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Friday

浮かし測る美しき装置 / Antique Sikes Hydrometer by Dring & Fage

 英国アンティーク、ハイドロメーター(浮秤/比重計)。





















「Hydrometer/ハイドロメーター(浮秤/うきばかり ふひょう、もしくは比重計)」。
ご存じの方は少ないのではないでしょうか。


アンティークの仕事をしていなければ、私もきっと知らなかったことと思います。

ハイドロメーターとは、浮力の概念に基づいて液体の相対密度を測定するのに用いられる計器のこと。試料(液体)を背の高いメスシリンダーなどの容器に注ぎ、ハイドロメーターを自由に浮かぶようにし、どのくらいの浮力を持つかで液体がどんなものかを測定するものです。

例えば牛乳の密度、液体中の糖分密度、アルコール度数の測定などに利用されてきており、用途ごとに仕様も異なります。歴史は古く、原理としては古代ギリシアの哲学者アルキメデス(紀元前3世紀)にまで遡るといわれています。



今回ご紹介するのは、その中でもアルコール用のハイドロメーター「Sikes Hydrometer/サイクス・ハイドロメーター」です。


ちなみに「Sikes」とは人名で「Bartholomew Sikes/バーソロミュー・サイクス(?-1803)」のこと。英国の士官で、18世紀後半に液体のアルコール含有量を測定できる装置を完成させました。

この装置の成功により、後に彼の名前は議会法「サイクス比重計法1816」に残ることとなり、1816年から1980年まで、英国では蒸留酒を測定するためにこの比重計が使用されてきました。

参考:サイエンスミュージアムグループ Bartholomew Sikesの頁




今回ご紹介する品物をみてみましょう。

ずっしりとしたマホガニーの木箱には、蓋部分に以下の文字が刻まれています。


(クラウンのマーク)
1856
C & E



「C & E」とは「Customs & Excise」の意味であり、しいて訳せば「税関と物品税(消費税)」となります。つまりアルコールの度数を計測し、税金がどのくらいかかるのかを見分ける装置という事になります。


浮秤の側面には小さく以下の文字が見られます。

DRING & FAGE LONDON

「Dring and Fage/ドリング&フェイジ」とは、1790年頃にロンドンで設立されたハイドロメーターと数学機器のメーカーです。主に物品税目的のものを製造しており、内国税収入局から任命されてハイドロメーターを製造していました。



参考:サイエンスミュージアムグループ Dring & Fageの頁



もともと別だった部門「Customs」と「Excise」が統合されたのが1909年。そして1940年にはドリング&フェイジは会社化され「Dring & Fage Ltd」と付けるようになったため、今回のお品物は1909年から1940年までのものと推測いたします。浮秤の側面にはさらに「No1856」の文字が見られますので「1856」は恐らくタイプを示す番号なのかと思います。



蓋を開ければ、鈍い金色の輝きをもつ浮秤と、小さな重りが整然と並んでいます。ただ、残念ながら奥にあったはずの温度計は入っておりません。後年何らかの理由で失われてしまったのかと思います。

(参考:水銀の温度計だったと思いますので、もし在ったとしても英国から日本へ持ってくる手段は限られます。航空便では気圧の関係で破損の可能性が高く、水銀製品の機内持ち込みはご法度です。コンテナに積んで船便のみが安全な唯一の道です。)



厳重な木箱に納められたハイドロメーター。その測定結果によって明暗を分けることもあったかもしれません。


機能から生まれた不思議と美しいフォルムを愛でつつも、その歴史へと思いを馳せてみてはいかがでしょうか。



◆England
◆DRING & FAGE 
◆推定製造年代:c.1909-1940年頃
◆素材:木、布、真鍮、他
◆箱外寸サイズ:幅約19.6cm 奥行き約7.5cm 高さ約5.6cm
◆総重量:467g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、木材のワレ等がみられます。
*箱の留め具の凸部を横にスライドさせることで開きます。
*留め具の状態は良好で開閉はスムーズです。
*温度計は付属しておりません。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。



Todd Lowrey Antiques
by d+A