英国アンティーク、ヴィクトリア時代のミニチュアテーブル。
ミニチュア家具好きにはたまらない逸品を手に入れました。
高さわずか13cm弱のセンターテーブル。
持論ではございますが、英国アンティークのミニチュア家具は数種類に分けられます。
1:子供のおもちゃ(おままごと用)
おもちゃとしてつくられたため、作りはそれほど精巧ではなく、若干デフォルメされていることが多い。子供が遊んできたため、状態が良いものは少ない。
2:ドールハウス用
おもちゃの一種ではあるが、大人も愉しむため、作りは精巧。芸術的なものも多い。
ただし、基本的には1/12のサイズ。(1924年のメアリー女王のドールハウス以降)
3:なにかの用途として
ミニチュア家具の形をとりながら、実は小物入れだったり、ソーイングボックスだったりするもの。かなりな嗜好品の為、価格はピンキリだが、高いものは驚くほどの高額となる。
4:家具屋のサンプル
カタログとともに、サンプルとして馬車に積み、お客様の元へ売り込みに行くための物。
作りは精巧で緻密。数はそれほど多くなく、良い状態で現存しているものはかなり高価。
5:作り手の試作品
可動式のものの動き方や、木組みの状態、バランス等をみるため、職人が試作品として作るもの。こちらも数はそれほど多くなく、高値がつくことが多い。
個人的にミニチュア家具が好きなこともあり、今まで様々なものをみてきました。
多くは上記の5つのカテゴリーに分けられると思ってきましたが、最近は「単純に小さくてかわいいから」ともっともシンプルな理由で存在しているものも多くあることに気づき、6番目のカテゴリーが必要かと思っているところです。
さて、今回ご紹介するテーブルはどれでしょうか?
・・・私の推測としては、「4:家具屋のサンプル」の一種。
理由は意匠が細かく手が込んでいて、本物の材料で作られているから。
まず、天板の直径は約20cm。
この小さな円形には、飴色のウォールナットの杢目を背景に手の込んだ細工が施されています。
センターから広がる放射状のパターン。
これはペインティングではなく、異なる色の木をはめ込んで作られたもの。
インレイ、もしくはマーケットリーと呼ばれる手法です。
白っぽい木はボックスウッドでしょうか。中心に近い黒い木はエボナイズド(黒檀調)仕上げでしょう。異なる色味の木を表面のニスがまろやかにまとめ上げ、なんとも艶めかしい表情をみせています。
天板下及び支柱の材はマホガニーと思われます。
緩やかにしなる脚は3本。
このように3本脚のテーブルはトリポッドテーブルとよばれます。
脚のニー(膝)部分には細かく連なる粒状の彫があり、下部のフルーティング(溝)や先端のスクロールと共に、三本の脚をより優雅にみせています。
支柱の下部には擬宝珠、中間には花をかたどったターニングが施され、天板をしっかりと支えています。
用途は、食事用のダイニングテーブルというよりは、ホールの中央などに置かれるセンターテーブルでしょう。お屋敷の顔であり、高級な材と仕上げが求められる家具です。
ヴィクトリア時代、家具屋が様々なミニチュア家具をトランクに詰め込み、注文を請けるためにお屋敷を回っていたといいます。
ミニチュアをみながら「じゃあこれで」とか、「私はもう少しここを変えて」等、顧客のオーダーを引き出していたのでしょう。
娯楽の少ない時代、家具をオーダーすることは、富裕層の大きな楽しみのひとつだったに違いありません。
そんなストーリーを秘めた、ミニチュアテーブル。
デスクトップに置けば、英国ヴィクトリアンのかぐわしい空気が流れてくるようです。
◆England
◆推定製造年代:c.1890年代頃
◆素材:ウォールナット・他
◆サイズ:直径約20.7cm 高さ約12.8cm
◆重量:401g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、材のワレ、修復跡などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A