羊皮紙に綴られたヴィクトリア時代の賃貸契約書。
古い書類を手に入れました。
わずかに透明感のあるアイボリーの紙に、流麗なハンドライティングで綴られた冊子。
表紙には美しい飾り文字で以下のタイトルが掲げられています。
「This Indenture」
「この契約書」は・・・と、以下、契約書の内容が連綿とつづられています。
裏表紙には、以下の内容。
Dated 5th March 1895
Mrs.H.R.Little V
another
to
G.Maxwell Esqre
Counterpart
Lease
No.82 Palace Gardens Terrace
in the Country of Middlesex
From 29th September 1894
for yers 21
Expires 29th September 1915
Determinable by Lessee at 7
or 14 years
Rent £105
・・・この契約書は「No.82 Palace Gardens Terrace」という場所の賃貸契約書です。
また、文中に在る「Counterpart」とは「同等の/写し」の意味ですので、本契約書の控えの1冊なのかもしれません。
内容は「Mrs.H.R.Little V」から「G.Maxwell」氏へ「No.82 Palace Gardens Terrace/パレスガーデン・テラス 82番地」を1894年9月29日から1915年9月29まで21年間貸し出す、という内容。
ちなみに「Esqre」とは中世ヨーロッパでは見習い段階の騎士を意味しましたが、後にジェントリの一階級、ひいては男性への敬称に用いられるようになった言い方です。
料金は105ポンド(年間だと思います)。
借主からの契約解除は7年もしくは14年、と記載されています。
さて、「パレスガーデン・テラス 82番地」とはどんな場所なのでしょうか。
住所にあるMiddlesex/ミドルセックスとは、1965年まで存在したイングランドのカウンティ(州)。1965年「グレーターロンドン」の設置に伴って廃止された名称です。
現在はその多くの場所が私たちのイメージする「ロンドン」にあたる場所となっています。
そのなかでも「No.82 Palace Gardens Terrace」は現存するアドレス。(ぜひグーグルマップでみてみてください)
場所でいえばケンジントン。ケンジントン宮殿の裏手に位置し、ノッティングヒル・ゲート駅にほど近い高級住宅街といえる場所です。
1894年当時でも、たいそう良い場所だったのではないでしょうか。
1890年代、家庭の年収が300ポンドを超えたあたりから、メイドを二人雇い、旅行をしたり本や新聞を購読したりするなど、中の上くらいの生活がおくれたといいます。
年105ポンドの家賃を払うことができる、ということは、それ以上の富裕層であったことは間違いがないでしょう。
そんな内容自体も興味深いのですが、なによりも印象的なのはハンドライティングの美しい筆記体と、使用されている紙。
これは、羊皮紙。
文字通り羊の皮から作られた紙で、長持ちし、独特の風合いがあるのが特徴。
破こうとしてもかなりな力が必要なほど丈夫なため、聖書や公文書等、貴重な文書に使用されてきました。
現在でも生産、販売されていますが、A4版で1枚約5000円ほど(販売店や質によりばらつきあります)。
そんな貴重な羊皮紙に記された、リース契約書。
触ってみれば、しっとりとしなやかな、それでいて張りのある風合い。
植物素材の紙に比べればなんともなまめかしく、生地でいえば綿や麻に対する絹のような印象といっても過言ではありません。
随所に貼られた当時の印紙や、ノータリーシール(蝋の印)も、ますますこの契約書を特別な雰囲気に仕立て上げています。
このままゆっくりと眺めたり。
額装して飾っていただいても、また撮影用の小道具としてお使いいただくのもよろしいかと思います。
ヴィクトリアンのロンドン、パレスガーデンテラス82番地。
明日からはそこが貴方の住まい。
・・・そんな想像をしつつ、お愉しみください。
◆England
◆推定製造年代:c.1890年代
◆素材:羊皮紙
◆外箱サイズ:幅約20.6cm 高さ約26.1cm
◆重量:62g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、羊皮紙には折れ、小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A