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好古家の貴方へ /Antique Book "THE ANTIQUARY" from PUBLIC LIBRARY N.Z.1873

 英国アンティーク、ニュージーランド公立図書館用の古い本。



















英国のアンティークマーケットで手に入れた古い本。


表紙には以下の文字がみられます。



PUBLIC LIBRARY

OTAGO

NEW ZEALAND



まず、「OTAGO/オタゴ」は、ニュージーランドの南島南東部に位置する地方のこと。つまりこの本はニュージーランド、オタゴの公立図書館の本ということになります。



頁を捲れば以下の文字。



THE ANTIQUARY

by SIR WALTER SCOTT, BART


EDINBURGH

ADAM AND CHARLES BLACK

1873



好古家(骨董商)

ウォルター・スコット卿


エディンバラ

アダム&チャールズ・ブラック

1873




さて、ニュージーランドの歴史を少し振り返ってみましょう。


元来は無人島だったこの島に最初に定住した民族は東ポリネシア系のマオリ人で、10世紀後半ごろにニュージーランドに到達したとされています。その後、オランダのアベル・タスマンによって1642年に「発見」され、1769年、英国人探検家ジェームズ・クックがヨーロッパ人として初めてニュージーランドに上陸を果たします。


名前の由来は、オランダ人が、母国オランダのゼーランド地方にちなんで「新しいゼーランド(ノバ・ゼーランディア)」と名付けたことに由来します。 ゼーランドは、もともと「海の地」という意味で、後に英語化され「ニュージーランド」となりました。


1830年代後半に入ると英国の植民会社であるニュージーランド会社が組織的な植民活動を開始。英国からの入植者が増加し、1840年には英国主権下におかれます。


ただ、土地を巡り、入植者とマオリ人との紛争が絶えず、1845年にはマオリ戦争が勃発。1872年に戦争が終結した後は英国主導による大規模なインフラの整備が進められ、大きな経済発展を遂げることとなります。その後ニュージーランドが独立国家となるのは、第二次大戦後の1947年ということになります。


つまりこの本が発刊された1873年はマオリ戦争がやっと集結し、英国により大規模な整備がすすめられていた時期ということになります。


タイトルの「THE ANTIQUARY」は2018年に翻訳本が発刊されており(なんと本邦初訳とか)、AMAZONで説明をみることができました。以下抜粋です。ちなみにタイトルは「好古家」とされています。


「19世紀の英文学を代表する作家ウォルター・スコットの名作。本邦初訳。舞台は18世紀末のスコットランド。主人公は平穏な好古趣味生活を送る老紳士。旅先での一人の青年との出会いをきっかけに、彼の周りで非日常的な出来事が次々に起こる。作品の内容は、旅、好古趣味、冒険、恋愛、夢想、伝説、決闘、秘密の洞窟、詐欺話、遺跡の探検、財宝探しなど、多岐にわたる。物語は予期せぬ展開を見せるが、基調を成すのは、人々の日常生活や喜怒哀楽である。」


なお、作者であるウォルター・スコット(1771-1832)はスコットランド生まれの詩人、小説家。初代准男爵でありロマン主義作家として歴史小説で名声を博し、英国の作家としては、存命中に国外でも成功を収めた、初めての人気作家といえる人物です。



出版元であるアダム&チャールズ・ブラックは、1807年にエディンバラで創業。1851年にはスコット卿の著作権を手に入れています。1889年にはロンドンのソーホーに移転。1827年から1903年にかけてブリタニカ百科事典を発行したことでも有名で、現在も「A&C Black」としてあるようですが、2002年からはBloomsbury Publishingの所有となっています。


さて、大体の由来がわかったところで、こんな推測はいかがでしょう。


やっとマオリ戦争が終わった新しい土地、ニュージーランド。さあ、どんどん整備を進めなければいけません。生活インフラ、そしてもちろん図書館も必要です。そこに置く本は英国の偉大な作家の名作がふさわしいでしょう!ということで、スコット卿の本をシリーズ化して各地につくった図書館に送りこもう!


・・・といったところなのではないでしょうか。


今回私が手に入れたのは2冊ですが、この設えから見て、きっと沢山のタイトルが同じ装丁で作られ、送られたと思われます。フルバインディングの革装丁は大層立派で、図書館の名前は箔押し。いかにも大英帝国の立派さを強調しているような気がします。



古書としての美しさ。

そして背景にある英国とニュージーランドの関係。

150年経てば1冊の本もまた歴史そのものになる、そんな想いを抱かせます。


好古家の貴方へ、おすすめの一冊です。



◆England

◆推定製造年代:c.1873年

◆素材:紙、革

◆サイズ:約10.5×16.5cm 厚み約2.4cm

◆重量:318g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、傷みや変色、書き込み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A


レタースケールの父の想いを継いで / Antique German Table Lever Postal Scale by JMAZ

 ドイツアンティーク、郵便量り。















印象的な赤い台座を持つ小ぶりなスケール。


レタースケール(ポスタルスケール)は様々なデザインのものがありますが、インダストリアル的な要素が強い物が多いため、この赤はなかなか珍しいかと思います。


よくみれば、支柱には以下の文字が刻印されています。


JMAZ


これは「Jakob Maul in Zell」の略。



さて、ここから少し長い説明になります。


まず、1874年にドイツ人の Philipp Jakob Maul/フィリップ・ヤコブ・モール が、ドイツ最大の港町であるハンブルクでスケールとバロメータの会社、「PH.J.Maul社」を設立。(ドイツ語の「J」は、英語の「Y」のように発音するので、Jakob は、ヤコブと表現します。)


ドイツの聖職者であり技術者の Philipp Matthaus Hahn/フィリップ・マテウス・ハーン が、18世紀に開発した Neigungswaage/傾斜スケール の基礎となる原理を、フィリップ・ヤコブ・モールが、工業規模でレタースケールとして最初に制作し、世界中に輸出した第一人者であったため、彼は「レタースケールの父」と言われるようなります。PH.J.Maul は、1909年にレタースケールを含む多数の特許を申請。

その一つである、平らではない場所や傾斜した地面でもエラーなく正確な重さが軽量できる、「自己バランス振り子」のメカニズムは、当時のレタースケールのスタンダードとなり、様々なサイズとデザインのスケールに応用され、振り子の機構がハウジングに組み込まれたタイプなど、多くのモデルが製造されました。


1922年に、創業者のフィリップ・ヤコブ・モールが他界後は長男、次に、次男の Otto Maul/オットー・モールが引き継ぎました。オットー・モールの死後(1987年)、1989年、115年続いた会社は幕を閉じることとなりますが、会社の伝統は、ドイツ中部のヘッセン州に拠点を置く Jakob Maul GmbH/ヤコブ・モール社によって今日も続けられています。


同じ名前ばかりで混乱しますが、Jakob Maul GmbH の創業者である Jakob Maul/ヤコブ・モールは、フィリップ・ヤコブ・モールの甥。

もともとは叔父の PH.J.Maul の工場で学び、いつか叔父の会社を引き継ぐことを期待していましたが、叔父が子供を授かったことから、結果的に会社を去ることとなり、1912年に、ヤコブ・モール社を設立、1931年、同社でもオフィス事務用品に加えてレタースケールの製造を始め、ヤコブ・モールの死後、1970年になって PH.J.Maul の生産を引き継ぐこととなります。


前述の「Jakob Maul in Zell」とは、「Zell im Odenwald/ツェル イム オーデンヴァルト(ヘッセン州の町名)」の「Jakob Maul/ヤコブ・モール」のことであり、1912年に設立された甥の会社の製品である、ということになります。


機構としては振り子の重りで測ることに加え、調整は根元のネジで全体を傾けることで行うしくみとなっています。

オリジナルのヤコブ・モールの「自己バランス振り子」のメカニズムを踏襲しつつ発展させたような機構は、デザインも美しく、完成度の高い仕上がりとなっています。

また、ネジに彫られている「D.R.P.」はドイツ語「Deutsches Reichtspatent」の略で、「ドイツ帝国特許」のこと。19世紀から1945年まで使われていた言葉となります。


さりげない意匠に工夫がみられる琺瑯の目盛りも、古い物好きにはたまらないのではないでしょうか。

おせばふらりと振り子が動くスケールは机上のまたとないエンターテインメント。

機能性を追求した構造の美しさと共に、台座の赤と針先の赤がよく呼応し、粋なカラーリングが全体をよく引き立てています。


背後にあるドイツのレタースケールの歴史と共に、お愉しみください。



◆Germany

◆推定製造年代:c.1930年代頃

◆素材:金属、琺瑯

◆サイズ:幅約10.7cm 奥行き約7.1cm 高さ約15.5cm

◆重量:202g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、塗装の剥がれ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*50gの重りを測った時はほぼ合いましたが、古い測りですので精密な数値は保証できません。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A


黒い森、走る犬/ Antique Black Forest Carved Book Stand

 ドイツアンティーク、透かし彫りのブックスタンド。

























西ヨーロッパで時折目にする「ブラックフォレスト/Black Forest/黒い森」スタイルの家具や小物。基本的には凝った木彫刻が施されており、モチーフは熊や鳥、犬などの動物、そして植物が多いようです。


ドイツやスイスの物が多いようですが、英国のアンティークとして鳥と葡萄が立体的に彫刻されたヴィクトリアンのオーク材のミラーなども見たことがあります。


この「ブラックフォレスト」、もともとの発祥はスイスのベルン周辺、18世紀から木彫工芸が盛んだったBrienz/ブリエンツといわれています。


ブリエンツの職人が、熊や鳥などの動物を彫刻した家具や小物、鳩時計を旅行者向けに製作し、とても評判となり、そのような木彫細工は「ブラックフォレスト(黒い森)」とよばれるようになります。


実際の「黒い森」はドイツのバイエルン州(旧バイエルン王国)に位置していますが、「ブラックフォレスト」というネーミングと、その動き出しそうな野趣あふれるスタイルがまさに合致し、19世紀にはたいそうな流行となりました。そして、広まる流行につれてヨーロッパ各国で類似品が作られるようになっていったといわれています。



さて、今回ご紹介するのは、その「ブラックフォレスト」スタイルのブックスタンド。

買い付けたのは英国のマーケットですが、売り手はベルギーのディーラー。そしてディーラーによれば、製造国はドイツ、20世紀初め頃の物であろう、とのことでした。



まず目を惹くのは、見事な透かし彫り彫刻。絡み合う葡萄の蔦と葉が全体を構成し、中央のオーヴァルには見事に開く花が配されています。


アンティークの家具や小物等にあしらわれた植物、特に花は、非常に象徴的にデフォルメされているものが多く、種の特定が難しいことが多くありますが、正直この花もそのうちのひとつ。葉の様子からアネモネの一種かな、とも思います。ただ、尖った花弁をもつアネモネはあるのですが、花弁4枚の種は見つけることができませんでした。おそらくは中心にするために象徴的にデザインされたのではないかと思います。

本の受け部分、そして背面の支え部分は丸太風の彫刻となっていて、いかにもブラックフォレストな印象を強めています。


そして出色はやはりトップにいる犬。少し痩せているのが気になりますが、疾走感あふれる姿は森の中を駆け抜ける猟犬そのもので、このブックスタンドをより特別な物にしています。


材は難しいところですが、スイスを含む西ヨーロッパの針葉樹は代表的な物でトウヒ(松の一種)やモミの木、落葉樹はシラカバ、ミズナラなどがあげられます。杢目と手触りの感じからして松系が近いようですので、トウヒもしくはモミの木かと思われます。


松系の木らしく、重量感はそれほどございません。そして繊細な加工で透かし彫りの為、数か所の補修跡がみられます。写真でご紹介しておりますのでご確認ください。使われてきた歳月の中で、少しづつ直されながら、それでも大事にされ続けてきた歴史とともにご了承いただきたいと思います。

つくりからしてやや華奢ですので、あまり重いものを乗せるよりは、このまま飾っていただくか、軽め、薄めの本を乗せて頂くのがおすすめ。



自然が持つ力強さ、そして生命がもつ躍動感の結晶の様な「黒い森」は、まさにアンティークならではの風格を纏い、唯一無二の存在感を放っています。


ヨーロッパアンティークの粋を集めたような彫刻作品を、是非お手元でご堪能ください。




◆買付England/製造国Germany

◆推定製造年代:c.1910-1930年代頃

◆素材:木(トウヒもしくはモミの木)

◆サイズ(立てた時):幅40.7cm 奥行き約22cm 高さ約26.7cm

◆重量:389g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や反り、補修跡等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*補修跡は数か所確認しております。認識できたものは画像にてご紹介しております。

*補修跡は表面からはほとんどわからないと思います。

*犬の尻尾はひょっとして欠けたのかもしれませんが、かなり古い時代の様でエッジはまろやかに、色は周囲に近くなっていますので、あまり気にならないかと思います。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A