英国アンティーク、コールドペイントの犬フィギュア付蓄音機の針用トレイ。
英国の古い蓄音機の音を聞いたことがあります。
キャビネットの脇についたハンドルを回して、ストッパーを外し、カコン・・・っと回りだしたSPレコードにそっと針を乗せる。
電気を介さずに耳に入ってくる音は妙にリアルで生々しく、他にはない体験でありました。
きちんとセッティングされた蓄音機と良い状態のSPレコード、そして最適な針が合わさったときには、まるですぐそこで演奏しているように聞こえる、と蓄音機通な方はおっしゃっていました。
針はとても重要で色々な硬さや素材があり、数回使えばもう取り換える必要があります。
さて、今回ご紹介するアイテムは、その針を置いておくためのアンティーク・アイテム。
幅約18cmの木製台。金属でできた小さな蓄音機から聞こえる音に夢中な様子の犬が一匹。
彼の後ろには金属製の取り外し可能な針用のトレイがセッティングされています。
さて、皆様、HMVのニッパー君、ご存じでしょうか。
ニッパー君はもともとはイングランドの風景画家マーク・ヘンリー・バロウドが飼っていた犬のこと。
いつも客の脚を噛もうとすることから、“Nipper”(nip=噛む、はさむの意)と名付けられました。
1887年にマークが病死したため、弟の画家フランシス・バロウドがニッパー君を引き取ります。
フランシスは亡き飼い主・マークの声が聴こえる蓄音機(もしくはマークが好んでいた音楽という説もあります)を不思議そうに覗き込むニッパー君の姿を描きました。
絵のタイトルは「His Master's Voice」。
もともとはエジソン・ベル社の蓄音機:フォノグラフがモチーフだったのですが、結局はベルリーナ・グラモフォン社の蓄音機:グラモフォンの商標として、1900年6月10日に登録されました。
そしてグラモフォンの小売部門は「His Master's Voice」を略した「HMV」がブランド名・店名となっていきました。
(年代や経緯は諸説あります)
さて、本来のニッパー君は、体は白く耳とその周辺が茶色く描かれていました。
His Master's Voice by Francis Barraud (1856-1924) |
ただ、初期の頃の広告には目の周りまで色のついたニッパー君らしきポスターもありましたので、それほど厳密な訳ではなかったものと思われます。
1920年代のHMVの広告 |
今回の犬は、かなり目の周りは濃いめ。
ニッパー君、と断言してよいのかどうかは迷いましたが、英国のディーラーによれば「20世紀初めのHMVの広告用グッズ」とのことでしたので、ちょっと変わり種のニッパー君としてご紹介させていただきます。
小さな蓄音機から流れ出る彼のご主人の声。
聞こえるのに姿はない。いったい、どこにいってしまったのだろう?
見るほどに切なく、そしてあたたかい気持ちになるのは、私だけではないはずです。
蓄音機ファンの方であれば、針置きとして実用に。
もちろん、アクセサリーやカフスなどの一時置きにも最適ですので、犬好きな方にもおすすめ。
いつまでもそばに置きたくなる、英国アンティークの稀有なひとしなです。
◆England
◆推定製造年代:c.1910-1930年代頃
◆素材:木・金属
◆サイズ:幅約18.1cm 奥行き約7.6cm 高さ約7.8cm
◆重量:202g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や歪み、塗装の剥がれ等がみられます。
*蓄音機のラッパには一部に穴が開いています。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A