ダマスキナード(金象嵌細工)のブローチ。
この小さなブローチを手に入れる時、蜂なのか蠅なのか、かなり悩みました。
結果的にはどちらでも構わない、ということで買い付けてしまったのですが、皆様はどんな印象をお持ちになりましたでしょうか。よくよく羽のつき方を観察すれば、私としてはやはりこれは蠅である、と思っております。
アクセサリーのモチーフとしては少々異色の蠅ですが、思いだせば真鍮小物の蠅を扱ったことがあります。掌に乗るくらいの大きさで、羽根がぱかりと開き、灰皿もしくは小物入れになる、というもの。ヨーロッパにおいては、頻繁に、というほどではないにしろ、馴染みのあるモチーフといえるのかもしれません。
「蠅/Fly」は多くの古代宗教で「霊魂」のシンボルとしてとらえられてきました。
聖書に登場するベルゼブブは「蠅の王」とよばれ、悪魔もしくは魔界の王として描かれています。またギリシアではハエは、聖なる動物といわれ、全般に置いて「絶えざる追求」を象徴するともいわれます。
*諸説あります。
さて、そんな蠅をモチーフとしたアクセサリー。買い付けは英国ですが、製造はスペイン・トレドと思われます。
特徴的なのは羽部分の金象嵌細工。黒地に金の輝きが美しく、細かな細工に目を奪われます。
このような金象嵌細工を「Damasquinado/ダマスキナード」とよびます。スペインの古都、トレドの名産であり、元々はシリアのダマスカスで生まれたとされる技法で、ダマスキナードの名前もダマスカスからきているとされています。
製法としては、まず鋼板の素材に線彫りを施し、24金や18金の金箔(6/1000mm)、金糸、銀箔などを埋め込んでいきます。
仕上がったら、下地の黒い風合いを出すために800-900度の高温に熱せられた液に浸け、さらに様々な模様を付け加え、磨きをかけて仕上げるのです。
モチーフは鳥や花など伝統的な具象物からアラベスク文様などのパターン、そしてモダンなデザインまで様々。
あくまでも手作業であり、職人技であるダマスキナードは、近年は職人もかなり減ってきているという話です。
ダマスキナードには多くのアイテムがありますが、形状はフラットなブローチやペンダントヘッド、お皿のように緩やかなカーヴのものがほとんど。
モチーフは花や鳥、蝶々などが多く、このような蠅モチーフのものはかなり珍しいものなのではないでしょうか。
チグリス・ユーフラテスの川辺、ダマスカスの名を持つ歴史ある工芸品が作り出す、小さな小さな蠅の王。
貴方の胸元やハットにそっととまらせてみてはいかがでしょうか。
◆英国買付/スペイン
◆推定製造年代:c.1970年代以降
◆素材:金属
◆サイズ:約2.4cm×1.6cm
◆重量:3g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*ブローチ留め具はご使用可能と判断しておりますが、ごく小さく、やや引っ掛かりがあまいです。
*針の先端は鋭いです。十分ご注意ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A