英国アンティーク、フレーミングされたジョージアンの手彩色鋼版画。
英国で手に入れた端正なアートフレーム。タイトルは「RUTHIN CASTLE DENBIGHSHIRE」。
まず、「RUTHIN CASTLE/ルーシン城」とはウェールズ、デンビーシャーに在るお城のこと。13世紀後半に建設され、戦争の拠点となったり後には病院となるなど様々な歴史を経て、現在は一部がホテルとなっています。
中にある版画は1830年に発刊された「Wales Illustrated in a Series of Views.」の1枚。ウエールズの様々な名所を集めた鋼版画(Steel engraving) 及び説明書きで構成された小冊子で、鋼版画は「Henry Gastineau/ヘンリー・ガスティノー(1791-1876)」によるものでした。
このような小冊子は当時よく発刊されており、数多くの名所を題材に数冊から10冊以上と、連続してシリーズとして発刊されることが多かったようです。写真が無い時代、各地の名所を愉しむためには格好のメディアのひとつだったのかもしれません。基本的には製本されておらず、数枚で1冊(束)だったので、額装をして家を飾ることも良く行われていたようです。
今回のお品物も額装されており、背面をみれば比較的新しい額装で、貼られたラベルには以下の文字がみられます。
Hand coloured and produced
for
Olwen
Caradoc Evans
Conway, Wales.
tel.Conway 3241
MADE IN GREAT BRITAIN
まずは「Olwen Caradoc Evans/オルウェン・カラドック・エヴァンス」について。
オルウェン・カラドック・エヴァンスは1918年にウェールズの海辺の町「Cricieth/クリキエス」で生まれた女性。後に結婚、そしてロンドンでの仕事の後にウェールズへ戻りクリキエスより少し内陸に入った「Llanrwst/ランウスト」に「Tu Hwnt i'r Bont」をオープンし、地図、版画、海図の収集と販売を始めました。彼女は1959年に「Conway/コンウェイ」に移り、1964年に「ウェールズの地図とウェールズの地図製作者」を、1969年に「ウェールズの海洋計画と海図」を出版しました。
参考:National Library of Wales
Olwen Caradoc Evansの頁
https://archives.library.wales/index.php/evans-olwen-caradoc
以上のことから、このラベルは彼女がコンウェイに移ったのち、1959年以降のものであることがわかります。
オルウェンは1830年代のヘンリー・ガスティノーによる鋼版画に手彩色を施し、フレーミングして販売していたのでしょう。
納められているブラックベースにゴールドがポイントでついた細いフレームは「Hogarth Frame/ホガース・フレーム」と呼ばれるもの。英国では一般的にみられるこのフレームは、ヴィクトリア時代に美術版画出版社を設立し、版画販売者、額縁製作者、美術修復家としても活動していた「ジョセフ・ホガース/Joseph Hogarth(1801-1879)」が由来です。
もう一度品物をみてみましょう。木々に囲まれたルーシン城。その前を犬と共に歩くのは家族連れでしょうか。右手には道や植栽の手入れをしているらしき人も見え、平和でのんびりとした空気で満ちているように思えます。
ウェールズは16世紀にイングランドに併合されていますので、19世紀にはルーシン城は既に戦うための城ではなくなっていました。その一風景をとらえた鋼版画は、ウェールズの歴史的名所を紹介するものとして喜ばれたのかもしれません。
鋼版画を眺めつつ、ルーシン城の歴史を紐解く。
そんな時間を過ごすのも一興かと思うのですが、いかがでしょうか。
◆England(Wales)
◆推定製造年代:プリントc.1830年、額装:1960年代頃
◆素材:紙、木、ガラス、他
◆サイズ:約23.3×18.3cm 厚み約1.3cm(+吊り金具)
◆重量:328g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、金彩の剥がれや塗装のトビ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A