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Friday

ジョージアンの茶番劇を愉しむ / Antique Gold Filled Fob Seal with Paul Pry

 英国アンティーク、金張りのフォブシール。















今回は興味深いフォブシールのご紹介です。



フォブシールとは、18世紀から19世紀にかけて、貴族や紳士の間で実用的に使用されてきた印章(シール)の装飾品のこと。

懐中時計の鎖に付ける飾りをフォブといいますが、それに印章を組み合わせた物がフォブシールとなります。当時は懐中時計等にチェーンで下げつつ、手紙を封印するめに蝋に押して使用していました。

19世紀以後は女性にも人気が拡がり、ネックレスや装飾品として、チェーンや紐の先に付けるフォブシールの形をした飾り用ジュエリーが流行しました。高級品は本体が金、そのほかはスターリングシルバーや金張りで出来ているものが多く、一時期はピンチベックもありました。印面は天然石が多かったようです。



そんなフォブシール。

今回ご紹介するものは周囲はなんらかの金属に Gold Filled/金張りが施されたもの。擦り減ってはおりますが、ホタテ貝などの細かな装飾も施された凝ったものです。中心にはめ込まれているのは、おそらくシトリン(水晶の一種)と思われます。作られた時代は古く、1825年以降の19世紀と推測いたします。(1825年の意味は後述)


印章の内容をよく見てみましょう。


センターには傘を小脇に抱え、帽子を被って腰を低くした紳士が刻まれ、周囲にはかなりすり減っていますが以下の文字が刻まれています。


I HOPE I DON'T INTRUDE 


「INTRUDE」が「立ち入る、邪魔をする」の意味ですので「お邪魔でないと良いのですが」のような意味かと思います。 


この帽子を被ったキャラクターは「ポール・プライ/Paul Pry」。英国の劇作家「John Poole/ジョン・プール(1786-1872)」による3幕の喜劇、主人公と同名の「ポール・プライ」の主役です。1825年にロンドンで初演された「ポール・プライ」は好評を博し、その後ニューヨークへも渡ります。1870年初頭まで人気が続いた大ヒット作でした。


Coloured etching depicting John Liston
in the character of Paul Pry


ストーリーは、好奇心旺盛な怠け者、そしてお節介で、いたずら好きのコミカルな男=ポール・プライを中心に展開されます。戻って盗み聞きする口実を作るために、どこに行くにも都合よく傘を置き忘れる人物。しかし最後には、より深刻な問題を起こした人々を告発する書類を、井戸から取り出し英雄になる...というお話です。そんな彼の口癖が「I HOPE I DON'T INTRUDE/お邪魔でないと良いのですが」ということです。


印章には一般的にはモノグラムや紋章を刻みましたが、もちろん他にもオーダー主の好きなパターンや文言が刻まれることもありました。

例えば手紙に封蝋をし「お邪魔でないと良いのですが」と添えることは、かなり洒落たことなのではないかと思います。


今使用しても、文字がすり減ってあまり読めませんが、このキャラクターを知っている人であれば、思わずニヤリとすることは間違いないでしょう。


チェーンで下げれば、存在感あるアクセサリーとしても十分に実用的。

ジョージアンの大人気茶番劇を封じ込めた、こだわりのフォブシールを是非あなたのお手元でご鑑賞ください。




◆England

◆推定製造年代:c.1825年以降の19世紀

◆素材:金張り、おそらくシトリン

◆サイズ:約1.5×1.9cm 高さ約2.7cm

◆重量:10g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。



Todd Lowrey Antiques

by d+A