英国アンティーク、ミニチュアチェア。
英国カントリー家具の代表格、Windsor Chair/ウィンザーチェア。
17世紀後半より英国で製作され始めたとされており、英国に自生する木、「エルム/楡」を座面とし「トネリコ/ash」や「ブナ/beech」などを他の部位に使ったものが多いようです。高級品というよりは庶民の実用的な椅子であり、貴族などのお屋敷ではバックヤードであるキッチンや使用人の部屋、もしくは庭などで使われていました。1720年代頃には移民によってアメリカにも渡り、丈夫で使いやすい椅子としてたいそう流行しました。
ウィンザーチェアの語源については複数の説があり、ジョージ2世(1683-1760)がキツネ狩の際に民家で見つけた椅子を自前の職人に作らせたとする説や、ジョージ3世(1738-1820)がウィンザー城の王室で使用していたことに由来する説などがありますが、どれも確たる証拠はないようです。ロンドン西方の町、ハイ・ウィカムは家具の町として有名であり、近くにウィンザー城があることから、そこで作られていたカントリーチェアをウィンザーチェアとよぶようになった、ともいわれます。
今回ご紹介するミニチュアチェアは、このウィンザーチェア。
「Comb-back/コームバック」とよばれる櫛型の背もたれをもつタイプで、ウィンザーチェアのなかでは一番初めに作られたデザインとされています。
余談となりますが、コームバックチェアは、別名ゴールドスミスチェアとも呼ばれたりします。アイルランド出身の小説家・劇作家の「オリバー・ゴールドスミス/Oliver Goldsmith(1730-1774)がこのタイプのチェアを所有していたことからついた名前です。
厳密にいえば、ゴールドスミスのチェアはコームバックでありますが、座面の形が円形に近い、背もたれの後ろにV字のサポートがある、等の特徴があり、微妙に今回ご紹介するチェアとディテールが異なります。ただ、今回のチェアのアーム部分のサポートの形状は、ゴールドスミスチェアのオリジナルに非常に近いように思います。
悩みましたが、今回のミニチュアチェアは、やはりシンプルに「コームバックチェア」とご紹介させていただくことにいたします。
参考;英国V&Aミュージアム所蔵 ゴールドスミスチェア オリジナル(1872年寄贈)の頁
https://collections.vam.ac.uk/item/O372245/oliver-goldsmiths-chair-windsor-armchair-unknown/
材は、座はエルム、他の部位はアッシュ思われます。エルムは杢目がはっきりした材が多く、硬いため座や脚に。アッシュは加工がしやすいため曲木部分などに。それぞれの材の特徴をいかし、ひとつのチェアに組み上げることはチェアメーカーの腕の見せ所といったところでしょうか。
ドールハウススケールでもなく、こどもの玩具でもないクオリティのミニチュアは、おそらく職人の試作品、もしくはサンプル。
英語では「APPRENTICE PIECE/アプレンティス・ピース」等と呼ばれるもので、小さな本格的な家具類をよくそう呼びます。小さく邪魔にならず、なおかつ美しいために、手放す人は少なく、市場でみかけるとなかなか強気な価格がついていることが多いと思います。
今回見つけたのは、英国北部の競馬場で行われていたフェア。
たまたま2脚、異なるデザインのミニチュアチェアを並べていた親爺殿から譲っていただきました。親爺殿によれば1880年代頃の品物であろうとのこと。私も全面的に賛成ですので、そのようにご紹介させていただきます。(もう1脚はほぼ同じサイズのホィールバックチェアです)
ウィンザーチェアの始祖ともいうべき、コームバックチェアのアプレンティス・ピース。
家具を愛する方であれば、手元に置き、そのフォルムを堪能することは最高の贅沢と言えるのではないでしょうか。
19世紀英国家具職人の技が詰まった、稀有な逸品をお届けいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.1880年代頃
◆素材:木(おそらくエルム、アッシュ)
◆サイズ:幅約13.6cm 奥行約16cm 高さ約25.7cm 座高11cm
◆在庫数:1点のみ
◆重量:103g
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や歪み、一部に補修跡等がみられます。
*実物は細身で華奢です。お取り扱いにご注意ください。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A