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Friday

テヴェレ川沿いからサンタンジェロ橋を臨む/ Antique Georgian Handheld Paper Mache Fire Screen

 英国アンティーク、手持ち型のファイヤースクリーン。


















英国の大きなアンティークフェア。


そのうちのひとつ、白いテントでは可愛らしい女の子(多分十代半ば)が一人でお店番をしておりました。始めは並べられているドアノッカーが気になり、値段をきくと彼女は「わからない・・・待ってください」といいつつ、テントの奥に。奥には父親らしき人がいて、彼から値段を聞いているようでした。


提示された値段は納得のいくもので、さあお金を払おうかな、と思っているときに、奥に置かれていた団扇状のものに目が留まりました。


品格溢れる形と巧みな筆致、そして素晴らしい雰囲気。


彼女に断りつつ手に取ると、とても手に入れたくなってしまいました。再び値段を聞くと、やっぱり彼女はわからない。そしてとうとうお父様が登場いたしました。


「これは素晴らしいよ!なんだかわかるかな?ファイヤースクリーンだよ。暖炉の前でレディが顔を隠すために使うもの。暑いとおしろいが落ちてきちゃうからね!」恥ずかしがり屋なのかと思っていたら、思い切り饒舌な父親は、やや巻き舌の英語で詳しく説明してくれました。


「材料はパピエマシェ。知ってる?ああそうか。そしてここをみてくれ。サンタンジェロ橋って書いてある。Ponte Sant'Angel!ローマのだよ!つい最近ローマに行ってたんだ!昔は金持ちはいろんなところに行って、思い出の品をもっていたからね。グランドツアーって知ってる?」


「これはイタリアのものですか?」


「いやいや、これはイギリスのもの。古いよ。1820年とか、1830年とか。ヴィクトリア時代より前。ハンドペイントだよ!」


恐らくイタリア出身の方なのでしょう、話し出すととまらない。


「Ponte Sant'Angel!」と叫んでいるときに「Ponteって橋ですよね。ポンテヴェッキオ、行ったことあります。美しい橋ですね。」と返したところ「おおそうか!そうだろ!」とたまらなく嬉しそうでした。そんな感じでやっと一区切りつき、やはり欲しい気持ちがあったので、手に入れることにいたしました。





さて、少しお品物の説明をさせていただきます。


「パピエマシェ/Papier mache」とは、フランスで1720年代頃から使われ始めた素材・技法のこと。


紙パルプに水、膠、スターチや腐敗を防ぐ為の塩、もしくはチョーク(白亜)や時に砂などが加えられ、型に入れ乾燥させたり焼き上げたりするもので、箱やトレイなどの小物から、後にテーブルや椅子などの家具にまで使われました。

英国には17世紀後期に入ってきたとされ、1830年代頃には改良され,耐熱性も強くなり,ビクトリア時代の複雑な曲面や曲線を必要とする椅子やテーブルなどの部材として広く使用されました。


基本的に黒い製品が主流であり、これにペイントや象嵌、蒔絵などが施すことにより芸術性が高まり、ヨーロッパで流行していた東洋趣味ともあいまって、かなりな需要があったようです。



左下には文字があり以下のように読むことができます。


Bridge of St. Angelas Rome



これは、前述のようにイタリア、ローマの「サンタンジェロ橋/Ponte Sant'Angel」のことそう思って眺めれば、橋の向こうにカトリックの本拠地、サンピエトロ大聖堂が神々しくそびえたつのを見ることができます。


つまりこの風景は、テヴェレ川沿いから、サンタンジェロ橋を通してサンピエトロ大聖堂を臨んでいることとなります。


サンタンジェロ橋はローマ時代からあったとされる橋ですが、西暦134年にローマ皇帝ハドリアヌス(プブリウス・アエリウス・ハドリアヌス)によって、市街地から新しく建設された彼の霊廟(現在のサンタンジェロ城)に行くために、豪華に整えられ、この名前になったとされています。


過去は橋と両岸との間には傾斜路がありましたが、19世紀末、ルンゴテヴェレ(テヴェレ川沿いの歩道)が整えられ、それにより傾斜路は無くなりました。このファイヤースクリーンには、その傾斜路があるサンタンジェロ橋が描かれているのも興味深いところです。


お父様が主張していた1820‐1830年代の品物、という言葉の裏付けのようにも思えますので、私としましても推定製造年代は1820‐1830年代、ジョージアンとさせていただきます。


100年以上経ったものではありますが、状態も良く存分に美しい筆致を鑑賞することができます。ただ、向かって左下に、何かにあたったような凹みがございますことをお伝えしておきます。




ジョージアンの英国。


1820-1830年の統治者であったジョージ4世は問題が多く、君主制にとっては難しい時代であったとされています。いっぽうで経済的には産業革命のただなかにあり、英国は世界の工場として多くのものを生産していました。フランスから来たパピエマシェが改良されたのもまさにその頃。

きっと多くの工夫をこらしたものが作られ、手ごろなものは庶民に、贅を凝らしたものは特権階級に、と広がっていったことでしょう。


このファイヤースクリーンは、その中でもまさに「贅を凝らした」逸品。お父様の話のように、かなりな富裕層がローマに行った思い出に作らせたものかもしれません。


少々変わった形のアートワークとしてディスプレイしていただければ、まさに気分はグランド・ツアー。

ゆったりと眺めれば、ローマのサンタンジェロ橋のこと、昔のレディの嗜みのことなど、様々な歴史のピースが溢れ出てくるようです。


歴史とアンティークを愛する貴方のもとに、特別なピースをお届けいたします。




◆England

◆推定製造年代:c.1820-1830年代頃

◆素材:パピエマシェ、木

◆サイズ:幅24.1cm 全体高さ約29cm 厚み(持ち手)約1.3cm

◆重量:101g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や傷み等がみられます。

*説明書きと写真にもございますが、1か所凹みがございます。

*持ち手をもって団扇のように振ると少々カタつきます。団扇ではございませんので、そのような動きはお勧めできません。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。 





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。




Todd Lowrey Antiques

by d+A