この古く美しいアイテムを買い付けたのは、英国北部のやや辺鄙な街のアンティーク・ショップ。
なんでも揃うけど、そう大きくはない街の中心広場から1本入った石造りの建物。
小さい入り口から入れば、そこは意外と広さがあり、やたらと多い壁掛け時計がいっせいに時を刻んでいる空間でした。
店主が得意気に見せてくれたのが、このステレオスコープ。
覗けば、思いがけなく奥行きある世界がひろがっており、思わず手に入れてしまいました。
ステレオスコープとは、ステレオグラムをみるための特別なスコープのこと。
そして、ステレオグラム/stereogram(もしくはステレオビュー)とは、立体画のことです。
立体画は、両方の眼それぞれで焦点をずらして眺めることにより、平面の中から立体の画像や図形が浮かびあがって見えてくる特別な仕掛けを施したもの。
表現方法はイラストや写真などがありますが、カメラと写真の発達とともに、少し焦点の位置をずらしたステレオカメラが発明され、19世紀後半には、その写真を見ることが英国やアメリカで爆発的なブームとなり、多くのステレオグラムや、それをみるためのステレオスコープが生産されました。
今回ご紹介するのはそのステレオスコープとステレオグラムのセット。
裸眼でみることが難しい立体画も、眼を覆うカバーとレンズがついたこのスコープがあれば、だれでも驚くほど奥行きのある立体画を愉しむことができます。
持ち手は折り畳みが可能で、付け根の部分に「UNDERWOOD & UNDERWOOD NEW YORK」の刻印がみられます。
この「UNDERWOOD & UNDERWOOD」とは、1881年にアメリカ・カンザスで アンダーウッド兄弟が設立した会社。1891年にはニューヨークに移転し、世界でも有数のステレオグラム(ステレオビュー)発売元となります。
1910年までに30,000から40,000タイトルのステレオグラムを発売しますが、その後この事業を「Keystone View Company」に売却。第一次世界大戦前にはステレオグラム事業から手を引き、新しい写真事業へと展開していきますが、1940年頃には事業はクローズしてしまいます。
いわばステレオスコープの老舗がつくった逸品は、マホガニーをベースにしつつ、渋い銀色の金属にアールデコ風の飾りが施され、この物自体も美しい美術品のような趣をもっています。
当時のステレオグラム11枚が付属しています。
主として風光明媚な景色が多いようですが、なかにはメイドが戸口からでたところで手紙を手にしている「THE LOVE LETTER」というタイトルもあり、使われていた時代の風俗をしのばせる貴重な資料となっています。
裕福な家では多くのステレオグラムを揃え、ゲストを招いた時の格好の余興としていたとか。
"Company of ladies watching stereoscopic photographs" | by Jacob Spoel /1820-1868 |
アメリカから届いた最新のステレオコープは、多くの話題を提供しつつ、ゲストの手から手へ渡されていたに違いありません。
100年以上前のステレオスコープは、今でも十分に見る者を愉しませてくれます。
ディスプレイしておくのはもちろん、ゲストへのおもてなしにも最適なカンバセーション・ピースとなることでしょう。
◆UNDERWOOD & UNDERWOOD NEW YORK
◆推定製造年代:c.1890-1910年頃
◆素材:木・金属・ガラス・その他
◆サイズ:幅約18.5cm 奥行き約32cm 高さ約10-20cm
◆重量:約218g(スコープ本体)
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪みがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A