英国アンティーク、スターリングシルバーハンドルの拡大鏡。
拡大鏡はどんな時に使いますか?
細かな文字を読むため。小さなものを観察するため。よりじっくりと対象物を知るため。
私たちの「知る」欲求のためにある拡大鏡は、いかにも人間らしくあるためのツールであるといえるでしょう。
さて、今回ご紹介する拡大鏡は、シンプルでありながらヨーロッパの伝統を感じさせる「リボン&リード」の装飾が施されてるもの。
「リボン&リード」とは、このように細い線をリボンで縛ったような装飾をいい、ルイ16世スタイルやネオクラシカルスタイルでよく見られ、「Reed」は「葦」を意味します。
リボンがなく、細い線を束ねたスタイルは「Reeded/リーデッド」(Reeded)等と呼び、家具の脚やキャビネットの支柱、金具の装飾などにもみることができます。
フランスの哲学者ブレーズ・パスカル(1623-1662)が遺稿集「パンセ」に遺した「人間は自然の中でもっとも弱い葦である。しかしそれは考える葦である。」の文章でもわかるように、キリスト教の文化では人を葦に例えることがあります。
「争うこともなく、叫ぶこともせず、大路でその声を聞く者もない。 彼(キリスト)はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる燈心を消すこともない、公義を勝利に導くまでは。 異邦人は彼の名に望みをかける。」 (マタイの福音書12:19,20)
細く儚く傷つきやすい葦は、いつでも身近にあり、なにかに例えることにちょうど良かったのかもしれません。
興味深いのは、家具や小物などの装飾に用いられるとき、それは「束ねた」形で表現されていること。細い葦でも、束ねれば強くなる・・・それは人間がもつ力を表しているのではないかと思います。
さて、ハンドル部分には両面にホールマークが刻まれています。
王冠のマークは、シェフィールドのアセイオフィスのマーク。ライオンパサントの隣のデイト・レターはシールドに小文字の「b」で1919年。矩形に「J Y」のイニシャルがあるのは、シェフィールドのシルバースミス「Yates Brothers」のメーカーズマークです。Yates Brothersは1900年に登録され、シェフィールド、Eldon Streetにおいて活動していたという記録が残っています。シルバーのカトラリー等小さな品物がアンティーク市場にて散見されます。
なお、レンズ部分は後年に付け替えられたものであると思われます。英国アンティークの拡大鏡はこのようにハンドルは活かしながら、傷つきがちなレンズ部分のみ付け替えられているものがほとんど。金属製のレンズ枠は太いものもありますが、このお品物はごく細いレンズ枠で仕上げられています。
直径約4cmのレンズはコンディションもよく、傷はほとんど見えませんので、十分実用にお使いいただけることと思います。
全体長さ約11.7cmですので、大きさとしてはややこぶり。
優雅なハンドルを愉しみつつ、デスクトップやサイドテーブルに常備しておくのにこぶりなサイズはとても便利なのではないでしょうか。
リボンで束ねられた細い葦。
人間らしくあるためのツールにその装飾がある意味。
そに込められてきた人々の想いを感じながら、お使いいただければ・・・と思います。
◆England
◆Sheffield
◆Yates Brothers
◆推定製造年代:c.1919年
◆素材:スターリングシルバー、ガラス、金属
◆サイズ:全体長さ約11.7cm レンズ部分直径約4cm
◆重量:21g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A