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Friday

ディケンズが生み出した親愛なる悪役 / Vintage Royal Doulton Figure "Fagin"

 英国ヴィンテージ、ロイヤルドルトンによるフィギュア「フェイギン」。













英国を代表する作家、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)。

今回は彼の作品の登場人物のフィギュアのご紹介です。


名前は「Fagin/フェイギン」。


チャールズ・ディケンズにより1838年に発表された小説「オリバー・ツイスト」に登場する人物で、子供たちにスリやその他の犯罪で生計を立てることを教え、儲けを搾取し、その代わりに(劣悪な)隠れ家を提供する、最悪の守銭奴として描かれています。

孤児オリバーが様々な困苦にもめげずに立派に成長するまでを描く「オリバー・ツイスト」は当時大層な人気を博し、ディケンズの出世作となります。

そのため、悪人「フェイギン」の名前も有名になり、一部では「キッズマン*」の代わりに「フェイギン」が使われるようになったという話もあるようです。
*キッズマンとは、子供を雇ってスリとして訓練し、子供たちが盗んだ品物と引き換えに食べ物や住まいを提供する大人のこと。

最終的にはつかまって絞首刑にされてしまうフェイギンは他の人に話しかけるときに「My dear/親愛なる」というフレーズを常に使うことでも知られています。



今回のお品物は高さ10cm強の小型フィギュアではありますが、長い髭、汚れたローブ、そして少し体をかしげながら卑屈な笑いを浮かべ、妙な迫力をもっております。

とっても悪い奴なのですが、それゆえにキャラクターとして確立し、認知されてきたフェイギンは、彼ならではの個性をもって人々に愛されてきたのかもしれません。フェイギンのロイヤルドルトンのフィギュアは1932-1983年の間作られていましたが、このお品物はバックスタンプから1959年までのものだと思われます。



名窯ロイヤルドルトンによる稀代の悪役を、貴方のお手元でご鑑賞ください。


◆England
◆推定製造年代:c.1932-1959年
◆素材:陶器
◆サイズ:高さ約10.1cm 
◆重量:63g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですが、ワレや欠けはみあたりません。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。 




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。



Todd Lowrey Antiques
by d+A


優雅な装丁で読むオリバー・ゴールドスミス/ Antique Book "THE MISCELLANEOUS WORKS OF OLIVER GOLDSMITH."

 英国アンティーク、古い小さな本。



















英国のアンティークマーケットで手に入れた古い本。


印象的なのは長辺約10cmという小ささと、深いグリーンに金のエンボスが施された美しい装丁。オーヴァルの周囲を蔓花が取り囲むようなデザインは優雅そのもの。外出先でレディがこんな本を小さなバッグから取り出したなら、それほど魅力的に思えることか。


・・・という妄想はさておき、タイトルと内容をご説明いたしましょう。



THE  MISCELLANEOUS WORKS OF OLIVER GOLDSMITH.
Vol.11

LONDON
ALLAN BELL AND Co., WARWICK SQUARE,

以下略

MDCCCXXXVII




まず作者は「オリバー・ゴールドスミス(1730-1774)」。アイルランドの小説家、劇作家、詩人であり、小説「ウェイクフィールドの牧師/The Vicar of Wakefield(1766年)*日本語訳本あり」等で有名です。

そしてタイトルの「MISCELLANEOUS/ミセレイニアス」とは英語で「種々雑多な、色々な、その他の」の意味となりますので、しいて訳せば「オリバー・ゴールドスミスの色々な作品」という感じでしょうか。オリバー・ゴールドスミス全集、と言い換えても良いかもしれません。この「THE MISCELLANEOUS WORKS OF OLIVER GOLDSMITH.」は何巻かがセットでが色々な時代に様々な装丁で発刊されています。古い物では1792年に発刊された7巻セットなどがあるようです。



今回ご紹介する一冊は、「MDCCCXXXVII」、つまり1837年に発刊されたシリーズの中の第11巻。サイズ的に豆本に近いサイズなので、このセットは巻数が多いのかもしれません。印刷はロンドン、ワーウィックスクエアにあった「ALLAN BELL AND Co.,」です。

1837年といえば、ウィリアム4世が崩御しヴィクトリア女王が即位した年。大英帝国が最も繁栄したヴィクトリア時代が始まった年です。その年に生まれ、ヴィクトリア時代を過ごし、さらに後の時代まで受け継がれてきた小さな本は、どんな人たちの手を経てきたのでしょうか。


200年近い歳月を纏った一冊の本。
存在自体が小説のような、稀有なひとしなを貴方の書棚にいかがでしょうか。





◆England
◆推定製造年代:c.1837年
◆素材:紙、革
◆サイズ:約6.5×10.2cm 厚み約1.8cm
◆重量:82g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、染みや傷み等がみられます。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。 




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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by d+A


9人のミューズを訪れたアテナ / Antique Brass & Copper Bowl on Stand

 英国アンティーク、脚付きボウル。
















英国のアンティークマーケットで手に入れた脚付きボウル。



基本的な材は真鍮、レリーフの面は銅と思われます。わずかに傾き、真鍮と銅のパーツ間には少し隙間がありますが、品物の装飾性が見事で手に入れてしまいました。

まず、興味深いモチーフ。

遠景に神殿を臨み、上空には天使。左右には数人の女性たちが衣を翻しながら集っています。あちこちに楽器や球体など、意味深げなモチーフが点在しています。これは何を描いているのでしょうか。


調べてみたところ、このオリジナルは1603年「Aegidius Sadeler or Saedeler/アイギディウス・サデラーまたはセデラー」によるエッチング「Athena Introduces Painting Among the Muses(もしくはMinerva Introduces Painting to the Liberal Arts)」であることがわかりました。神聖ローマ皇帝とその後継者であるルドルフ2世のプラハ宮廷で主に活躍したフランドルの彫刻家です。

ご参考までに海外の絵画総合サイトの該当ページをご紹介しておきます。

エッチング自体は神話「アテナがミューズに絵画を持ち込む(ミューズを訪れたアテナ)」をモチーフとしています。


まず左側の兜を被っているのが女神アテナ。そのほかの女性は最高神デウスの娘たち、姉妹である9人の芸術の女神(ミューズ)です。

芸術の女神たちはそれぞれ名前をもち、各々のアトリビュート(持ち物)があります。

例えば一番右端、片手で球体を捧げているのは 天文学を司どる女神ウラニアでしょう。彼女のアトリビュートは渾天儀(こんてんぎ:天球儀のこと)。

アテナに寄り添うように立つのは、叙事詩の女神カリオペでしょう。彼女のアトリビュートは書板と鉄筆です。


こんなふうに、各女神の持ち物を探すのは大変ですが、なかなかに楽しい時間のように思います。ボウルの銅はだいぶすり減って見づらい部分もございますが、アイギディウスのエッチングと照らし合わせながらご覧いただければだいぶわかるのではないでしょうか。


ちなみにタイトルの「アテナがミューズに絵画を持ち込む」ですが、これはアテナに関わるギリシア神話がモチーフ。

リューディア(現在のトルコ)には素晴らしい織り手アラクネーがおり、その技はアテナを凌駕する、との評判でした。それを聞きつけたアテナは彼女に織物勝負を挑みます。そのなかで「アテナがミューズに相談を持ち掛けた」という部分があるため、織物の下絵を女神たちに相談に行った場面なのではないかと推測いたします。

勝負の際のアラクネーの織物は素晴らしかったのですが、その出来に激怒したアテネに織物を破壊された上に暴力を振るわれ、アラクネーは自殺する・・・というとんでもない結末。
いかにもギリシア神話らしいといえるかもしれません。



このボウル自体は作られた年代は少なくても19世紀のものと推測いたします。


神話の謎解きがついてくる、風格たっぷりのスタンド付ボウル。ヨーロッパ文化の根底を探りたい方におすすめの、稀有なアンティークのひとしなをお届けいたします。



◆England
◆推定製造年代:c.19世紀
◆素材:真鍮、銅
◆サイズ:直径約18cm 高さ約7.7cm
◆重量:581g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み等がみられます。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。 




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A


毛糸玉と猫と / Antique Cold Painted Vienna Bronze Cat by Bergmann

 オーストリアアンティーク、ヴィエナブロンズの猫。















全長約7cm弱。こぶりながらも驚くほどの重厚感をもつ、小さなブロンズ彫刻のご紹介です。


当店で何度かご紹介している「Vienna Bronze/ヴィエナブロンズ」。


その歴史は19世紀中頃から始まり、現在に至るまで高級品として高く評価されており、展示や蒐集を目的とした貴族や富裕層に向けて販売されてきました。サイズは、小さな1インチのミニチュアからテーブルランプやセンターピースと同じくらいの大きさまで様々です。モチーフは、漫画や風刺画を題材としたものや、実物そっくりにありのままの姿を詳細に表現したミニチュア化された人物や動物もあれば、エロティシズムを表現したもの、擬人化されたペットや森林動物なども多く、特に猫、カエル、犬の作品はウィーンの名物となっています。

1つのブロンズのフィギュアは、多くの場合「砂の鋳造/sand casting」と呼ばれる方法によってパーツごとに鋳造され、それらを溶接して一体化、毛並みや顔立ち等を彫刻し、髭など細部まで手を加えて、画家に引き渡されます。

その一連のプロセスには、多大な労力と高度に熟練した職人の技術が必要とされ、特にコールドペイントによる着色作業は、重要な要素となる表面仕上げとなり、全てが手作業によって、テクスチャーが与えられ、細部に至るまでシャープに整えられます。コールドペイントは、当初は鉛ベースの塗料で行われていましたが、健康上のリスクがあるため、20世紀の変わり目には、油性顔料のエナメル塗料が使われています。



今回ご紹介する猫は、そのヴィエナブロンス、しかもベルクマン工房のマークが入った逸品です。


ベルクマン工房についてのご紹介を少しだけ。


1860年にチェコからウィーンに来た「フランツ・ベルクマン・シニア/Franz Bergmann senior(1861-1936)」は小さなブロンズ工房を設立しました。20世紀の変わり目には、ウィーンはブロンズブームとなり、跡を継いだ息子の「フランツ・ザヴェル・ベルクマン/Franz Xaver Bergmann」は、その先駆者として1900年にさらに新しい工房をオープン。


20世紀初頭のウィーンには50近くのメーカーが存在しており、ベルクマンは当時最もよく知られていた工房でした。ウィーンの多くのブロンズメーカーがそうであったように、作品には作家名を示すマークまたは署名などが印されていないことが多かったそうです。そのため、ベルクマン工房の作品もマークが無いものも多いのですが、あるものは「壺のフォルムの中にBのイニシアル」がついていました。

ベルクマン工房は、1930年代に起こった大恐慌のため閉鎖に追い込まれましたが、数年後、息子の「ロバート・ベルクマン/Robert Bergmann」によって再開され、「カール&イルゼ・フールマン/Karl & Ilse Fuhrmann」が、1960年に残りのベルクマンモデルをすべて購入するまで営業を続けました。



今回のお品物は、前述の「壺のフォルムの中にBのイニシアル」が底面に刻まれています。


足元の毛糸玉にじゃれつく猫。しなやかな体躯と良く表現された毛並み、そしてよくみれば肉球のぷっくりしたピンク色まで確認できます。

またヴィエナブロンスの猫は鋭いほどの髭がついたものが多いのですが、この猫には髭はございません。それはおそらく、この猫が比較的大きめであることから、髭を再現してもかえって見栄えがよくないから敢えてつけなかったのかな、などと推測いたします。

硬い金属で出来ていることを忘れさせるほどの、しなやかな体の表現には見惚れるばかりです。


ウィーンの歴史ある工房が造り出した、小さな猫を一匹いかがでしょう。いつまでも無邪気に毛糸玉と戯れる美しい動物は、貴方に寛ぎのひとときを与えてくれることでしょう。





◆Austria Vienna(Wien)

◆推定製造年:c.1900~1930年代頃

◆素材:真鍮(ブロンズ)

◆サイズ:幅約6.8cm 奥行約5.2cm 高さ約2.7㎝

◆重量:238g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、塗装の剥がれや変色などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。



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