オーストリアアンティーク、コールドペイントブロンズ猫。
椅子に腰掛けて腕を組み、何やら物言いたげにじっと見つめてくる猫。
この擬人化された猫は、「ヴィエナブロンズ」と呼ばれる着色されたブロンズ細工で、その精巧な作りと存在感ある佇まいは世界中の蒐集家を魅了しています。
ヴィエナ/Vienna は、オーストリアの首都の英語表記で、日本ではウィーン/Wien と言った方が馴染み深いですね。
19世紀前半、ドイツやオーストリアの市民による、日常や社会生活に新しい文化を発展させたビーダーマイヤーの時代を経て、ヴィエナブロンズは、19世紀の中頃から現在に至るまで作り続けられています。
ヴィエナブロンズは、高級品として高く評価され、展示や蒐集を目的とした貴族や富裕層に向けて販売されていました。サイズは、小さな1インチのミニチュアからテーブルランプやセンターピースと同じくらいの大きさまで様々です。
モチーフは、漫画や風刺画を題材としたものや、実物そっくりにありのままの姿を詳細に表現したミニチュア化された人物や動物もあれば、エロティシズムを表現したもの、擬人化されたペットや森林動物なども多く、特に猫、カエル、犬の作品はウィーンの名物です。ヴィエナブロンズが創り出す世界観は、似顔絵、あざけり、風刺の喜びを慈しむビーダーマイヤー時代の宝物です。
コールドペイント・ヴィエナブロンズは、彫刻家の作った原型を忠実に再生できる鋳造金型を形作るアーティストによって直接設計されました。
1つのブロンズのフィギュアは、多くの場合、砂の鋳造/sand casting と呼ばれる方法によってパーツごとに鋳造され、それらを溶接して一体化、毛並みや顔立ち等を彫刻し、髭など細部まで手を加えて、画家に引き渡されます。その一連のプロセスには、多大な労力と高度に熟練した職人の技術が必要とされ、特にコールドペイントによる着色作業は、重要な要素となる表面仕上げとなり、全てが手作業によって、テクスチャーが与えられ、細部に至るまでシャープに整えられます。
コールドペイントは、当初は鉛ベースの塗料で行われていましたが、健康上のリスクがあるため、20世紀の変わり目には、油性顔料のエナメル塗料が使われています。
今回の椅子に座る猫、椅子を裏返すと BERMANN WIEN の刻印。これは、ウィーンのフリッツ・ベルマン/Fritz Bermann GmbH の作品となります。
1850年、創業者となるマティアス・ベルマン/Mathias Bermann が、ウィーン近郊のヘルナルス/Hernals に工場を設立、パイプ用の金属装飾の生産から始まって、ブロンズ製の動物の成形から色付けに移行しました。1837年の世界博覧会では、彼の作品にオーストリア政府から認識証明書が授与されています。
ウィーン美術工芸学院を卒業したフリッツ・ベルマン/Fritz Bermann が、1927年に事業を引き継ぎ、ウィーンの彫刻家やモデラーと協力し、独自のデザインによる数え切れないほどのモデルを制作しました。
第二次世界大戦中、完全に破壊された家の地下室で、彼の多くのモデルは損傷を受けずに生き残り、再建後も経済危機などにめげず生産を続けました。
1967年、フリッツ・ベルマン他界後、彼の妻が引き継ぎ、その後数社を経て、1991年からアルフレッド・キルシュナー/Alfred KIRSCHNER が、ベルマンが築き上げてきた伝統的な生産スタイルを尊重し、フリッツ・ベルマン社を所有・管理しています。
細部を表現する天才たちが手作業による魔法をかけ、優雅でグロテスク、そしてどこまでも魅惑的なブロンズ細工を生み出し、19世紀から20世紀初頭にかけて、世界中のブルジョアが蒐集に情熱を傾けた、ヴィエナブロンズ。
その珠玉のひと品は、クッションのきいた高級そうな椅子に腰かけ、腕を組み、なにかじっと考え込んでいる猫となり、貴方のお傍に置いてもらうのを待っております。
強気の相談相手として、ずっと一緒に居てくれる、小さな猫をお手元にいかがでしょうか。
◆Austria Vienna(Wien)
◆推定製造年:c.1940年代頃
◆素材:ブロンズ
◆サイズ:幅約2.3cm 奥行き約3.7cm 高さ約5.6㎝
◆重量:52g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れ、塗装の剥がれなどがありますが、とても良い状態です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A