英国アンティーク・犬の頭部を模したウォーキングステッキ。
イングランド東部の街で行われた大きなアンティークフェア。
白いテントが張られたストールの中で、珍しいステッキをみつけました。
まず目を惹くのはグリップ部分の犬の頭部。
耳をピンと立て、逞しくも美しい首、大きめの口吻部をもち、貴族的な優雅さと圧倒的な存在感を持つこの犬は「グレートデン/ Great Dane」。
グレートデンとは全犬種中、最も体高が高く、優美でしなやかな動きを持つ巨大犬種です。現在はドイツ原産とされていますが、フランス人博物学者ビュフォンがデンマークを訪問した際、たまたまこの犬を見かけ、「Grand Danois」(巨大なデンマーク人)として自国に紹介したことが名前の由来となっています。ドイツ国内では「Deutsche Dogge/German Mastiff/ジャーマンマスティフ」という呼び名で通っており、ドイツの国犬にも指定されています。
野生のイノシシを狩るための猟犬として繁殖されてきたグレートデンですが、現在は大きな体格と穏和な性格の家庭犬として愛されており
別名は「優しい巨人」。
そして実はグレートデン本来の耳は垂れ耳。イノシシと格闘する際の怪我を予防するという目的で、かつては慣習的に断耳が施されてきました。
さて、今回ご紹介するステッキのグレートデンをみてみましょう。
耳はピンと立ち、断耳されていることがわかります。
英国のディーラーによれば、推定製造年代は1920年代頃。
イングランドにおいてイノシシ狩りは一般的ではありませんが(13世紀ころにイングランドのイノシシは絶滅したといわれています)キツネなど他の野生動物を狩るにあたって、このスタイルのグレートデンを飼育していた人たちも多かったのではないでしょうか。
なお、犬の頭部の材は正直、はっきりしません。
触れた時にそれほど冷たい印象はございませんので、なんらかの樹脂かと思われます。
カラーは銀色で、彫刻が施されています。
シルバーのようにもみえますが、ホールマークは確認できておりません。
シャフト部分は木製ですが、黒く塗装されており、家具の仕上げなどでもよく見られる「エボナイズド」仕上げとなっています。
エボニーとは黒檀のことで、黒檀のように仕上げることをエボナイズドとよびます。
遥か東洋からやってきた黒檀の装飾品に驚嘆した、かつての富裕層やキャビネットメーカーが生み出した仕上げのひとつです。
エボナイズド仕上げに黄金色のオルモルを合わせたり、セーブルの陶板をはめ込んだりしたキャビネットは、最高級品として英国やフランスの王侯貴族たちに愛されてきました。
石突部分にも金属が巻かれておりますが、先端部分の金属は既に削れ、シャフトの木が見えております。使い方によっては、ゴムのキャップをかぶせていただいたほうがよろしいかもしれません。
グレートデンの頭部は凹凸が激しく、一般のグリップとはかなり握り心地が異なります。
それでも、耳の間に指を這わせ、口元あたりに上手く指を絡ませれば、滑りにくくお使いいただくことができそうです。
シャフトの黒、グレートデンの黒、そしてワンポイントのシルバー。
なんともお洒落な配色です。
かつてどんな紳士がこのステッキを持っていたのでしょうか。
グレートデンを飼っている、もしくは飼っていた、犬を愛する紳士?
なんらかの事情で犬を飼えないけれど、グレートデンに憧れた紳士?
いずれにしても、愛する犬をたなごころに感じながら、ゆったりと公園を散歩する壮年のお洒落な英国紳士が目に浮かびます。
これからは、貴方のもとに。
どこまでも忠実に貴方に従う優しい巨人を、お手元に飼われてみてはいかがでしょうか。
◆England
◆推定製造年代:c.1920年代頃
◆素材:木・金属・その他
◆サイズ:長さ約90.5cm 持ち手奥行き約8.3cm
◆重量:350g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*グリップの握り心地につきましては個人差がございます。ご心配な方は一般的なグリップのステッキをお求めいただいたほうが良いかと思います。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A