豪華で美しい折り畳み式のヴィクトリアン・アンティーク・レターラック。
ヴィクトリア時代、大英帝国は「日の沈まない国」とよばれるほど、支配地を世界中に持っていました。
それらを結ぶ交通網も整備され、スエズ運河もとおり、当時話題になったジュール・ヴェルヌの小説「80日間世界一周」にあるように、船や鉄道を乗り継げば世界を80日間ででぐるりと回ることができそうな勢いでした。
(その小説では途中で鉄道が途切れて主人公は象に乗りますが・・・)
そんな時代背景のなか、富裕層の子息の多くがグランド・ツアーに出かけるなど、英国人の旅行熱はたいそうな高まりだったようです。
ヴィクトリア時代のアイテムには、そんな旅行に使われたと思われるライティングスロープ(ボックス状のものを開くと書類が広げられる携帯デスク)やブックスライド(折り畳み式のブックスタンド)等があり、その多くが驚くほど贅沢に作りこまれています。
それは旅行ができる人々はまず間違いなく富裕層であり、長い期間をゆっくりと旅したため、身の回りに置く物にもそれなりのクオリティが求められたためと思われます。
きっとこのレターラックもそんな物のうちのひとつ。
当時の大切な通信手段である手紙を、効率よく整理することができる美しいレターラックは、
落ち着き先で荷物を解くたびに、おつきの従者が主のデスクそばにさっと吊るしたに違いありません。(そうそうぴったりなフックなどなかったでしょうから、ひょっとして従者は大工道具持参だったのかも!)
手紙を受ける部分は可動式のフラップ。壁に掛けた状態だと自重で開き、手紙を挟むのにちょうどよい角度となります。壁から外して平らにすれば、フラップはぱたりと閉じて厚みはごくごく薄い状態になり、旅行鞄の隙間に難なくはいりそうです。
幅わずか7cm、全体長さ約29cmと、ちょっと太めの定規ほどの存在ながら、その細工は息をのむほど緻密で豪奢。
全体構成はアカンサスのスクロールが連なるアラベスク文様。本体の中心にはポイントごとにイングランドの象徴チュードルローズが施され、フラップ部分には豊穣と信仰の象徴、帆立貝が配されています。カルトゥーシュにメダリオンもみられ、まさにヴィクトリアンの豪華モチーフが総動員されたような賑やかさです。
それでも、全体をみればちっとも下品ではなく、むしろ格調高い優雅さを感じるのは、それぞれの形がとびきり美しく、全体を落ち着いた黄金色の質感がまとめているから。
フラップ最下段、そして背面の留め金具に「PATENT」の文字が見られ、この仕掛けをメーカーが意匠登録していたことがわかります。
遠いヴィクトリアンの英国。
いったいどのような場所をこのレターラックは旅してきたのでしょうか。
場所を超え、まさに時を旅してきたちいさな佳品を愛でる時、椅子に座りながらも、どこか遠くを旅してるような感覚に陥りそうです。
◆England
◆推定製造年代:c.1890年代
◆素材:真鍮
◆サイズ:幅約7cm 長さ約29cm 奥行き約0.7cm~3cm
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、若干の歪み、汚れ、錆などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*全体としては通常のご使用に十分耐える、とてもよいコンディションだと思います。ご了承の上、お求めください。
*壁掛け用金具、及び画像の備品は付属しません。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A