フランスアンティーク、メルツェルのメトロノーム。
英国南部のアンティークタウン。
そのなかで比較的大きなアンティークセンターの中、無数のグラスキャビネットの中で存在感を放っていた、古いメトロノームを手に入れて参りました。
すらりとした四角錐の幾何学的な美しさ。深い色味の木仕上げ。手に取り、確かめてみれば周囲の材は希少なローズウッド材であり、間違いなく最高級クオリティであると確信いたしました。
当店で何度かご紹介してきたアンティークのメトロノーム。メルツェルのものもありましたが、多くはマホガニー材でした。
もちろんマホガニーは素晴らしい材ですが、やはりローズウッドは別格。重く硬く、加工困難であるというデメリットを乗り越えれば、豊かな杢目と艶やかな仕上がりが、例えようもなく美しく品物を彩ります。
正面の蓋についたプレート中央には以下の文字がみられます。
METRONOME
SALON
MAELZEL
メトロノーム
サロン
メルツェル
そして周囲には以下の文字。
PARIS
LONDRES
BRUXELLES
HOLLANDE
AMERIQUE
PARIS
パリ
ロンドン
ブリュッセル
オランダ
アメリカ
パリ
そもそもメトロノームの始まりは、ドイツ出身のJohann Nepomuk Malzel/ヨハン・ネポムク・メルツェル(1772-1838)が1815年に特許を取得したもの。
今回ご紹介するメトロノームは、そのメルツェル/MAELZELの名を冠した、古いお品物です。
メルツェルは特許取得の翌年、1816年からパリで生産を始めます。ベートーヴェン（1770-1827）を皮切りに、メトロノームは音楽にとってなくてはならない存在となってゆき、世界各国へと広まっていきます。メルツェルのメトロノームは多くがこのような変形六角形のプレートで、最初の頃はシンプルに「メルツェルのメトロノーム」の文字が、そして後年は輸出用にと考慮されたであろう各国の名がプレート周囲にぐるりと配されたものが生産されます。今回ご紹介するタイプはその周囲の国名があるタイプ。
Card tempo scale(テンポが記された紙ラベル）の下部には以下の文字がみられます。
QUALITE EXCELSIOR
カリテ・エクセルシオールはパリにあった会社（もしくは工房）で、音楽用品をつくっていたそうです。創業、廃業の年代ついては不明ですが、19世紀後半から1930年代頃までにかけて、音楽を愛する家庭の多くにはカリテ・エクセルシオールのメトロノームがあったとか。
メルツェルのメトロノーム、そしてカリテ・エクセルシオールのものは、正直他でも見かけることはあるかもしれませんが、今回のお品物ののようにローズウッドのものはなかなかないのではないでしょうか。スペシャルバージョンとして制作されたか、だれかの特注品であったのかもしれません。
小さな鉤爪を回して蓋をあければ、振子がついた面が現れます。
また、側面に拍子ベル音を設定するための棒がついており、引っ張ったり押したりすることで拍子ベルが鳴るようになっております。
なお、拍子ベルの音は微かにしか聞こえませんのでご了承ください。
以下の動画で動作状況をご確認いただけます。
そして、珍しいのはゼンマイを巻くためのネジが内面に収納できるようになっていること。
このネジを無くしてしまう方が多いようなので、これはなかなか工夫された仕様といえるのではないでしょうか。
艶やかなローズウッドに囲まれた四角錐は、オブジェとしてこのうえない存在感を放ち、見る者の心を捉えます。
蓋を開けて振り子をゆらせば、世紀を超えてきたリズミカルな振動が心地よく空気を揺らし、貴方の心に響くことでしょう。
◆England買付/France
◆推定製造年代:c.1890-1910年代頃
◆素材：ローズウッド・金属・紙・他
◆サイズ：幅約11cm 奥行き約11.2cm 高さ約23cm
◆重量:580g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、材の割れ、カケ等がみられます。
＊ゼンマイを巻くための鍵が付属しています。
＊現在のところ動作しますが、正確にリズムを合わせる用途としてはお薦め出来ません。
＊拍子ベルの音は微かにしか聞こえません
＊詳細は画像にてご確認ください。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d＋A
