英国アンティーク、1936年製のプリズマティック・マッチング・コンパス。
イングランドの大きなアンティーク・フェア。
全体が大きな芝生のショーグラウンドですが、その中に数軒体育館のような建物があり、その中にはアンティークディーラーがみっちりとストールを並べています。
屋外にももちろん沢山のディーラーがいるので、屋外をみるか屋内をみるか、バイヤーはそれぞれの得意分野とみあわせながら、作戦を練るとことなります。
その屋内の一角。私たちがいつも訪れるストールがあります。
製図用品、レンズやメトロノームなど、ちょっとメカニカルなアンティークばかり扱っているこだわりの品揃え。
そこでは、いつも寡黙な英国人のお兄さんがお店番をしています。
今回はガラスケースの中におさめられた金色に輝くコンパスに心惹かれてしまいました。
他にも数点コンパスは手に入れましたが、正直この品物はかなり値段も高め。
口数少ないお兄さんは「なにせ状態がいいし、オリジナルのいいものです。」そんな感じで全く譲ってくれません・・。
それでも交渉の末に手に入れた、プリズマティック・マッチング・コンパス。
Mark(略してMK)とは、19世紀後半から今日まで、ポケットコンパス、もしくはマッチングコンパス(蓋に目安があり、より機能がついたタイプ)のモデルにつけられてきた名称のこと。
MarkⅤ、MarkⅧなど多くのシリーズがあり、今なお生産されているようです。
ただ、英国のアンティークコンパスは世界的に人気で、人気モデルの復刻版=リプロダクションが多く流通しております。
リプロダクションでもなかなかよくできた物も多いのですが、やはりオリジナルは別格。
気が付けば手に入れておりました。
プリズマティック・マッチング・コンパスの概略をご説明いたしましょう。
蓋を開け、サイティングスリットを倒し、蓋についたヘアラインを対象物に合わせ、プリズムを覗きそこから見える数値を読み取ります。
そうすれば「北から何度」と正確な方位を知ることが出来るようになっています。
そして、裏面にある「F.BARKER & SON 」とは、「Frances Barker & Son」のこと。
Frances Barkerによりロンドンにて1848年に設立された光学機器メーカー。
第一次大戦、第二次大戦を通じてミリタリーグレードの光学機器を生産、英国軍に供給していました。
さらにもう一つの特徴、矢印のマーク。
これは「ブロードアロー/Broad Arrow」とよばれるマークです。
もともとはヨーロッパにおいて紋章としてつかわれていた「pheon/小槍」などが元といわれており、17世紀末頃から英国の官有物にマークとしてつけられるようになりました。
主として軍用でしたが、他の用途にも使われることがあったようです。
植民地時代のアメリカやオーストラリアにおいても使われており、軍や官庁などのサーベイマーカーとしての使用がみられます。
英国において、機器や備品関係などでこのブロードアローがついているものであれば、まずは英国軍のものであった可能性が高いといえるでしょう。
脇に備え付けられている「へ」の字のような金具は、蓋を閉めるとロック用のボタンを押し込み、内部の盤が固定される仕掛け。持ち歩く際には盤が不必要に揺れないようになっております。
また、サイドには「W.N.W」の文字が刻印されたプレートがつけられています。
持ち主のイニシャルでしょうか。それともなにかの文言の略?
ちなみに「WNW」は「西北西」の意味でもありますが、なにか関連があるのでしょうか・・・?
様々なストーリーを秘めながら歳月を経てもなお輝く真鍮は、大切に手入れされてきた証。
ゆらりと煌めく盤のマザーオブパール(真珠貝)とともに、小さくても持ち重りのする存在感は、さすがオリジナルの風格です。
英国軍人の手の中で、第二次次大戦(1939-1945)をくぐりぬけてきたであろう小さな英雄はどんな風景を見てきたのでしょうか。
貴方のお手元においたとき、時代の小さな証人として語りかけてくるものがきっとある・・・ような気がいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.1939年
◆素材:真鍮・金属・ガラス・真珠貝・他
◆サイズ:全長約8.3cm コンパス本体直径約5.3cm 厚み約2.5cm
◆重量:151g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆や変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*現在のところ磁針はほぼ正確ですが、古いお品物のため今後の保証の限りではございません。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A