本を重ねたような意匠をした、インク瓶をいれる小さな木箱。
このようなタイプのパズルボックスは、19世紀の終わりころから20世紀にかけて、イタリア・ソレントの名産でした。
使用された木はオリーブ。小さめの仕掛け木箱は、お土産物としてとても人気だったようです。
本を組み合わせたようなデザインも特徴的で、デザインのモチーフは楽器や花、そして燕が多く使われました。
この木箱も、同じように本のデザイン、そして開けるためにはパズルを解かなければいけない、というお楽しみを持っています。蓋部分には「INTERLAKEN」の文字。蓋に施された象嵌細工が描く可愛らしいカップルは、スイスの羊飼いのよう。
INTERLAKEN/インターラーケンといえば、スイス、ユングフラウヨッホの麓の町。
これは推測ですが、ソレントのパズルボックスに惚れ込んだインターラーケンの人々が、自分の町の土産物としても売り出したくなり、インターラーケン・オリジナルデザインを特注したのかもしれません。
小さな本を模した蓋をあければ、硝子のインク壺が入っています。実際に使用されていたらしく、ちょっと飛び散ったインクは、確かにアンティークの証。
万年筆の開発者といわれるルイス・エドソン・ウォーターマンが、保険外交員だったころ、大口契約を取り交わすサインの際、ペンからインクがこぼれ契約を逃がしたという苦い経験からインク漏れのないメカニズムを開発するにいたった・・・という万年筆の開発秘話を思い起こさせます。
彼が初めて毛細管現象を応用した万年筆を創り出したのが1883年。もちろん初めは万年筆は高級品でしたので、インク壺は1930年代頃までは一般的に使われていました。
この木箱を手に入れたのはイングランド。
100年近く前、イングランドの一紳士が、フランスを通ってスイスまで行った旅行の記念に買ってきたものでしょうか?彼の書斎のデスクに置かれ、インクをペンに吸わせる度に、スイスへの旅の思い出をかみしめていたのかもしません。
木目は密で、美しい細工はみつめていても飽きることがありません。
しっとりとした古艶は過ごしてきた歳月の確かさを体現し、手にやさしい質感は懐かしささえ感じさせます。
とても珍しい、小さな逸品。
デスクアクセサリーとしてそっとスタンドの元に置けば、艶めく木目が100年の輝きをはなつようです。
◆イングランド買付
◆推定製造国:スイス
◆推定製造年代:c.1900~1930年頃
◆サイズ:幅5.1c, 奥行き5.6cm 高さ5.9cm
◆在庫数:1個のみ
【NOTE】
*古い品物であるため、多少の小傷や補修跡などがございます。詳細は画像にてご確認ください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A