英国買付アンティーク、アートワーク入りフレーム。
英国のアンティークマーケットで手に入れた、こぶりなフレーム。
クラシカルなモチーフで構成された凝ったフレームは金属製の打ち出しで、裏返せばベースとなる木材を確認することが出来ます。このようなタイプのフレームは石膏ベースに金彩を施したものが多いのですが、このお品物は金属製で抑え目の金色の塗装がされており、なかなか珍しい仕様と言えるでしょう。木や金属の印象から、作られたのはおそらく19世紀と推測いたします。
ただ、後ろの嵌める板は少し新しく、ファイバーボードですので、この部分は20世紀初頭かと思います。古いフレームは通常作品を入れたのちは、裏板を釘で留め、さらに紙を貼りこんで容易には取りさせないことがほとんど。作品を取り換えるにはなかなか手がかかります。このフレームは恐らく20世紀初頭に作品を入れ替えたのではないかと思います。
それでは中の作品をみてみましょう。
中心となっているのは、ナポリ出身の画家「Edoardo Tofano/エドアルド・トファーノ(1838-1920)」による「Les jeunes maries/レ・ジュヌ・マリー/新婚夫婦」です。1878年、パリのサロンで展示され、大層人気となった作品。
女性はウェディングドレス、男性はタキシード。正装に身を包んだ二人が結婚式を終え、やっと二人きりになった瞬間をとらえたものです。豪華な設えの部屋で抱擁する美しい二人はまさに絵になり、うっとりといつまでも見ていたい気持ちにさせられます。
そんな有名な作品ですが、残念ながら今回ご紹介するのはオリジナルではございません。ただ、よく見れば明らかに盛り上がった筆致が確認できます。そして、更によく見れば作品に一部段差がみられます。
実は、エドアルド・トファーノのレ・ジュヌ・マリーは、もう少し小さい作品なのです。大層人気となったため、発表後にクロモリトグラフが発売されています。
「chromolithograph/クロモリトグラフ」とは、ドイツの石版画家、ゴドフロア・エンゲルマンが1837年に名付けた最大16色のリトグラフの技法のこと。多色の作品を大量生産するための技法として重宝されましたが、石版への着色に約3か月、千部刷るのにさらに5か月かかったといいます。当時はそれでも画期的だったようですが、やはり時間とコストがかかるため、やがて4色オフセット印刷に取って代わられた技法となります。
おそらく今回ご紹介するお品物は、このクロモリトグラフに紙を足し(正確には大きい紙を裏から貼り)、作品のモチーフを継ぎ足して描き、そしてさらにクロモリトグラフの上にも、立体的にみえるよう筆を加えた・・・・ものだと思います。その観点でいえば、オリジナルと言っても良いかと思います。
紙の背面にさらに赤い布を張った紙を貼ってありますので、裏からの確認は出来ません。そしてその赤い布を張った紙自体も、今回のフレームに嵌めるには微妙にサイズが小さいので、正面からみるとわずかに隙間がみえ、ファイバーボードがみえることもありますのでご了承ください。
恐らくは赤い布を張った紙用の、別のフレームがあったのではないかと思います。過去のある時点で、破損などの理由でこの作品が行き場を無くし、なんとか合いそうなこの金属製フレームに納めてみた、といったところなのではないかと思います。
推測ばかりで申し訳ないのですが、それぞれをよくよく見てみれば、この推測もあながち間違ってはいないのではないか、と思います。
手に入れたのは英国ですが、作品のオリジナルはイタリア人によるものですし、クロモリトグラフはフランス製かもしれません。フレームはおそらく英国だと思うのですが、色々な要素がございますので、ここでは「英国買付アンティーク」としてご紹介しておきます。
A4サイズより少し小さめのフレーム。こぶりながらも、そこに広がる世界は美しく、興味深い要素で満ちています。
日々流れる時間の途中、ふとフレームに目をやれば、止まった時のなかで寄り添う二人がそこにいる。その時だけは、19世紀のイタリア人画家のこと、パリのサロンのこと、古いフレームのこと、クロモリトグラフのこと。そしてこの作品を仕上げた誰かのことを、考えてみてもよいのかもしれません。
◆England買付
◆推定製造年代:c.19世紀(フレーミングは20世紀初頭)
◆素材:金属、ガラス、紙、布、他
◆外寸サイズ:約20.5×24.2cm 厚み約1.5cm(+吊り金具)
◆ガラス見えがかりサイズ:約9.5×13.2cm
◆在庫数:1点のみ
◆重量:442g
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、歪みや変色、塗装の剥がれ等がみられます。
*ガラスのエッジには細かな欠けがみられますが、大きなヒビは無く、欠けはフレームに嵌めれば見えません。
*金属フレームは部分的にエッジがたち気味な部分や、少し亀裂が入っているもございます。お取り扱いにはご注意ください。
*背面の丸環は数回場所を移動させているようです。現在のところ、今ついている場所で安定しています。
*背面の裏板をとめる金具(トンボ)は緩かったりきつかったりします。様子を見ながらご使用ください。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A