英国アンティーク、携帯用ライティングボックス。
とても珍しく特別なアンティークのご紹介です。
幅僅か20cmほどの木箱。銘木ロースウッドで作られており、触れば滑らかな肌触りでいつまでも撫でていたくなる誘惑に駆られます。蓋には真珠色に輝くマザーオブパールの「ヴェイカントカルトゥーシュ/Vacant Cartouche」が嵌めこまれており、鍵穴回りも同じ材で飾られています。
蓋を開けば、インク瓶とペン刺し、そしてペントレイや小物入れが現れます。そう、これは「Travelling Writing Box/携帯用ライティングボックス」です。
当店は今まで数点「ライティングスロープ」を販売してきました。大きさはA4大ほどで、箱を広げればインク壺や書き物スペースが現れ、収納部もついているものです。旅行や行軍時に携帯し、そこで書き物が出来るデスク兼収納は、贅沢かつ実用的な品物として富裕層が好んで使っていた品物でした。
今回の携帯用ライティングボックスは、その縮小版ともいえるもの。
デスク部分はないものの、インク壺やペントレイ、小物入れがついており、全体の仕上げは最高に美しく優雅。小さな鍵でローズウッドのボックスを開けば、そこに広がる小さな世界は、物を書くことがお好きな方なら誰もが魅了されるのではないでしょうか。作られた時代は古く、ヴィクトリア時代と推測いたします。
ここで内容物をご説明いたしましょう。英国買い付けからそのままの状態でご紹介いたします。
まずはガラスの本体と銀メッキの蓋がついたインク壺。1つはネジで開閉し密閉度が高いもの、もう1つは比較的容易に蓋が開いてコルクの栓が蓋裏についたものです。こちらはインクではなく、何かパウダー状のものを入れていたような気がします。
他に以下のものが入っています。
1:ディップペン(ペン先までの長さ15.7cm) シャフトの先端金属に「Parkins & Gotto, 54 & 56 Oxford Street」の刻印入り。本体は恐らくボーン(骨)。ペン先取り外し可能。
2:ディップペン(ペン先までの長さ12.7cm) シャフトの先端金属に「Parkins & Gotto, 24 & 25 Oxford Street」の刻印入り。本体は木製。ペン先取り外し可能。
3:ディップペン(ペン先までの長さ16.8cm)シャフトの先端金属に「 Johann Faber, 10 Paternoster, Building S, London」の刻印入り。本体は木製。ペン先取り外し可能。
4:ディップペン(ペン先までの長さ16.5cm)シャフトの先端金属に「W.S. Hicks」の刻印入り。本体はマザーオブパール。ペン先取り外し可能。
5:シーリングスタンプ(長さ3.6cm 直径1.1cm) ハンドルはボーン(骨)、刻印の内容はRooster(雄鶏)と「While I Live I'll Crow(生きている間は鳴く)」の文字。
6:折り畳み式定規 広げた時長さ6インチ(15.24cm)ボックスウッド、真鍮
7:ミニチュアナイフ (折りたたみ時長さ2.3cm)マザーオブパール、金属(現在それほど切れ味はよくありません)
他に数個のペン先と、使いかけのシール用ワックス、小さな鉛筆、赤いウェス、以上となります。
ディップペンのメーカーについて、簡単ではありますがご説明をしておきます。
「Parkins & Gotto/パーキンス アンド ゴットー」はWilliam ParkinsとHenry Jenkin Gottoによって設立され、文具をメインに、後には鞄やスポーツ用品など幅広い品物を扱うようになった会社です。主としてロンドン、オックスフォードストリートを拠点とし、商売が広がるにつれてどんどん拠点は増えていきました。1860年には美術協会からライティング ケースに銀メダルが授与されるほどでしたが、20世紀までは続かず、1912年の記録には既に名前をみつけることは出来ませんでした。
「W.S. Hicks」は1818年ニューヨークに生まれたWilliam S. Hicksによって作られたペンの会社です。当初の名称は「Hicks, Larcombe and Mitchell」でしたが、1848年に「W.S. Hicks」に改名されます。1863年にロンドン、そしてと1875年にパリ工場が設立されましたが、1890年にヒックスが亡くなり、彼の息子が後をついで「Wm. S. Hicks and Sons」という名前となりました。
このことから、ディップペンもヴィクトリア時代の品物であると思われます。
小さなシールスタンプは雄鶏と、雄鶏に定番として在るモットー「While I Live I'll Crow(生きている間は鳴く)」が彫られています。夜明けの使者としても知られる雄鶏は、勇気と自信、勇敢さの象徴。「自分たちを護るためには死ぬまで闘う」意味も込められており、家や町の紋章としてもみられるシンボルでもあります。
恐らく、このライティングボックスの持ち主が、自分のシンボルとしていたのではないでしょうか。
小さな鍵で箱を開け、インク壺の蓋を開けてペンを浸し、手紙を書き、封蝋で閉じる。ヴィクトリアン時代に行われていただあろう、そんな一連の所作が目に見えてくるようなライティングボックス。
書き、伝えることの大切さを改めて思い起こさせてくれるような英国アンティークの逸品を、是非貴方のお手元でご堪能ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1870-1890年代頃
◆素材:ローズウッド、ボックスウッド、マザーオブパール、ガラス、レザー、金属、他
◆箱サイズ:幅約20cm 奥行き約8.6cm 高さ約5.3cm
◆総重量:526g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*鍵は施錠可能ですが、古いお品物なので頻繁な施錠はお勧めいたしません。
*ペン先は日本で現在一般的に販売されているGペン、丸ペンに交換可能です。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A