英国アンティーク、真鍮製の小さなG型クランプ(もしくはカポタスト)。
クランプとは、日本語で「締め具」。作業時に手を使わずに安全に材料を押さえたり、接着剤が乾燥するまで一時的に材料を押えておくのに使用される工具です。
由来は定かではないほど古く、世界中で使われており、大きさや形はその用途によってさまざまなものがあります。
さて、今回ご紹介するのはそのクランプ。
英国のマーケットで見たとき、まずはその繊細な曲線に眼を奪われてしまいました。
クランプはもちろん知っているけれど、こんな曲線遣いのものはみたことがありませんでした。
私が知っている多くのクランプは武骨な直線の組み合わせでできており、鉄やアルミ等で出来ているもの。
曲線は作りやすいからとか、引っかからないからとか必要最低限の理由で使われていたように思います。
このクランプは本体が一筆書きの「つ」のような形をしていて、上端が細く始まり、徐々に太くなっていく凝った作り。
また、特別な点がもうひとつあります。
ネジで稼働する締める部分に、サポートが2か所ついていて、平行に上下すること。
上部はフェルトが貼られており、下部にはコルクが貼られていて、対象物をしっかりとやさしく受け止めるようになっています。
さて、これは何のためのクランプなのでしょう?
販売していたディーラーによると「for String Instrument...?/弦楽器のためのもの?(たぶんね。よくわからない)」という回答。
そして「時代は古いよ。ヴィクトリアン、多分1880年くらい」とのこと。
お値段はやはりそれなりに高く・・・。よくわからないけれど、この珍しく美しい工具にどうしても惹かれて、手に入れてしまいました。
正直、調べてもこのクランプの正確な用途は不明。
ただ、このサイズ感と繊細な仕事を要求されたであろう作りから、弦楽器の為のものである、ということは何となく真実味があるような気がします。
ネジの動きはスムーズで、全体もしっかりとしており、まだまだ現役で仕事をしてくれそう。
ただ、ご使用用途によってはフェルトやコルクは張り替えていただいた方がよいかもしれません。
ヴィクトリアンの英国で、弦楽器の制作工房で使われていたかもしれない、古く美しい工具。
弦楽器の工房の方や、趣味で小さなものを作られる方におすすめ。
もちろん、ただこの工具を手に入れたい、というだけの方にも是非。
用の美を体現した姿を、お手元でじっくりとご鑑賞ください。
【追記】
このお品物は「カポタスト/Capo Tasto」なのではないか、というご指摘をいただきました。
カポタストとはイタリア語で「指板の頭(先端)」を意味し、ギターなどの弦楽器用アクセサリー、演奏補助器具のひとつ。
演奏のキーを変えるためにフレット(指板にある金属の棒)全体を抑える道具のことです。
確かに、コルクの部分を触ると垂直方向に細かな跡があり、弦を押さえていた跡のような気がします。
ここにご指摘くださったお客様へお礼を申し上げますとともに、この美しいツールの説明として追記させていただきます。