ヴェスタとは、マッチの一種。
ローマ神話の「かまどの女神」の名をもち、日本語訳では「ろうマッチ」となります。
現在日本で一般に使われているマッチは分離型の「安全マッチ」で、1855年にスウェーデンで開発されたもの。赤燐を主体とした薬品が塗布された面でこすることにより発火し、そこ以外では発火しません。ただ、一方で「どこにでも強くこすれば発火するマッチ」もあり、こちらのほうが歴史が古く、より安全な材料に改良しながらも作り続けられています。それが、「ヴェスタ/ろうマッチ」です。
古く英国で煙草や葉巻をつけるために使われていたのは、このタイプ。
そのため、そのマッチをいれておく意匠を凝らしたケースが多く制作され、ほとんどがマッチをするためのぎざぎざした箇所を備えていました。ヴィクトリア時代前半から使われはじめられ、特にエドワ―ディアンには大人気となり様々な形が作られました。
今回ご紹介するフーフフットのモチーフも人気だったらしく、似たデザインでシルバー製の素晴らしいものをヴィクトリア時代からみることができます。
また、フーフフット/hoof footとは馬の足先のこと。
フランス語でpied-de-bicheともいい、こちらは「牡鹿の脚」の語彙をもち、「双蹄形」をした足先のことをいいます。鹿などの足先の爪は二つに割れていますが、馬の蹄は割れていないため、厳密には異なるのですが、どちらも「フーフフット」とよぶことがあるようです。
実は、フーフフットは英国を中心としたヨーロッパではとても好まれる意匠。
英国、フランス、イタリアのルネッサンス様式後期からみられるモチーフで、17世紀ごろ、ウイリアム&メアリー様式やクイーンアン様式の家具の足先によく見られるようになりました。
一方で蹄鉄/ホースシューは、やはりヨーロッパでは「幸運を呼ぶ」そして「魔除け」の意味があり、とても好まれるモチーフとなっています。
由来は諸説ありますが、例えば後にカンタベリー大司教となった鍛冶屋の聖ダンステンが 悪魔から馬の蹄鉄を修理するよう頼まれた際、悪魔の足に蹄鉄を打ち付け、痛がる悪魔に、扉に蹄鉄が留められているときは絶対中に入らないという約束を取り付け、ようやく蹄鉄を取り外してやったことから悪魔除けとされた・・・という説がございます。
悪魔に蹄鉄をはかせる聖ドゥンスタン ジョージ・クルークシャンク/George Cruikshank(1792-1878) |
そんなことから、蹄鉄は扉の上や扉自体に取り付けたり、お部屋の梁に掛けたりと、古くから親しまれてきたラッキーアイテムなのです。
そんな蹄鉄がついた馬の脚のモチーフは、更なる強力なアイテムとして、喜ばれてきたことでしょう。
このヴェスタケースは、ヴィクトリア時代の物をもとに、後年作られたものと思われます。
100年とはいきませんが、歳月を経た金属の質感がなんともいえない雰囲気を醸し出し、魔除けとして特別な空気を確かに纏っています。
蓋はきちんと閉まりますので、なにか小さなものをいれておくロケット代わりにもお使いいただけそう。
英国で愛されてきた、小さな幸運のお守りを、ぜひ貴方のものにしてください。
◆England
◆推定製造年代:c.1930-40年代頃
◆素材:金属(おそらく真鍮)
◆サイズ:幅約2.1cm 奥行き約1.8cm 長さ約5cm(可動する丸環は含まないサイズです)
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*英国買い付け時から入っていたマッチ2本をいれて、お届けいたします。
*古いお品物ですので、若干汚れや小傷などがございます。詳細は画像にてご確認ください。
*全体としては通常のご使用に十分耐える、よいコンディションだと思います。ご了承の上、お求めください。
*画像の備品は付属しません。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A