英国アンティーク、携帯用日時計兼方位磁針。
日時計。
時を伝えるモノは数あれど、原点ともいえる日時計に心惹かれる人は多いのではないでしょうか。当店では今まで数点の日時計をご紹介して参りました。ボディが真鍮のもの、木製ベースのもの、ドーム型のもの等々。
今回ご紹介するのは、緻密なボックスウッドのケースに収められた美しい真鍮製の日時計です。
まず大きさは約5.6×7.5cmという、名刺よりやや小さいサイズの矩形。艶やかな表面にはかろうじて以下の刻印が確認できます。
J.CASARTELLI
43 MARKET STREET MANCHESTER
「J.CASARTELLI」は「Giuseppe Luigi Casartelli/ジュセッペ・ルイジ・カサルテッリ」によって創業されました。彼は1834年、11歳で家族と共にイタリアから英国リバプールに移住し、バロメーターと温度計を製造する工房で働き始めます。
後に「Joseph Louis Casartelli/ジョセフ・ルイ・カサルテッリ」と改名、1851年にマンチェスターへ移り住み、義理の兄弟から精密機器の製造事業を購入すると、望遠鏡や顕微鏡、カメラに至る光学機器など様々な機器の設計を改善し事業を拡大しました。
次男の Joseph Henry/ジョセフ・ヘンリー が、1882年頃から父親のもとで働くようになり、1892年には会社名を「J. Casartelli and Son」とします。1900年に父親が他界した後も、ジョセフ・ヘンリーによって事業は継続されます。1929年にはリバプールのルイ・カサルテッリの事業も引き継ぎましたが、1933年の大恐慌の間に清算され、残りの会社は、1966年までカサルテッリの名前で測量とテキスタイル試験装置を製造、販売し続けました。
以上のことから、このお品物はマンチェスターに移った1851年から、会社名が「J. Casartelli and Son」に変わる1892年までの間の品物であると思われます。
小さな引っかけ金具を外し、蓋を開けば糸が張られた日時計が現れます。この糸は日時計で時間を指し示す「ノーモン」の役割を果たしています。蓋を開いたままにしておくアームもあり、十分かつ美しい姿で安定します。
また、文字盤の外に極小の真鍮ボタン(ストッパー)があり、そこを指でぎゅっと押さえれば方位磁針の針が固定される仕組みがついておりますので方位磁針としての役割も果たすようになっています。蓋側には日時計の説明書きが残っており、ロケーションによって差が生じることを示しています。
かなり長くなりますので、今回は日時計の歴史や説明は省かせていただきます。ただ、機械式時計も初期は日時計で狂いを直していたほどに時計の原点であること、地球のどこにいるかで時間に差が生じること、本来は水平ではなく緯度により傾けて使用するべきでること、などを申し添えておきます。
そんな状況ですが、試しに日の当たる場所において時間を測ってみました。参考までに写真をご覧ください。
撮影した時刻は12時50分です。ノーモン代わりの糸の影は13時30分あたりを指しています。よって40分ほどの誤差があります。
本来であれば16分足した後に時間補正の方程式も考慮する必要があるのですが、それにしても30分弱ほど進みすぎているようです。
何らかのことで糸や蓋の角度が変わったのか、もしくは150年前後の時を超えたために起きたのかは不明ですが、ご使用になる際はどうかご了承いただきますようお願いいたします。
しっとりと滑らか、緻密ゆえにほとんど杢目もみえないほどのボックスウッドの矩形から展開される方位と時間。それは陽の光を浴び、貴方の掌の上でゆらゆらと揺れながらその本領を発揮します。
機能美という言葉さえどこか陳腐に感じてしまうほどの、英国ヴィクトリアンの美しい装置を、是非貴方の手でご体感ください。
◆England
◆J.CASARTELLI
◆推定製造年代:c.1851-1892年
◆素材:木(ボックスウッド)、ガラス、真鍮、他
◆サイズ(蓋を閉じた時):約5.6×7.5cm 厚み約1.95cm
◆重量:76g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、小傷や汚れ、変色や錆等がみられます。
*季節によりますが、直射日光下に放置すると、ガラス内部が結露します。
結露しても機能に影響はありませんが、内部が見えずらくなりますので、日陰で冷ますか、ドライヤーなどの冷風をあてると元に戻ります。
*コンパスは電磁波などに影響を受けやすいのでご注意ください。狂ってしまった場合は、簡単な直し方がネットなどで紹介されていますのでお試しください。
*表示される時刻は現時点で少し進みすぎていることを確認しております。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A