英国アンティーク、祈祷書。
英国の大きなアンティークセンター。
その隅の大きなキャビネットの中に、ひっそりと置いてあった古書をご紹介いたします。
タイトルは「コモンプレイヤー/Common Prayer」。これは英国国教会において、お祈りに使う本=祈祷書のことをいいます。
象牙色の表紙はつるりとしており、ややふっくらとした感触で、うっすらと筋をみることができます。恐らくこれは象牙を模した樹脂と思われ、表紙には天使が施されています。
このタイプの象牙色の表紙の装丁は、アンティークの祈祷書や聖書では時折みかけますが、珍しいのは背表紙のみ革で仕立てられていること。シックなブラウンレザーに金箔で「Common Prayer HYMNS A&M*」とおされており、ポイントに六芒星(ダビデの星)が配されています。
ちなみにHYMNSとは聖歌、讃美歌のこと。A&MはAncient(古代の)& Moden(現代の)の意味。この本の後半には沢山の讃美歌がおさめられているのです。
出版はオックスフォード・ユニバーシティ・プレス、印刷はWilliam Clowes & Sons Limited。
年代は明記されていないのですが、オックスフォード・ユニバーシティ・プレスのシールドのマークが1893年発刊の他の本のものととても似ていること、そして1803年創業のWilliam Clowes & Sons Limitedがその名前となったのが1880年であること、などと考え合わせれば、おそらく1880年から1910年頃のものと思われます。
さて、表紙の話をもう少し。
表紙の中央には、顔を寄せ合う五人の天使をみることができます。
五人...?
キリスト教に詳しい人はその数に疑念を持つかもしれません。
キリスト教で有名なのは「七大天使」。そしてそのなかでも高位とされるのは「四大天使(ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル)」とされています。つまり「五大天使」という区分けは無いようなのです。
またよくよく見れば、天使はほぼ顔のみで、顔の脇に羽がみえます。顔に翼がある天使といえば、智天使ケルビム。
ケルビムは、四つの顔と四つの翼を持つ怪物のような姿で描かれてきましたが、不老とされたのが誇張され、ルネサンス期にはそのまま描写するのではなく、翼を持つ愛らしい赤子の姿で描かれるようになりました。
ただし、天使の本来の宗教的意味は失われており、単なる飾りとして本質的には装飾的に描かれることが多かったようです。
その別の姿として多かったのがプット/Putto(複数はプッティ)。古典的なモチーフとして、古くからエッチングや彫刻、そして絵画やフレスコ画など、宗教的、世俗的な芸術作品にしばしば登場してきました。
そんなことから、この祈祷書の表紙の天使は、5人のプッティいうことなのではないかと推測いたします。
100年を超え、象牙色の表紙にそっと集まる五人のプッティ。
彼らの密やかな囁きが聴こえてきそうな英国アンティークの古く珍しい一冊を、貴方のお手元にお届けいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.1880-1910年代頃
◆素材:紙、樹脂、革
◆サイズ:約7.5×11.5cm 厚さ約2.7cm
◆重量:149g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、書き込み、折れ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A