イタリアアンティーク、スタンホープ覗き窓付ディップペン。
英国のアンティークフェアで手に入れた、凝ったフォルムのディップペン。
レターオープナーとしても使えるナイフのようなフォルムをした柄がついており、そこには紫色の可憐な花と共に、以下の文字がみられます。
Ricondo di Montenero
「Ricondo」とはイタリア語で「記憶」「思い出」のこと。そして「Montenero/モンテネーロ」とは、イタリアの都市名もしくは施設の名前。
都市名として「Montenero」を冠した場所はイタリア国内に数か所ありますが、今回の品物はおそらく「Sanctuary of Montenero」のものなのではないかと思います。
「Sanctuary of Montenero/Santuario Madonna di Montenero」=「モンテネロの聖母の聖域(聖母教会)」。リボルノ港を見下ろすモンテネロの丘に位置するこの聖母教会は、トスカーナで最も有名な場所の1つとされています。
オフィシャルサイト
https://www.santuariomontenero.org/index.php
これだけでも素敵なのですが、出色は一見ではわからない場所に隠された仕掛け。柄部分には直径わずか数ミリの穴が開いており、レンズが嵌めこまれています。光に向けて覗き込めば、そこには1枚の風景写真を見ることが出来ます。なだらかな丘陵地帯の向こうに海が広がるようにみえる風景は、モンテネロの丘から見える風景なのかもしれません。
そして、この覗く仕組みは通称「スタンホープ」といいます。
まず、「スタンホープレンズ/Stanhope Lens(もしくはスタンホープ)」とは、18世紀後半に英国の化学者、Charles Stanhope伯爵が発明した両面共に凸形状の拡大鏡のこと。
後にフランス人写真家の Rene Dagron が、自身が使い易いよう改良したものが一般的になったと言われています。
このスタンホープは拡大率が高いため、ごくごく小さな写真(マイクロフォトグラフ)も拡大してみることが可能でした。
そのため、たとえばロザリオ等の中心にスタンホープを組み込み、なかにマイクロフォトグラフを仕込んで、各地のお土産物として販売することが、1870-1910年頃まで大層流行しました。レンズ自体が2ミリから3ミリとかなり小さい上に、マイクロフォトグラフを撮影するのも大変な作業だったとか。ただ、小さいが故に色々なアイテムに組み込みやすく、スタンホープコレクターもいるというこだわりの仕掛けとなっています。
おそらく、このディップペンはモンテネロ聖母教会のお土産物として作られたのではないかと思われます。実用的でありこぶりなディップペンは荷物にならず、お土産に最適。そして小さなレンズを覗き込めば、モンテネロの丘からの風景が見えてくる・・・。
また、紫の花ですが、恐らくはスミレなのではないかと思います。聖母のシンボルの花は純潔を表す百合が有名ですが、スミレもまた謙遜のシンボルとして聖母マリアを連想させる花とされています。
ペン先はバーミンガムの古い物が着けられていました。(メーカー名は刻まれていますが詳細は不明です)恐らくは、イタリアのお土産物を英国に持ち帰り、バーミンガムのペン先をつけて使っていたのではないでしょうか。
実用でもあり、ディスプレイしても絵になる美しき筆記用具。そしてそこにひっそりと仕込まれたイタリアの風景。
ひとつひとつの要素がまるでエピソードの連なりのように物語を紡ぎ、ひとつのペンとなって今ここに在ります。
イタリアを愛する方、聖母に縁を感じる方、文具がお好きな方、そして仕掛けやレンズがお好きな方、皆様にお勧めできる、アンティークの佳品をご鑑賞ください。
◆Italy
◆推定製造年代:c.1900年代頃
◆素材:ボーン(骨)、ガラス、金属
◆サイズ(ペン先が着いた状態で):全長約21.2cm 幅約1.3cm
◆在庫数:1点のみ
◆重量:9g
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。
*ペン先は変形がみられます。
*ペン先は取り外しが可能です。日本で一般的に流通している「Gペン」を取り付けることができます。
*ペン先着脱時には指先を傷つけないように十分ご注意ください。
*詳細は画像にてご確認ください。
*新しいペン先や、画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A