英国アンティーク、脚付きボウル。
英国のアンティークマーケットで手に入れた脚付きボウル。
基本的な材は真鍮、レリーフの面は銅と思われます。わずかに傾き、真鍮と銅のパーツ間には少し隙間がありますが、品物の装飾性が見事で手に入れてしまいました。
まず、興味深いモチーフ。
遠景に神殿を臨み、上空には天使。左右には数人の女性たちが衣を翻しながら集っています。あちこちに楽器や球体など、意味深げなモチーフが点在しています。これは何を描いているのでしょうか。
調べてみたところ、このオリジナルは1603年「Aegidius Sadeler or Saedeler/アイギディウス・サデラーまたはセデラー」によるエッチング「Athena Introduces Painting Among the Muses(もしくはMinerva Introduces Painting to the Liberal Arts)」であることがわかりました。神聖ローマ皇帝とその後継者であるルドルフ2世のプラハ宮廷で主に活躍したフランドルの彫刻家です。
ご参考までに海外の絵画総合サイトの該当ページをご紹介しておきます。
エッチング自体は神話「アテナがミューズに絵画を持ち込む(ミューズを訪れたアテナ)」をモチーフとしています。
まず左側の兜を被っているのが女神アテナ。そのほかの女性は最高神デウスの娘たち、姉妹である9人の芸術の女神(ミューズ)です。
芸術の女神たちはそれぞれ名前をもち、各々のアトリビュート(持ち物)があります。
例えば一番右端、片手で球体を捧げているのは 天文学を司どる女神ウラニアでしょう。彼女のアトリビュートは渾天儀(こんてんぎ:天球儀のこと)。
アテナに寄り添うように立つのは、叙事詩の女神カリオペでしょう。彼女のアトリビュートは書板と鉄筆です。
こんなふうに、各女神の持ち物を探すのは大変ですが、なかなかに楽しい時間のように思います。ボウルの銅はだいぶすり減って見づらい部分もございますが、アイギディウスのエッチングと照らし合わせながらご覧いただければだいぶわかるのではないでしょうか。
ちなみにタイトルの「アテナがミューズに絵画を持ち込む」ですが、これはアテナに関わるギリシア神話がモチーフ。
リューディア(現在のトルコ)には素晴らしい織り手アラクネーがおり、その技はアテナを凌駕する、との評判でした。それを聞きつけたアテナは彼女に織物勝負を挑みます。そのなかで「アテナがミューズに相談を持ち掛けた」という部分があるため、織物の下絵を女神たちに相談に行った場面なのではないかと推測いたします。
勝負の際のアラクネーの織物は素晴らしかったのですが、その出来に激怒したアテネに織物を破壊された上に暴力を振るわれ、アラクネーは自殺する・・・というとんでもない結末。
いかにもギリシア神話らしいといえるかもしれません。
このボウル自体は作られた年代は少なくても19世紀のものと推測いたします。
神話の謎解きがついてくる、風格たっぷりのスタンド付ボウル。ヨーロッパ文化の根底を探りたい方におすすめの、稀有なアンティークのひとしなをお届けいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.19世紀
◆素材:真鍮、銅
◆サイズ:直径約18cm 高さ約7.7cm
◆重量:581g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み等がみられます。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A