F. LYDON 原画、 B Fawcettによる19世紀多彩色木版画。
貴族による狩りの風景を描いたこの作品は、英国北東部の街で手に入れたひとしな。
視界にはいりきらないほどの多くのフレームが飾られている中で、自然と眼がとまったのは、近景と遠景が絶妙に配された構図と、優しくも格調高い画風によるものだったような気がします。
よくみれば、中央下部に配されたタイトルは、
"Oft listening how the hounds and horn Cheerly rouse the slumbering morn."
これは「まどろみの朝を平和に目覚めさせる、猟犬の吠声と角笛の音」という意味だと思われます。
そして、この版画にはふたつのサインがはいっています。
左下
F. LYDON.Del
右下
B.Fawcetti
「F. LYDON」とは、Alexander Francis Lydon/アレクサンダー・フランシス・ライドン(1836-1917)のこと。ライドンは英国の水彩画家、イラストレーター、版画家。
風景画、辞典などのための野鳥を中心とした細密なイラスト、本の挿絵などに多くの作品を残しました。
また、「B.Fawcetti」とはBenjamin Fawcett/ベンジャミン・ファウセット(1808-1893)のこと。19世紀英国を代表するウッドブロック・カラープリンター/多彩色木版摺師であり、ライドンとは多くの仕事を共にしたといいます。
この版画は、ライドンによる原画を、ファウセットがプリンターとして製作された、本の挿絵と思われます。
19世紀英国では、本は貴重品ではありましたが、人気は高く、ロンドンには多くの貸本屋があったといいます。1冊につき扉に1枚(もしくは章の変わり目にもう数枚)だけつく挿絵は、読者にとって大いなる愉しみであり、本の世界へといざなう大切なツールでした。
内部の文章とは別工程で刷り上げられる挿絵は、本が擦り切れても大切に扱われ、時には後年フレーミングされて、アートとして鑑賞されることも多かったようです。
今回ご紹介するものも、そのうちの1点。
フレームは艶消しブラックのシンプルなもの。
マットはシックなゴールドで、洗練された質感と色合いは、版画がもつ繊細な雰囲気をより趣き深くみせる効果をもっています。
壁にかければ、そこは19世紀英国の狩り場。
朝もやも消えない早朝、風にざわめく木立、犬の吠声、合図の角笛。
ひとときの時間旅行をお愉しみください。
◆England
◆推定製造年代:版画c.19世紀後半 フレームc.1960-1970年代頃
◆素材:紙・木・ガラス・他
◆フレーム外寸:幅約27.4cm 奥行き約1cm 高さ約22.4cm
◆重量:450g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、フレームには小傷や汚れが、版画には一部変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A