約200年前、ジョージ4世の頃に作られたチャイルドチェア。
英国アンティーク家具では珍しい、本格的なチャイルドチェア。
ブレックファーストテーブル、ティーテーブル等々、使う場所や目的ごとに家具を作ってしまうほどの家具好きの英国人ですが、実は、子供用の家具は、英国家具のなかでは少し特殊です。
昔の英国では、上流階級にいくほど、大人と子供の生活場所はしっかりと分けられていました。
そのため、基本的に良い家具はほぼ大人用の物として考えられ、作られており、子供用の家具は大人用の家具を安易に改造することが普通で、子供用として特別に作られるものはほとんどなかったといわれています。
ただ、椅子だけは別。
さすがに使い勝手として大人用椅子の脚を切っただけでは使い勝手上危ないこともあったため、子供用の椅子は初めから子供用として設計されました。
ただ、それはあくまで贅沢品であり、かなり余裕のある家でなくては、わざわざ子供用椅子を用意することはなかったことでしょう。
以上のことから、今回ご紹介するチェアは、かなり富裕層の邸宅で特別に誂えた物であると思われます。
そんな特別な椅子は、材料からして一級品。
それでは、じっくりと見ていきましょう。
まず、材は目の詰まったマホガニー。
時を経てよい色となったマホガニー材は、多少の小傷はあるものの、深い古艶を放ち、しっとりとした感触で触れた手を優しく撫で返してくれます。
足元は構造上、ミニマムにスクエアな形状ですが、全体のフォルム、とくに背もたれ部分にはリージェンシー様式を感じさせます。
リージェンシー様式とは、英国王ジョージ4世の摂政および在位時代(1811‐30)の建築、家具の趣味をさす様式で、ギリシア、ローマなどに影響を受けた比較的直線的で格式を感じさせるデザインが特徴。
後のヴィクトリアンが曲線を多用する華やかで女性的意匠が多いのに対して、リージェンシー様式、そしてジョージアンは男性的で構造的、そして理知的なデザインともいえるでしょう。
座面の上生地は馬毛の織物と思われます。
馬毛(たてがみと尻尾の毛)は丈夫でへたりにくいため、古くから椅子やマットレスの詰め物として、また織物の材としても利用されてきました。
詰め物としては撚って蒸しあげ、くるくると巻き毛の様にさせて使用します。手で押すと「シャリッ」とする感触が特徴。
古いアンティークのチェアの詰め物は、藁や羊毛、そして馬毛が多く、一概ではありませんが、高級品ほど馬毛の比率が高いように思います。
また、馬毛を織物の材として使用すると、とても腰と張りのある織物ができあがりますが、長さに限りがあるため、大きなものは作れないといいます。
このチャイルドチェアのシートをさわると、独特の張りと腰、そしてシャリッとした手触りを感じます。
なんともいえない黒い色も、まさに馬のたてがみ。
座面奥側の一部は、材の取り都合、もしくは補強の意味でしょうか、厚いフェルトのような素材が使われています。
貼り方は木のフレームに布のウェービングテープと麻布で下地を造り、前述の馬毛の詰め物を敷いた後、馬毛の織物でくるみ、周囲を釘打ちで仕上げてあるようです。
座面は落とし込みですので、上生地は比較的簡単に張り替えることが可能。
ご自身で行われても結構ですし、ご依頼いただければ私共の手配でお張替えもさせていただきます。
その際はご要望をお伺いして、お見積もりいたしますので、ご相談ください。
構造はがっしりとしており、現在でも実用に十分耐えることができます。
サイズが小さいので、体格の良い成人男性は座りずらいかと思いますが、小柄な方ならばお座りいただいても大丈夫かと思います。もちろん、ドールやベアなどの指定席にも最適。
200年近い歳月を経てきた、英国アンティーク家具の類まれな逸品。
是非おそばに置いて、英国家具の歴史と伝統が生んだ小さな奇跡をご堪能ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1820年代
◆素材:マホガニー材
◆サイズ:幅約34.5cm 奥行き約32cm 高さ約56.5cm 座面までの高さ約28cm
◆重量:約2.7kg
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、補修跡、材の離れ等がみられますが、ご使用上は問題ないと判断いたします。
*年代からすればとても良いコンディションだと思います。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A