英国アンティーク、折りたたみ式リネン検査器。
今回は、英国のアンティークマーケットで手に入れた、折りたたみ式のとても魅力的な拡大鏡をご紹介します。
それは、リネン織物の糸の密度や状態などを検査、検定するための顕微鏡/拡大鏡です。
この機能を有するものは、Linen Tester/リネンテスター、あるいは、Thread Counter/スレッドカウンターという呼び名の折りたたみ式置き型ルーペとして現代でも活用されています。拡げるとコの字型になり、生地の上に直接置いて、1インチあるいは25㎜角の正方形の開口から見える生地の状態を、円型のレンズから覗き込むかたちが最も一般的です。
このようなリネンテスターの原形は19世紀初頭まで遡ります。初期のリネン検定器/検査器は、Pillar Type Linen Prover と称する、2本の小さな柱で支える最もシンプルな形状で、標準化された開口部ではなく、小さな丸穴が開いているだけでした。
ただ、折りたたみ式モデルも1840年代には登場しており、ウエストポケットに仕舞えるように、折りたためるように作られたと言われています。
さて、今回のモデルをよく見てみましょう。
厚さ4㎜弱から7㎜弱の無垢の真鍮は、とても肉厚で重量感があり、3枚を繋ぐヒンジもいまだ堅牢で、品質の高さがうかがえます。
表面は、パーツごとに経年変化がさまざまですが、それは真鍮独特の味わいといえるでしょう。
ボトムパーツの十字型の開口部は、長短2本の長方形が十字に交差しているのですが、それぞれの辺の長さがインチに対応しており、長い方は1インチと1/4インチ、短い方は1/2インチと1/4インチ、交差した部分を除いたそれぞれは3/8インチと1/8インチとなり、目盛りなどを刻まず、よりシンプルにそれぞれの長さあたりのスレッド数をカウントするためのクレバーなアイデアといえます。
3枚のパーツが折りたたまれた状態から、ボトムパーツ → レンズパーツの順に、それぞれ270度回転させてコの字型となった状態が、恐らく通常使用となりますが、実際、その通常使用状態で、生地の上に置いてレンズを覗いてみると、何故か焦点が合いません。試しにボトムパーツの上に、生地を乗せて/被せてみると、ピッタリ焦点が合います。
それならば、上下のパーツを180度回転させて、逆コの字の状態にし、先程と同様に生地の上に置いて覗いてみるのですが、逆コの字だと、ヒンジが固定されていないので、ピントが合うまでレンズと生地の距離をアジャストすることが可能となります。
果たして、これが本来の使い方なのかは疑問ですが、顕微鏡のようにピントを調整しながら対象物を観察する用途であれば、堅牢なヒンジと相まって、十分有効といえます。
さらに、折りたたまれた状態から、ボトムパーツのみを270度回転させると、L字型で固定されます。
その状態でレンズを覗き、垂直に伸びたボトムパーツの先端を対象物に当てると、ちょうどピッタリ焦点の合う距離が確保されるので、利便性が格段に高まります。
中間パーツの丸穴が、このような多目的な使い方を想定して設けられていたと思えるほど、このモデルならではの特色となり、可能性を拡げる要素といえるでしょう。
亜麻植物から作られたリネン生地は、何世紀にもわたってテーブルクロス、ベッドカバー、衣類等に使用されてきました。
亜麻糸は弾性がないため、糸を壊さずに織り込む困難さが、綿よりも製造に大幅なコストを要すほど、今日、リネンは通常比較的少量で生産される高価な織物です。
そのような操作の難しい亜麻糸の監理や、高価な敷物のシビアな取引などで活躍したであろう、ヴィクトリア朝の後半に作られた実用的な折りたたみ式リネン検査器。
古代から続くリネン織物へのこだわりに思いを馳せつつ、丸穴から覗く世界を愉しまれてはいかがでしょうか。
こちらからも画像をご確認いただけます
◆England
◆推定製造年:c.1860~1890年代頃
◆素材:真鍮・ガラス
◆サイズ:(たたんだ状態)幅約5.0cm 奥行約約2.0cm 厚さ約1.5cm
◆サイズ:(ひろげた状態)幅約5.0cm 奥行約約2.0cm 高さ約5.0cm
◆重量:83g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れ、金属部の経年変化等がみられますが、レンズに目立つ傷はなく、とても良い状態です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A