英国ヴィンテージ・エンボッサー。
「Embosser/エンボッサー」とは、文字通りエンボスを施す機器のこと。
英国ではヴィクトリア時代には既に、店や会社などの名称、住所やマークなどを刻印するために卓上のエンボッサーが使われていました。
金属の凹凸の型を組み合わせ、紙に凹凸をつけた仕上がりは、表情豊かで高級感があり、たいそう好まれたようです。
さて、今回ご紹介するのは、少し時代が新しいエンボッサー。
全体的にグレーでメタリックな仕上がりで、インダストリアルな美しさを持っております。
エンボッサーの常としてずっしり重く、847gもあります。
ボトム部分にはクラシカルなラベルが貼られており、以下の文字がみられます。
LEWIS, COATES & LUCAS LTD
COMPANY SPECIALISTS
12 NORFOLK ST. STRAND
LONDON W.C.2.
「LEWIS, COATES & LUCAS LTD」については、「Company registration agents」(登記会社のようなものでしょうか?)として活動していた書類を散見することができます。たとえば1948年に他の会社が設立される手続きを行った書類などをみつけることができました。ただ、「LEWIS, COATES & LUCAS LTD」自体の創業と閉業についての年代は特定することができませんでした。
一方で、「12 NORFOLK ST. STRAND LONDON W.C.2.」という住所については興味深いものがあります。
まず、「STRAND/ストランド」とはロンドン、トラファルガー広場からシティに向かって走る通りのこと。岸辺を意味する古英語「ストロンド」に由来し、テムズ川と並行に走る岸辺の道であり、西端にあるストランド1番地は、チャールズ2世の時代(1660~1685年)ロンドンで最初に住居番号が付けられた場所と言われています。まさにロンドンの中心部であり、現在でもサヴォイ・ホテルや多くの教会、劇場などが立ち並ぶ美しく賑やかな通りとなっています。
さて、この地名であれば、そのストランド付近にあるであろう「NORFOLK ST/ノーフォークストリート」。実はこの通りは現在では存在していません。
かつてノーフォークストリートは、St Clement Danes Churchのあたりから、現在でも残るArundel Street、そしてSurrey Street の間に並んで走り、ストランドからテムズ川傍のテンプル・プレイスを繋いでいました。
NORFOLK ST 11-12番地はAmberley Houseという美しい建物が建っていましたが、1970年代に再開発のために取り壊されてしまった、という記録が残っています。
以上のことから、このラベルをつけたエンボッサーは1970年代より以前のもの、ということがいえると思われます。「Company registration agents」であった「LEWIS, COATES & LUCAS LTD」は、会社の起業(および閉業)などの書類を揃え、手続きをサポートしつつ、このようなツールまで扱っていたという事でしょう。
実際に紙を挟み、ぎゅっとプレスしてみると、サークルのなかに「CHANGRALAD LIMITED」の文字と、クロスとフルールドリスを組み合わせたような文様を刻印することができます。
「CHANGRALAD LIMITED」の文字はやや薄めですが、美しい文様はくっきりと浮かび上がります。
なお、残念ながら「CHANGRALAD LIMITED」に関しては何の情報も得ることができませんでした。あまりに情報が無いので、開業するにあたっていろいろ揃えたけれど、結局は開業できなかったのかな・・・などと想像しております。
今は無きノーフォークストリートで生まれた、インダストリアルなエンボッサー。
正体不明の会社名と共に、次の持ち主を探しております。
貴方のお手元で活用してみてはいかがでしょうか。
いっそのこと「CHANGRALAD LIMITED」を開業してしまうのもよろしいかもしれません・・・。
◆England
◆推定製造年代:c.1970年代より前
◆素材:金属
◆サイズ:幅約16.3cm 奥行き約6.2cm 高さ約15.2cm
◆重量:847g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A