スティーブングラフ/Stevengraph。
ご存知の方は少ないかもしれません。
それは、19世紀の織工、トーマス・スティーブンス/Thomas Stevens が創案したシルクの刺繍絵のこと。
イングランド中部の大きな町、コヴェントリー郊外のフォールズヒルで1828年に生まれたトーマス。当時からコヴェントリーは織物の産地として有名な場所でした。そんな街で生まれ育ったトーマスは、1854年から自分の織物商会をもつまでに成長します。
しかし1860年に英国・フランス間で締結されたコブデン=シュバリエ条約は
英国が貿易自由化のリーダーとなり、世界貿易の拡大を推進することに大きな影響を与えましたが、一方ではローカルな小さな工場は大きな競争にさらされ、多くの失業者を出す結果となりました。
そんなことから、トーマスは自分たちで出来るオリジナルな商品の開発を思い立ちます。
それが、シルクの布地に丁寧な刺繍で絵を表現した刺繍絵でした。
手ごろな価格帯で販売され、本のしおり、グリーティングカード、カレンダーや小さな飾り絵などに使用され徐々に人気となっていきます。1875年には二つの大きな工場を持つまでに成長。
その頃から、この刺繍絵を「スティーブングラフ/Stevengraph」と呼ぶようになりました。
スティーブングラフはアメリカ、フランス、オランダなどのエキシビジョンに出展され、多くの賞を受賞します。1878年にはロンドンに移転。額装し、マウントされたより芸術性の高い絵画としてのスティーブングラフの制作が本格化します。1880年代には900点以上のデザインがあったといわれています。
今回ご紹介するスティーブングラフは、彼がロンドンに移転してからのもの。
年代としては1878年から1880年代にかけてのものと思われます。
ペアでできており、1枚は"The Good Old Days"として、古き良き時代の交通手段としての馬車がモチーフとなっています。
もう1枚は"The Present Time 60miles an Hour"となっており、1840年代頃から急速に発展した英国の鉄道、蒸気機関車が描かれています。
どちらも絵の下には以下の文字。
woven in silk by thomas stevens , inventor and manufacturer, coventry and london ,(registerd)
コヴェントリー及びロンドンの、トーマス・スティーブンスによる発明、製作であることが誇らしげに表現されています。
そして、出色なのはこの額装。
豪華で厚みのあるギルドフレーム（木下地に石膏などでかたどったモールディングを接着し、金彩で仕上げたもの）は細工が細かく、四隅にリーフのモチーフが施された凝ったものです。元絵のサイズに合わせて手をかけて制作されるタイプで、この額だけでもアンティークとしての見どころは十二分にあるといえるでしょう。
スティーブングラフは同じデザインで複数が生産されますので、今回ご紹介した移動手段のシリーズも英国やアメリカのサイトでみかけることがございます。
ただ、同じデザインでも様々なタイプのフレームに入れられて販売されていたようで、英国やアメリカのサイトでは、もっとシンプルな額のものがほとんど。
ここまで豪華なフレームにセットされたものは、ほとんど無いのではないでしょうか。
ペアで飾っていただければ、そこからヴィクトリアンの空気が流れだすよう。
「昔は馬だったけど、今じゃあ蒸気機関車。なんて早いんだろう」などと感じていたであろうヴィクトリアンの人々。
飛行機で飛ぶことのできる私たちも、いずれそれが「古き良き時代」といわれる日が来るのかもしれない・・・という想いを巡らしながら眺めてみるのも一興かもしれません。
◆England
◆推定製造年代:c.1870年代後半から1880年代頃
◆素材：シルク・ガラス・木・石膏・他
◆サイズ：幅約25.2cm 高さ約16.2cm 奥行き約3.8cm+吊金具/1枚あたりの大きさ
◆重量:"The Good Old Days":620g "The Present Time":579g
◆在庫数：1セットのみ（2枚で1セットの販売です）
【NOTE】
＊古いお品物ですので、刺繍絵には色褪せやほつれが、マットには変色が、フレームには欠けや補修跡が、その他汚れ等がみられます。
＊1枚の"のフレーミングはテープで補修されており、手で押すとフレーム部分と絵部分が離れます。
＊ただ、掛けていただいている分には問題なく納まっておりますので、現状のままとさせていただきます。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
