英国アンティーク、鸚鵡グリップのマラッカケイン。
珍しいステッキを手に入れました。
まず、シャフトは高級素材のマラッカ藤。
マラッカ藤(マラッカケイン)とは、マレーシア、マライ半島西岸のマラッカ海峡に面した港湾都市から出荷される周辺地域特産の藤の茎のことです。
もともとの材に斑(フラワー)が入っており、使えば使うほどそれが濃くなり、全体に艶がでてきて、しっとりと飴色になるのが特徴。その艶具合や斑などは個体差があり、その表情を愉しむのがマラッカケイン愛好者の愉しみであるといっても過言ではありません。軽く丈夫で表情豊か、そしてエイジングもたのしめるマラッカケインは、杖はもちろん、傘の柄にも使われており、現代においても英国紳士が大好きな素材。
英国王室御用達、老舗の傘メーカーFOXも、傘の柄の定番素材としてマラッカ藤を取り揃えています。
今回ご紹介するステッキは、程よい斑模様が散らばる濃い飴色のマラッカ藤のトップに、ちょこんと鸚鵡がとまっております。
手に入れたのは英国のアンティークフェア。品の良い英国紳士のストールで、いくつかのステッキと共にステッキスタンドに入っておりました。紳士によれば、シャフトのマラッカのほうがかなり古くヴィクトリアンの中頃であり、鸚鵡部分はおそらく後でつけた物だと思うけど、それでも十分古いと思う・・・とのこと。鸚鵡は真鍮製でずっしりとしており、複雑な凹凸が滑り止めのようになって、握り心地もなかなかです。
さて、鸚鵡は私たちには馴染み深い鳥ですが、英国やヨーロッパではどのくらい昔から知られていたのでしょうか。
古い説としてはアレクサンダー大王の時代から。アレクサンダー大王がインドから初めて鸚鵡を持ち帰り、人間の声で話すことから奇跡を起こす存在だと考えられていたとか。奇跡的な会話能力、見事な羽毛、希少性から、非常に珍重され、王と皇帝の間の贈り物として使われていたそうです。
その後、鸚鵡は宗教画や詩にもよく登場するようになります。
例えばフランドルの大家「ピーター・ポール・ルーベンス/Peter Paul Rubens(1577-1640)」による「Holy Family with a parrot/オウムと聖家族」。
例えばドイツルネサンス期の巨匠「アルブレヒト・デューラー/Albrecht Durer(1471-1528)」による「アダムとイヴ/Adam and Eve」。
このあたりでは鸚鵡は「善」や「雄弁」の象徴とされており、テューダー朝初期の詩人「ジョン・スケルトン/John Skelton(c.1463-1529)」は、自作の「Speke, Parrot」のなかで鸚鵡を「a byrde of Paradyse/楽園の鳥」と呼んでいます。
19世紀になると、それなりに裕福な人物であれば、鸚鵡をペットとして飼うことは一般的になりつつありました。
ロマン派の詩人ジョージ・バイロン卿(1788-1824)は1816-1818年、ヴェネチアのモチェニーゴ館に滞在しますが、その時連れてきたのは、召使14人、執事とゴンドラ漕ぎ各1名、猿2匹、熊1頭、鸚鵡2羽、狐1匹であったとか。・・・バイロン卿の破天荒さが際立つエピソードです。
鸚鵡は現在ではそのきれいな姿や、言葉をそのまま繰り返して覚えることから、「虚栄心」や「お喋り」、「ただ言葉をくりかえすだけ」といったイメージがあるかと思いますが、美しく頭の良い動物として、長く愛されてきた存在であり、かつては非常に価値のある存在として大切にされてきました。
おそらくこのステッキの持ち主も、ペットの鸚鵡をさぞ愛し、大切にしてきたのではないでしょうか。その姿を外出先でも愛でたいと、マラッカのシャフトに鸚鵡のグリップをつけたのかもしれません。
さあ、貴方も。
ヴェネチアのバイロン卿よろしく、世紀を超えてきた楽園の鳥、奇跡の鳥をお供に、街歩きをお愉しみください。
◆England
◆推定製造年代:c.1850-1900年代
◆素材:真鍮、マラッカ藤、金属
◆サイズ:長さ約92cm グリップ部分約4.3×5.5cm
◆重量:356g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色などがみられます。
*石突はしっかりとしています。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A