には道や植栽の手入れをしているらしき人も見え、平和でのんびりとした空気で満ちているように思えます。


ウェールズは16世紀にイングランドに併合されていますので、19世紀にはルーシン城は既に戦うための城ではなくなっていました。その一風景をとらえた鋼版画は、ウェールズの歴史的名所を紹介するものとして喜ばれたのかもしれません。



鋼版画を眺めつつ、ルーシン城の歴史を紐解く。

そんな時間を過ごすのも一興かと思うのですが、いかがでしょうか。



◆England(Wales)

◆推定製造年代:プリントc.1830年、額装:1960年代頃

◆素材:紙、木、ガラス、他

◆サイズ:約23.3×18.3cm 厚み約1.3cm(+吊り金具)

◆重量:328g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、金彩の剥がれや塗装のトビ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A


描くための楽器とは / Antique Drop Bow Compass with Box by E.O.Richter & Co.

 ドイツアンティーク、ドロップコンパス。


















「図面を書く」という作業は、現在どのくらいの人が行っているのでしょうか。



ほとんどの場合は当たり前のようにパソコンで作業し、プリントアウトすることでしょう。いえ、最近はプリントアウトすらしない場合もあるかもしれません。


でも少し前は、鉛筆や定規、コンパスで書くのが当たり前でしたし、清書はロットリング、その前はつけペンや筆、烏口でした。美しく均一な線を引くことは良い仕事をするための基本であり、よい設計者はよい線を引くことが出来る、という風な常識もあったように思います。(逆ではなく)


線を引くために生まれた数々の製図機器。英語では「Drawing instrument」といいますが「instrument」は日本語に訳すと第一候補は「楽器」となります。「描く楽器」とはまさにいいえて妙だな、と訳すたびに感心してしまいます。




前段が長くなりました。今回ご紹介するのは、そのなかでも特に美しい「Drawing instrument」です。


端正な黒いケース。向かって右端からバーを引き出して開ける、という開き方からして他とは異なるギミックを感じます。開けば濃紺のなかに、金色と銀色で構成された美しいコンパスが現れます。


これは「Drop Bow Compass」。日本語では「ドロップコンパス」とよばれるものです。


「drop bow compass=ドロップコンパス」とは、精密製図等に使用される極小円引き用の特殊コンパスのこと。 人差し指で中心軸を押し、中指と親指で外軸を回しながら描くため、他のコンパスと違い、針先が少しも回転しませんので、中心が狂ったり紙面を傷つけたりすることがありません。現代日本でも製図機器メーカーから「ドロップコンパス」として販売されており、手に入れることができます。このコンパスは烏口ですので、インクでの清書用と思われます。


さて、もう少し品物を見てみましょう。


ケースの蓋にはロゴマークと共に以下の文字が見られます。


E.O.Richter & Co.

Pracision



「E.O.Richter=Emil Oskar Richter/エミール・オスカー・リヒター(1841-1905)」はドイツの実業家であり発明家です。

1868年にドイツのザクセン州ケムニッツで時計工房を始めたのが始まり。1874-1875年頃にドロップボウコンパスを発明し、特許を取得。E.O.リヒター社を設立し、後に世界最大の製図機器メーカーとなります。1905年にエミールが亡くなった後も同社は存続し、1950年代頃までは名前を冠した品物をみることができます。また、「Pracision」は「精度」というドイツ語なので、「精度が高い」という意味かと思います。


ドロップコンパスは1875年頃からありますが、今回のお品物はケース等の状態から1920年代頃のものかと推測いたします。


小ぶりなケースからそっと取り出し、ネジを調整し、回してみる。

例え実際に使用しなくても、「描く楽器」そのものを堪能していただけることは間違いございません。ドロップコンパスの元祖でもあるE.O.リヒター社による逸品をお届けいたします。




◆Germany

◆E.O.Richter & Co.

◆推定製造年代:c.1920年代頃

◆素材:真鍮、金属、他

◆ケースサイズ:約13.6×3.9cm 高さ約2cm

◆コンパスサイズ:全長約10.5~11cm

◆総重量:60g(コンパス本体のみ17g)

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。


Todd Lowrey Antiques

by d+A


19世紀のトリプルレンズ / Antique Folding Pocket Triple Lens Magnifying Glass

 フランスアンティーク、トリプルレンズの拡大鏡。


















小さくても美しさと機能性に満ちた折りたたみ式拡大鏡のご紹介です。


ケースから繰り出すようにスライドしてレンズが出てくるタイプで、特徴は「Triple Lens/トリプルレンズ」であること。3枚のレンズはそれぞれ微妙に拡大率が異なり、レンズ面積が小さいほど拡大率が高くなります。1枚でも、2枚でも、そして3枚でも、対象物によって自在に組み合わせることが出来る便利アイテム。



ケースとフレームの材は「Cow Horn/カウホーン/牛の角」となります。加工がしやすく、磨くことで得られるなめらかで美しい艶を持ち、ひとつひとつ微妙に異なる模様を持つことが特徴のカウホーン。今回のお品物は、一見ほぼ黒なのですが、見る方向や光の具合によって、色味がごく微妙なブラウン系にも見え、単一ではない質感がお愉しみいただけます。


触ると金属のように固く冷たくはなく、どこか柔らかで優しい手触りは、カウホーンならではといえるでしょう。銘などは無く、シンプルな材と工程だけに製造年代は難しいところですが、販売していたディーラーによれば製造は19世紀であろうとのこと。このパターンのものはそのくらいの年代のものが多いので、私も同意いたします。


繰り出す動作はスムーズ、かつ、摩擦によりそれなりにケースに納まりますので、携帯するのにレンズが傷つく心配は少ないと思います。

取り出すときに引っかける凸部が、まるで飾りのように見え、機能性を満たしつつもどこか洒落ているのはフランス製ならでは。



19世紀のトリプルレンズを貴方のポケットに納めて、アンティークハントに出掛けてみるのはいかがでしょうか。




◆France

◆推定製造年代:c.19世紀

◆素材:牛の角、ガラス、金属

◆サイズ(折りたたみ時):全長約6.5cm 幅約3.2cm 厚み約1.8cm

◆重量:27g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*レンズに欠けやヒビはみられません。

*レンズの出し入れはスムーズです。収納時は摩擦でそれなりにとまります。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。


Todd Lowrey Antiques

by d+A