古艶をもつオーク材を使った、アーツアンドクラフツ・スタイルのブックシェルフ
19世紀後半、ウィリアム・モリスが提唱したアーツアンドクラフツ/Arts & Craftsとは、産業革命後の大量生産品に異を唱え、中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張した運動のこと。
モリスは壁紙やファブリックのデザイン、家具のデザインをはじめ、本の装丁やフォントのデザインまで、幅広く多くのものを生みだしました。
未だ生産され続けているファブリックなどには、モリスならではの自然を様式化した複雑かつ美しいデザインが多くみられます。
一方日本では、このモリスの運動に触発され、柳宗悦を中心とし、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出し活用する「民藝運動」が起こりました。
ただ、間違いなくモリスのアーツアンドクラフツから触発されてはいるものの、生み出されたものはとてもシンプルで、虚飾はそぎ落とされ、用途がそのまま形になったようなものが多かったのです。
モリスのアーツアンドクラフツと日本の民藝運動は、結果としてのフォルムはまさに真逆。
ただ、不思議なことにアーツアンドクラフツのなかで、家具類だけは、中世的というよりは、用途がそのまま形になったようなものが多くみられるのです。
まず、素材は英国伝統の材、オーク。
そして例えば、華美なうわべの装飾は施されず、構造を考えたうえで、まるで切り絵のように切り欠いたシルエットでのみ装飾を加えたような本棚。例えば、直線で構成され、まるでモダニズムの平面構成のようなフォルムをした椅子。
時代は19世紀末、すでにオーストリアではトーネットが曲木の椅子を大量生産しており、スコットランドではマッキントッシュが活躍を始めようとしていました。
そんななかで生み出されたアーツアンドクラフツの家具たちは、時代のはざまで、平面デザインのファブリックや装丁ほどの中世的細かさに寄るわけにもいかず、あまりにモダンになるわけにもいかず、不思議と「用の美」へと近づいているのです。
それだけに、アーツアンドクラフツの家具の意匠は独特で、ジョージアン、ヴィクトリアン、エドワーディアンなど時の君主の名称で呼ばれることの多い英国の家具様式のなかで、そこだけ「アーツアンドクラフツ」とよばれています。
モダンなインテリアにもうまく馴染むことからファンも多く、ひとつ上のこだわりを感じさせる英国ならではのスタイルといえるでしょう。
・・・説明が長くなりましたが、この小さなブックシェルフも、そのような「アーツアンドクラフツ」スタイルのちいさな家具のひとつ。
用途がそのまま形になりながら、側面の切込みがどこか装飾的。
ハート型にもみえるフォルムは、まさにアーツアンドクラフツのモチーフのひとつです。
材もお約束のオーク材。
経年変化でなんともいえない風合いに変化した材は、これからも使うほどに、優しい古艶を増していくに違いありません。
何気ないもの。だけどバックグラウンドには広大な歴史が広がっている。
そんな英国アンティークのひとしなです。
◆England
◆1900-1930年頃
◆素材:オーク
◆サイズ:幅32.7 奥行き13.5 高さ16.5cm
◆在庫数:1個のみ
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Todd Lowrey Antiques
by d+A