ドイツアンティーク、シルバーハンドルのウォーキングステッキ。
英国のアンティークフェアで手に入れた、エボナイズドの黒いシャフトとシルバーハンドルをもつ凛々しくも優雅なステッキのご紹介です。
まず、シルバーの持ち手の付け根部分には、「800」の数字、およびその隣に、非常にわかりにくいのですが、王冠と三日月のマークをみることができます。
ドイツのシルバーは、「シルバー800」が多く使われますし、マークは英国ほど系統だってはおらず、1888年にそれ以前からも存在した「三日月と王冠」の刻印に統一されました。このことから、このステッキはドイツの物であるといえると思います。また、マークによって年代が特定できるわけではないのですが、持ち手のデザインは間違いなくアールヌーヴォー様式。
ご存じかと思いますが、アールヌーヴォーについて少しだけ説明いたします。
アールヌーヴォーの源は19世紀後半、英国のウィリアム・モリスらが提唱した「アーツ&クラフツ運動」とされます。産業革命後の大量生産の製品に異を唱え、中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張した運動です。
そのアーツ&クラフツが大陸へ渡り、フランス、オーストリア、ベルギー、チェコなどで花開いたのが「アール・ヌーヴォー/Art Nouveau」=「新しい芸術」です。主として植物のもつ有機的な曲線に注目したアール・ヌーヴォー様式は、建築、インテリア、グラフィックデザインや生活小物まで多肢に渡り、意匠の歴史の1頁として刻まれました。
そのなかでもドイツにおいては、アール・ヌーヴォーのことを「ユーゲントシュティール/Jugendstil」と呼びます。
1896年にミュンヘンで創刊された雑誌「ユーゲント/Die Jugend」に因む命名で、ユーゲントは「青春、若々しさ」シュティールは「様式」を意味するドイツ語です。ミュンヘンで刊行された「ユーゲント」は、イラストレーションの多い大衆的な雑誌であり、石版刷りの斬新な表紙や都会的で若々しい感覚のイラストレーションが評判になり、爆発的成功を収めました。
その時の意匠の中心であったのがアール・ヌーヴォーであり、ここから「ユーゲント・シュティール」(青春様式)という言葉が生まれました。フランスの華やかなアール・ヌーヴォーと比べると、ドイツではより合理性や構造が重視される傾向にあり、「構成と装飾の一致」を理念とし、美や快楽と実用性を融合させることを主たる目的とされました。
そんな背景をもつドイツのアールヌーヴォー。
そういわれてみてみれば、今回のステッキの持ち手の装飾は植物の柔らかい曲線をデザイン的に美しく処理しつつも、決して華美ではなく、握る手に優しい合理的な配慮がされているように思えます。
後にヒトラーにより「退廃芸術」とされ弾圧される運命を辿るユーゲントシュティール。美と実用性を融合させたドイツの凛々しいステッキは、その歴史的背景と共に泰然とそこに在ります。
貴方の誠実な友に足る力を持つひとふりを、是非お手元でご堪能ください。
◆Germany
◆推定製造年代:c.1890-1900年代頃
◆素材:シルバー800、木、金属等
◆サイズ:長さ約91.5cm 持ち手幅約10.3cm
◆重量:271g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、凹みや歪み等がみられます。
*シャフトはしっかりとしており、やや重めです。体重をかけるとわずかにしなります。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A