英国アンティーク、グロテスクなつけペンスタンド。
今回は、英国のアンティークマーケットで手に入れた、とても興味深い「つけペンスタンド」をご紹介します。
何より、衝撃的な見た目に惹かれてしまったのですが、その風貌は擬人化された神話上の生き物を連想させ、とても Grotesque/グロテスクであり、Devil/悪魔やImp/邪鬼(もののけ)などをイメージしているようにも思われます。
頭部のみがフィーチャーされた不気味な彼は、獣のような2本の脚で立ち、威嚇するように目を見開き、歯を見せて不気味な笑みを浮かべ、開いた口からは舌も覗いています。額から突き出ているのは、先がカギ状に曲がった嘴のようで、後ろの細長い2つの開口と相まって、眼光鋭く獲物を狙う猛禽類のようです。
その嘴を指で下から持ち上げると、Golden Eagle/イヌワシが飛び立つかのごとく、蓋が大きく天に向かって90度開き、透明なガラスの瓶が落とし込まれた頭頂部が露出します。
ガラス瓶はつけペンのための Inkwell/インク壺で、その左右に突き出た耳のような穴が、つけペンを立てるために用意された挿し込み口であることを気付かされます。
このような、負のイメージを想起させる対象を、あえて身近なペンスタンドのモチーフとした背景には、どんなメッセージが込められているのでしょうか。
遡ること中世のヨーロッパでは、教会建築の装飾として、奇怪な人面であったり奇妙な生物などの石の彫刻が見られ、それらは「Grotesque/グロテスク」と呼ばれました。
カトリック教会の大聖堂におけるグロテスクは、黙示録的な装置として、害や邪悪な影響を追い払うこと(Apotropaic magic/厄払い)を意図しており、そのグロテスクとは対照的に、宗教的なイメージを内部に施すことによって、信仰が、有害で破壊的な力から保護されることを人々に伝えたと言われています。
さらに、12世紀から13世紀のヨーロッパの大聖堂では、「Gargoyle/ガーゴイル」と呼ばれるグロテスクな装飾の雨樋が一般的となりました。
これは、ゴシック建築の特徴のひとつで、大量の雨水が石積みの外壁を汚したり、損傷を与えぬよう、建物の側面から離して水を落とす吐水口に付随する装飾です。
ガーゴイルは、フランスの gargouille/ガルグイユに由来し、喉の水と空気の両方が混ざる時に発する騒音、すなわち「うがい/Gargle」から来ているとも言われています。
これらガーゴイルの多くは、大きく口を開けたグロテスクな生物の装飾ですが、本来の機能とは別に、悪霊を追い払うと言われ、そのために石の彫刻に命が宿り、雨水や時には風が彼等の口を通過するときに他の人と交信することができるという伝説や、日中は石ですが、夜に生き返り、町や人々を見守っているという神話もあります。
また、ライオンの顔に代表される象徴的な「Door Knocker/ドアノッカー」は、中世では美的装飾のためと考えられていましたが、外の世界から家を保護する目的や、悪霊や魔女を追い払う意図で、西洋ではガーゴイルと同じように、しばしばグロテスクな装飾を纏ったドアノッカーを使用したとも言われています。
このような西洋の言い伝えや伝統を意識し、「目には目を」ではありませんが、あえてグロテスクな装飾を用いることで、あらゆる禍や害悪を追い払い、逆に幸運を呼び込めたら、との想いが、このペンスタンドに込められたメッセージだと思えば、この不気味な風貌にも愛着が湧いてくるのではないでしょうか。
私たちが見ていないときに、これらのグロテスクな生き物(Living Creatures)たちが、何をしているのかは誰にもわからないですが、一つ確かなことは、彼等はあなたの為に、常に素晴らしい仕事をしているに違いありません。
感謝の意を込めて、是非貴方のそばに置いてみてはいかがでしょうか。
◆England
◆推定製造年:c.1880~1900年代頃
◆素材:真鍮・ガラス
◆サイズ:幅約9.0cm 奥行約約10.7cm 高さ約9.5cm/16.5cm(蓋を開けた状態)
◆サイズ:(ガラスインク壺)幅約4.0cm 奥行約約3.8cm 高さ約3.7cm
◆重量:761g / 44g(ガラスインク壺)
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れ、金属部の経年変化等がみられますが、ガラスインク壺にも目立つ傷はなく、とても良い状態です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*耳に挿したペンは付属しません。(参考:耳に挿したペンの長さは向かって左側、木軸のものが約19cmです)
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A