ドイツアンティーク、ネステッドカップウェイト(入れ子式カップ型重り)。
ネステッドカップウェイト、別名ニュルンブルグウェイト。当店で以前ご紹介したことがある、19世紀の商人の為の重りです。
とても珍しく興味深いものですが、前回ご紹介したお品物は1つだけ足りないピースがありました。今回はコンプリート・セットのご紹介です。
手に入れたのは英国の大きなアンティークフェア。沢山の小さなストールがならぶ広い屋内のなか、その場所は控えめで、さらに控えめな紳士が奥に座っておりました。彼の前には数点のネステッドカップウェイト。
見つけてしまった私たちは、喜んで彼の前でとまりました。ちょっと不思議そうに私たちを見る紳士。
「これが何か知っているの?」
「もちろん!ちょっと見せてもらっても良いですか?」
彼はいそいそと嬉しそうに品物を広げ、色々説明をしてくれました。ついには私物の専門書まで広げ、「ほらこれはここに出ているものとよく似ている」と得意げに見せてくれます。
いままで手に入れることができなかったコンプリートセットを前に、私たちは価格に若干ひるみつつ、どれを買おうか迷いつつ、しばし逡巡。ついに決めて価格交渉とともに「これが欲しい」と彼に伝えると、ここで急に彼がトーンダウンしたことに気づきました。
恐らくその心は「本当に買うんだ。私の手元から無くなってしまう(泣)」・・・ではなかったかと思います。いえいえ、貴方、売ってましたよね?
もちろんその立場もわきまえていたのでしょう。きちんと価格交渉にも(少し)応じてくださり、私物の本の撮影も許して下さり、力ない微笑みと共に品物を包んでくれました。
前段が長くなりました。そんな経緯と共に手に入れた、ネステッドカップウェイト=コンプリートセットをご紹介いたします。
掌に乗る小さな容器。本体直径約4cm強の姿からは、思いもかけないほどの重量を持っています。蓋をとめる金具を外し、なかを覗けばびっしりと詰まった入れ子式のカップが現れます。1個づつ外していけば、あ、まだある、まだある!・・・と楽しくなってきてしまうこと請け合い。
このような入れ子式カップ型重りは「Nested Cup Weights」とよばれ、商人がコインや貴金属等を量る為に使用されたといわれています。16世紀頃から見られるもので、主としてドイツ、特ににニュルンブルグの町で製造され、「ニュルンブルグウェイト/Nuremberg Weights」として総称されることもあります。
一時期は容器の蓋に動物などの様々な飾りをつけたりすることも流行したようです。中世以来、イタリアとヨーロッパ北部を結ぶ貿易都市であったニュルンブルグ。金属手工業も盛んであったことから、この地でこのような物が生まれたのは納得な気がいたします。
参考:スミソニアン博物館群のひとつ「国立アメリカ歴史博物館/The National Museum of American History」のサイト
「Nested Cup Weights」の頁
https://americanhistory.si.edu/collections/search/object/nmah_994223
今回のセットは、販売してくれた紳士の大切な本、「2000 years of nested cup-weights by Gerard M.M. Houben」の34ページに掲載されている「Late Three-arm Type」ととてもよく似ています。「Three-arm Type」は「the second half of the 19th century(=1850-1899)」によく使われており、ドイツからイタリア、オーストリア、ポルトガルなどに輸出されていたそうです。
実際に量ってみると今回のウェイトは総重量が204から205g。当店はTANITAのデジタルスケールを使っていますが、乗せていると数字が204と205とでちらつくため、その間の重さかと思います。
外側のケースも含め、全部で7パーツとなります。TANITAスケールで測れる重量は以下の通り。
総重量204~205g
外側 111g
39~40g
25g
14g
7g
5g
3g
グラム単位としては統一がとれていませんが、19世紀のイタリア、オーストリア、ポルトガルあたりの重さの単位かもしれないと思います。詳細は調べきることができませんでした。
また、カップ蓋には「P」「8」やクローバーのようなマークが刻まれており、作った職人もしくは工房を示すものと思われますが、詳細は特定できませんでした。
ニュルンブルグウェイトは小さな物のため、完品は非常に珍しく、前述の美術館のサイトで紹介している17世紀のウェイトも、すべて揃っているようには見えません。今回のお品物のように、ぴっちりと詰まったセットは大変貴重だと思います。
真鍮を削り出してつくった精巧な重さのウェイト達。
みっちりと詰まったなかから取り出して触ってみるほどに、当時の商人たちの、僅かな重さの違いにこだわった想いが伝わってくるようです。
貴方のお手元で、ドイツの職人と商人たちの技とこだわりを感じてみてはいかがでしょうか。
◆Germany
◆推定製造年代:c.19世紀
◆素材:真鍮
◆サイズ:本体直径約4.2cm 高さ約2.6cm
◆総重量:204~205g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。
*留め具はしっかりと動作します。
*1点のウェイトのエッジがごくごくわずかに欠けています。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A