英国アンティーク、木箱入りトランメルスヘッドのセット。
「トランメルスヘッド/Trammels Head」ご存じでしょうか。日本語に訳すのが難しいのですが、強いて追えば「竿コンパス」。
日本語ではないのですが「ビームコンパス」ともいいます。直線定規（定規でなくても直線のもの）の任意の位置にコンパス脚を付けた製図用具で、普通のコンパスで描くことのできない大きい円を描くときに用いるものです。
今回ご紹介するのはそのトランメルスヘッドのセット。
マホガニーの木箱に納められており、木箱は正面ボタンを押しながら開閉する仕組みです。
2個のトランメルスヘッドはそれぞれ取り付け部分がネジで締め付けることができるようになっており、ここに定規や木材などを挟んでとめ、ビームコンパスとして使用します。試しに檜の角材と組み合わせてみましたのでご参考にしてください。
トランメルヘッドの片方は、さらに微調整ができるような機構も備えているところがニクイこだわりといえるでしょう。烏口や鉛筆、そしてポイント用の針と、付け替えることができるようになっています。材は真鍮で、歳月を経て渋い色合いになった金色がなんともいえない風格をだしております。
木箱の蓋裏には以下の文字が見られます。
ROBSON
NEWCASTLE ON TYNE
45 DEAN STREET
ニューカッスル・オン（アポン）・タインとは、イングランド北東部、タイン川河口近くに位置する工業都市。産業革命時にはニューカッスル出身のジョージ・スティーブンソンが蒸気機関車を実用化したことでも有名です。
1847年には英国を代表する重工業メーカーアームストロング社の工場が建設され、造船業が盛んで19世紀末ごろには世界最大の造船所であり最盛期には世界の1/4の船舶がこの地で造られたといいます。
また、「ROBSON/ロブソン」とは1867年、Frederick Robsonによって設立された「F. Robson & Co.」のことと思われます。バロメーターや製図道具、そして地震計などの計測器や眼鏡を含む光学機器などを製造していました。
当初の住所は45 DEAN STREET。そして1919年には 16 Pilgrim Street に移転。そして現在でもその住所で眼鏡屋として営業を続けています。
ロブソン・オプティシャン オフィシャルサイト
https://www.robsonopticians.co.uk/
また、木箱の上蓋には「A.E.SHARP」の刻印が押されています。おそらく持ち主の名前と思われます。
かつてSHARP氏は、どんなお仕事をされていたのでしょうか。
トランメルスヘッドを使うお仕事といえば、建築関係か家具関係でしょうか。烏口まであるセットですので、きっと図面を引いていたのかと思います。大きな円や弧を描くために、おそらく当時かなりな高級品であったロブソンの真鍮製のセットを手に入れ、大切に使っていたのではないでしょうか。
余談ではありますが、昔、建築家フランク・ロイド・ライト（1867-1956）の展覧会に行ったことがあります。
そこでは彼が透視図（パース）を描いている様子が写真で紹介されていました。1点透視は焦点が図の中にあることが多いので良いのですが、2点透視は2つの焦点が図の外となり、遠くなればなるほど歪みの少ない透視図を描くことができます。
巨大なデスクにの中央には紙、そして2つの焦点は遥か外側に針でとめられており、そこから2mはあろうかという定規を使い、建造物の透視図を描いているさまがみてとれました。ライトもきっと場合に応じて、今回のようなトランメルスヘッドを使っていたのではないでしょうか。
このような古く美しい機器を手にするたびに、昔の持ち主への敬愛にも似た思いを抱きます。実際に使うことはもちろん、ただそばに置くだけでも、なにかを作るために作られた精緻な機器は、私たちに何かを与えてくれるようです。
モノづくりをされる方へ。
19世紀の英国から伝わる確かな想いを、どうぞお受け取りください。
◆England
◆推定製造年代:c.1867-1919年、おそらく1880-1900年代頃
◆素材：真鍮、木、布、他
◆サイズ（木箱外寸）：幅約12.4cm 奥行約7.3cm 高さ約2.6cm
◆総重量：116g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。
＊檜の角材は付属しません。
＊詳細は画像にてご確認ください。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d＋A
