ドイツアンティーク、ドロップコンパス。
「図面を書く」という作業は、現在どのくらいの人が行っているのでしょうか。
ほとんどの場合は当たり前のようにパソコンで作業し、プリントアウトすることでしょう。いえ、最近はプリントアウトすらしない場合もあるかもしれません。
でも少し前は、鉛筆や定規、コンパスで書くのが当たり前でしたし、清書はロットリング、その前はつけペンや筆、烏口でした。美しく均一な線を引くことは良い仕事をするための基本であり、よい設計者はよい線を引くことが出来る、という風な常識もあったように思います。(逆ではなく)
線を引くために生まれた数々の製図機器。英語では「Drawing instrument」といいますが「instrument」は日本語に訳すと第一候補は「楽器」となります。「描く楽器」とはまさにいいえて妙だな、と訳すたびに感心してしまいます。
前段が長くなりました。今回ご紹介するのは、そのなかでも特に美しい「Drawing instrument」です。
端正な黒いケース。向かって右端からバーを引き出して開ける、という開き方からして他とは異なるギミックを感じます。開けば濃紺のなかに、金色と銀色で構成された美しいコンパスが現れます。
これは「Drop Bow Compass」。日本語では「ドロップコンパス」とよばれるものです。
「drop bow compass=ドロップコンパス」とは、精密製図等に使用される極小円引き用の特殊コンパスのこと。 人差し指で中心軸を押し、中指と親指で外軸を回しながら描くため、他のコンパスと違い、針先が少しも回転しませんので、中心が狂ったり紙面を傷つけたりすることがありません。現代日本でも製図機器メーカーから「ドロップコンパス」として販売されており、手に入れることができます。このコンパスは烏口ですので、インクでの清書用と思われます。
さて、もう少し品物を見てみましょう。
ケースの蓋にはロゴマークと共に以下の文字が見られます。
E.O.Richter & Co.
Pracision
「E.O.Richter=Emil Oskar Richter/エミール・オスカー・リヒター(1841-1905)」はドイツの実業家であり発明家です。
1868年にドイツのザクセン州ケムニッツで時計工房を始めたのが始まり。1874-1875年頃にドロップボウコンパスを発明し、特許を取得。E.O.リヒター社を設立し、後に世界最大の製図機器メーカーとなります。1905年にエミールが亡くなった後も同社は存続し、1950年代頃までは名前を冠した品物をみることができます。また、「Pracision」は「精度」というドイツ語なので、「精度が高い」という意味かと思います。
ドロップコンパスは1875年頃からありますが、今回のお品物はケース等の状態から1920年代頃のものかと推測いたします。
小ぶりなケースからそっと取り出し、ネジを調整し、回してみる。
例え実際に使用しなくても、「描く楽器」そのものを堪能していただけることは間違いございません。ドロップコンパスの元祖でもあるE.O.リヒター社による逸品をお届けいたします。
◆Germany
◆E.O.Richter & Co.
◆推定製造年代:c.1920年代頃
◆素材:真鍮、金属、他
◆ケースサイズ:約13.6×3.9cm 高さ約2cm
◆コンパスサイズ:全長約10.5~11cm
◆総重量:60g(コンパス本体のみ17g)
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A