侘びた材に白鳥の真鍮レリーフが施された1対のプレート。
かなり珍しいものを手に入れました。
しっとりとしたニスが手にやさしい2枚の板。
その杢目から、材はおそらくマホガニーでしょう。
その板に、左右対称に白鳥の真鍮レリーフが取り付けられています。
手に入れた時、売り手に「いったいこれは何だ?」と聞いてみました。
回答は「おそらく本の表紙。古い、古い物だ。私はこれを長い、長い間持っていた・・・」
なんだか身の上話が始まりそうな出だしでしたが、この品物についてわかることはこれだけでした。
用途すらはっきりとわからないながらも、雰囲気の良さに思わず手に入れて、あとでじっくりと形状をみれば、エッジの収まり方や、左右対称に片側のみに規則的に開いた小穴などが確認でき、やはりもともとは本の表紙(おもて表紙、裏表紙)として使用されていたものと思われます。
古い本の表紙は厚紙、革などが多かったようですが、このような木の表紙の本も確かにあり、さぞ大切にされていた書物だったのではないかと推測されます。
よくよくみれば、2枚は若干横幅が異なります。古い聖書などでは、表紙と裏表紙のサイズが異なるものがあるようで、おそらく「置いて読む」時に開きやすいように、等の理由かと思われます。
また、少し猛々しい白鳥にもストーリーがございます。
白鳥は昔から様々な国や街、家のシンボルに登場してきました。意味合いとしては完璧な美、愛、優雅、正義など。
また現在、英国王家はウィンザー朝ですが、歴史を紐解けば、ハノーヴァー朝、ステュアート朝、テューダー朝、ランカスター朝、ヨーク朝・・・と、王の座は多くの血統を巡ってきたことがわかります。
その中のひとつ、14世紀後半からのランカスター朝時代では、ヘンリー4世の最初の妻、メアリー・ド・ブーン/Mary de Bohun の紋章に使われていた白鳥を自らのシンボルとして何らかの方法で持つことで、自分たちがランカスター王家を支持していることを表したといわれています。
ちなみに、現在のイングランド・バッキンガムシャーの紋章、中心のシールドにいるのは「王冠を首にはめ、鎖に繋がれた白鳥」。起源は王が趣味でバッキンガムシャーで白鳥を飼っていたアングロ・サクソンの時代に遡り、また白鳥が鎖に繋がれているのは、もともとイングランドの白鳥はすべて王の物(一部例外在り)、という現代ですら続いている決まりに基づいたものであるといわれています。
そんなことから、この白鳥の本のオーダー主は、バッキンガムシャー出身、もしくは14世紀から続くランカスター朝支持者なのかもしれない・・・という想像はあながち外れたものではないような気がいたします。
英国買い付けの際には、すでに背面に小さな吊り金具がついていました。古い本がなんかの理由で散逸し、表紙のみ、壁に掛けて飾られていたものと推測いたします。吊り金具は簡単に外すことができそうです。(穴の跡は残ります)
ご自身で製本を趣味とされる方は、本に仕立ててみてはいかがでしょうか。
もちろん、ペアで壁に掛けると、とても絵になります。
いつの日か、ご自身の本を設える夢をみながら、壁に掛けておくのもよいかもしれません。
恐らくもう出逢うことのない逸品を、是非あなたのものにしてください。
◆England
◆推定製造年代:恐らく19世紀
◆素材:木(推定:マホガニー)、真鍮
◆サイズ:幅約16.5cm もしくは幅約18cm 高さ約25cm 1枚の厚さ約0.5cm(白鳥の出っ張りを除く)
◆在庫数:1セットのみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、小傷や汚れ、割れ、欠けなどがございます。詳細は画像にてご確認ください。
*2枚で1セットのお品物です。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承のうえ、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A