ドイツアンティーク、A.W.FABER社の計算尺。
英国のアンティークマーケットで手に入れたケース入り定規。
黒い厚紙でできたケースにはラベルの他に、金の箔押しで以下の文字がみられます。
A.W.FABER
MADE IN BAVARIA
R.P. No206428
「A.W.FABER」とは1761年にドイツ、ニュルンベルク近郊の町「Stein/シュタイン」で家具職人「Kaspar Faber/カスパー・ファーバー(1730-84)」 によって設立された文具類の会社のこと。250年を超えて現在も存続している世界的企業であり、1882年に計算尺の製造を開始しています。同社は1905年に「ファーバー・カステル」に社名変更しましたが、しばらくの間は「A.W.FABER」の表記もあったようです。
また、BAVARIAとはバイエルン州もしくはバイエルン王国の事。6世紀に源をもつバイエルン公国から引き継がれたバイエルン王国は、ドイツ南部にあり、ミュンヘンを首都とし、ヴィッテルスバッハ家によって治められてきました。
1870年新生ドイツ帝国に統合されましたが、バイエルン国王は独自の称号、外交権、国軍を有し比較的自治が認めらていたといいます。第一次世界大戦末期の1918年にドイツ皇帝が廃されると、最後のバイエルン国王ルートヴィヒ3世は退位し、ここにバイエルン王国は終わりを迎えることとなります。
「R.P. No206428」とは、おそらくファーバー社の品番、もしくは登録番号と思われます。
このお品物の製造年は1910-1930年代頃と推測しますが、もし新生ドイツとなった後のものでも、「MADE IN BAVARIA」と記すことが、バイエルン人にとっては大切だったのかもしれません。
ケースを開ければ、説明書と定規が現れます。定規は木をベースにセルロイドをコーティングしたもので、中央がスライドする仕組み。金属とガラスで出来た取り外し可能なカーソルもついています。
これは「Slide Ruler/計算尺」です。
計算尺(けいさんじゃく)とは、対数の原理を利用した計算用具のこと。歴史は古く、対数のものは1614年にスコットランドのジョン・ネイピアが発表し、その6年後に英国のガンターが対数尺を考案したとされます。用途に応じて棒状や円盤状、棒状で広がるもの等があり、ほとんどのものが乗除算および三角関数、対数、平方根、立方根などの計算用に用いられます。
1970年代頃まで理工学系設計計算や測量などの用途に利用されていましたが、関数電卓の登場によって市場はほぼ無くなり、現在は一部のメーカーだけがわずかに生産しているようです。
なお、私ごとではありますが、美術系への進学にあたり、高校二年生のときから数学は放棄しておりましたので、大変申し訳ありませんが使い方のご説明はご勘弁ください。
ご参考になりそうなサイトをご紹介しておきます。
計算尺推進委員会
正直、現代において計算尺を使う用途はほぼなさそうです。ただ、このお品物は片側が27cm、片側に10inchまでの目盛りがついておりますので、一般的な定規として十分にお使いいただけるものと思います。
ボタンを押せばすぐに答えがでる電卓。数字を入力し関数を設定すれば、あっというまに答えが表示される表計算。
現代ではあたりまえのことも、100年前にはどれほどの時間がかかったのでしょうか。
アナログな計算用具を手にしながら、つらつらとそんなことを考えてみるのも良いかもしれません
◆BAVARIA
◆A.W.FABER
◆推定製造年代:c.1910-1930年代頃
◆素材:紙、木、セルロイド、金属、ガラス
◆重量(ケース含む):137g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色等がみられます。
*ケースには傷みがみられますが、定規自体はとても良いコンディションです。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A