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Saturday

煙草今昔物語 / Antique Silver Plated Snuff Box by Joseph Gloster Ltd.

 英国アンティーク、銀メッキのスナフボックス。














手で握れば包み込んでしまえるほどの小さな箱。こぶりながらもずしりと重いこの箱は、「Snuff Box/スナフボックス=嗅ぎ煙草入れ」です。



嗅ぎ煙草。


現代日本では愛好者は少ないかと思います。


嗅ぎ煙草は煙が出ない無煙たばこと呼ばれる煙草の一種のこと。乾燥タイプと湿性タイプがあり、煙草の葉を細かく砕いたものと、様々なフレーバー成分をブレンドさせて作ります。

鼻腔内に乾燥嗅ぎ煙草を塗りつける、もしくは吸い込む。あるいは口腔内で頬の内側と歯肉の間に湿性嗅ぎ煙草を入れて愉しむものです。もちろん現代でも製造販売されており、日本ではネット販売や専門店などで手に入れることが出来ます。


歴史は古く、もともとはブラジルの先住民が煙草の葉を挽いて愉しんでおり、コロンブスの第2回新大陸航海の際に修道士がそれをもってスペインに帰国したことからヨーロッパに広まったとされています。18世紀になると嗅ぎ煙草は上流階級で好まれるものとなり、英国ではアン女王の時代(1702~14年)に大層流行しました。「貴族の贅沢品」のイメージが強く、嗅ぎ煙草を入れておくための「Snuff Box/スナフボックス/嗅ぎ煙草入れ」は贅を凝らしたものも多く見受けられます。

健康上の問題などから近年はそれほど需要はありませんでしたが、2007年に英国で喫煙規制(屋内完全禁煙、煙草の陳列販売禁止等)が出されたのち、嗅ぎタバコはある程度の人気を取り戻したともいわれています。副流煙が無く、健康上のリスクはすべて自分だけが負う嗅ぎ煙草は、ある意味で再び時流に乗るのかもしれません。


そんな嗅ぎ煙草を入れるためのスナフボックスは、英国アンティークでは定番のアイテム。高級品ではスターリングシルバー、次いで銀メッキ。そして真鍮製やパピエマシュ等、様々な材で工夫を凝らしたものが沢山作られてきました。


今回ご紹介するスナフボックスは銀メッキのお品物です。表面には手彫りの唐草文様があしらわれ、上蓋中央には「VACANT CARTOUCHE/ヴァーカント・カルトゥーシュ」があります。場合によってはここに持ち主のモノグラムを入れたのでしょう。やや固めの蓋を開けば、以下の文字がみられます。


J.G Ltd

E P N S


「E P N S」は飾り文字で非常に読みにくいですが、おそらくこの解釈で合っていると思います。これは「Electro Plated Nickel Silver」のこと。日本では俗に「洋白銀メッキ」とよばれ、真鍮にニッケルを加えた合金の上に銀メッキを施したものが一般的です。


また「J.G Ltd」のマークはバーミンガムのシルバースミス「Joseph Gloster Ltd」が1918-1942年の間に使用していたものです。同社は1880年に設立され、ビクトリア時代から1960年代まで、スターリングシルバーと銀メッキの製品で高い評価を受けていました。



クオリティの高い小箱は、アクセサリー等大切な小さな物を仕舞っておくのに最適。小箱としてギフトを入れるのもよろしいかもしれません。もちろん、嗅ぎ煙草愛好家の方にもお役立ていただけるかと思います。


かつて一世を風靡した喫煙習慣。

弊害があるにもかかわらずいまだ続いていることに、驚きと興味深さを感じながら、小さな箱を愛でてみるのはいかがでしょうか。




◆England

◆Joseph Gloster Ltd

◆推定製造年代:c.1920-1930年代頃

◆素材:銀メッキ

◆サイズ:幅約5.1cm 奥行き約3.2cm 高さ約1.5cm

◆重量:46g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*蓋の開閉はややきつめですが、しっかりと閉まります。

*現段階で特別な匂いなどは全く感じません。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A


贅沢な材で大真面目に造られたギミック / Antique Partners Small Drawer

 英国アンティーク、凝った仕様の小抽斗。




















英国のアンティークセンターで手に入れた、小さな抽斗。


美しく整った姿をしていて、構造材はマホガニー、表面はローズウッドの化粧貼りという贅沢な造りをしています。天板は周囲が黒塗装のエボナイズド、中央が2枚の化粧板を対称に貼ったブックマッチ、周囲はまた違う杢目を巡らせたパーケットリーとなっています。作られた時代は古く、ヴィクトリアンやや後期、1880年代頃と推測いたします。


そして何よりも興味深いのが、抽斗が前後どちらからも引き出せる、ということ。


一瞬「え!?」と思う方も多いことでしょう。前後どちらも同じデザインで、ひょっとして飾りかな、と思いながら引っ張ってみれば、どちらからも引き出せる・・・!一体なんの目的でこのような造りにしたのか、とても興味深いものがあります。


さて、英国のアンティーク家具で「パートナーズデスク」というものがあります。2つのデスクが向かい合わせでくっついているというもので、二人が向かい合って執務するのにちょうど良いデスクです。でも一体ですので、当然横並びはできません。日本人ならば「2つのデスクにした方が使い回しが効くのに」と思うのではないでしょうか。


このように英国の家具は「その目的の為だけに作られた」家具が色々あります。

ダイニングテーブル、ブレックファーストテーブル、ティーテーブル、ランプテーブル、ドレッシングテーブルにネストテーブル。ドローリーフテーブル、レフェクトリーテーブル、ホールテーブルにライティングテーブル。


「テーブル」と名の付くものだけでざっと挙げてもこのくらいあります。

日本では「ちゃぶ台」だけで済ませてしまいそうですね・・・。

「どこでも使いまわせる最大公約数的な家具をつくる」のではなく、「その目的のために追求した形の家具を作る」という行為が、昔の英国の中産階級以上では行われていたという事かと思います。



少し話がそれましたが、今回ご紹介するドロワーは、先日のパートナーズデスクで使うのに最適かと思います。なかに必要な物を入れておき、二人がどちらからでも使うことができる。なんて素晴らしいんだ!・・・ということなのかもしれません。


もちろん通常の小抽斗として十二分に機能いたしますので、デスクトップの収納にいかがでしょう。どちらからでもアクセスできる特性を活かして、カウンターなどでお使いいただくのも楽しいのではないでしょうか。



贅沢な材で大真面目に作られた、クスリと笑える英国アンティークの逸品。そこには時代背景と国民性が現れているような気がします。是非お手元でご堪能ください。



◆England

◆推定製造年代:c.1880年代

◆素材:木(マホガニー、ローズウッド)、真鍮

◆サイズ:幅約28.6cm 奥行約14.9cm 高さ約14cm 

◆抽斗内寸:約21.8×9cm 深さ約6.7cm

◆重量:1168g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、材の剥がれや傷み等がみられます。

*それほど目立ちませんが一部モールディングが失われている箇所があります。

*抽斗の内寸は狭い方で約9cmです。小さめの葉書は入りますが、一般的な官製はがき(14.8×10cm)は斜めにしないと入りません。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。 





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A


地の果てから灯台を臨む / Antique Miniature Carved Cornish Serpentine Lighthouse

 英国アンティーク、ミニチュアの灯台。














英国のアンティークマーケットで手に入れた小さな灯台。


当店では以前に一度取り扱ったことがございます。材はコーニッシュ、サーペンタイン・ストーン。


「サーペンタイン/Serpentine」とは蛇のこと。一般的には「Snake/スネーク」よりも大きな蛇を指します。例えば旧約聖書においてイブにリンゴを食べさせた大きな蛇は「サーペンタイン」と表現されています。


余談ではありますが、英国ではS字のような複数の曲線が組み合わされた曲線を「サーペンタイン」と表現します。前面がくにゃりとした曲線をもつキャビネットは「サーペンタイン・キャビネット」などと言われています。



つまり、サーペンタイン・ストーンとは日本語で蛇紋岩のこと。そして「コーニッシュ」というのは「コーンウォールの」ということ。


蛇紋岩は世界中に広く分布しますが、英国ではコーンウォールの海岸に多くあることで有名。「Kynance cove/カイナンス・コーブ/カイナンスの入り江」が特にその美しさでに名高く、ヴィクトリアンの初期に人気を博し、ヴィクトリアン女王やアルバート王子等、多くの著名人が訪れたといいます。色味は暗めの赤や緑など表情豊かで、比較的加工しやすいことから、多くの加工品がつくられています。



今回ご紹介する灯台もそのうちのひとつ。このタイプの灯台は大きなものから小さなものまで、コーンウォールのお土産物として作られてきました。


よく見れば手彫りで「Lands End」の文字が見えます。「Lands End/ランズエンド」とはコーンウォールの西端に位置するペンウィズ半島の、突端にある岬のこと。「グレートブリテン島最西端」でもあると言われてきましたが、実際はスコットランドのCorrachadh Morの方が、約36km(22マイル)西にあるため、最西端ではないことがわかっています。


ただ、切り立った崖が海に落ち込み、荒涼とした様はまさにランズエンド=地の果てに相応しい雰囲気をもっていることは間違いございません。

沖合約2kmにはロングシップ諸島という小さな島が点在し、そのうちのひとつには18世紀後半にロングシップ灯台が建てられました。石で出来た円筒形の三階建てだったといいます。ちなみに現在は19世紀にたてられた2代目の灯台が建っており、ソーラーパネルによる照射を行っているそうです。


正直、石なので製造年代などははっきりわかりません。1930年代頃というのは、販売していたディーラーのおじ様の言葉からそのままのご紹介とさせていただきます。形としてはオリジナルの18世紀のロングシップ灯台に近いと思います。


自然が生み出した豊かな文様をもつ小さな灯台。コーンウォールの海岸、地の果てから来た、悠久の時を感じさせる自然の産物は、これからも変わらない姿で貴方の行く先を照らしてくれそう。


ミニチュアとして飾っていただいても、リングスタンドとしてお使い頂いても素敵です。いつまでもおそばに置いていただきたい、小さな英国アンティークです。



◆England

◆推定製造年代:c.1930年代頃

◆素材:サーペンタイン・ストーン

◆サイズ:高さ約8.5cm

◆重量:152g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像のリングは大きい方が21号、小さい方が11号です。大きさのご参考にどうぞ。

*画像のリングや備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。






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by d+A


ベツレヘムのロバの脚 / Antique MOP Donkey Hoof Bible Bookmark "Bethlehem"

 ベツレヘムのアンティーク、マザーオブパールのブックマーク。












Bethlehem/ベツレヘム。


ヨルダン川西岸地区南部にあり、新約聖書ではイエス・キリストの生誕地とされている町です。


この町で有名な工芸品と言えば「ベツレヘムパール」。マザーオブパール/白蝶貝に、職人の手仕事で穴を開けたり削り出された美しい工芸品は古い歴史をもちます。


ベツレヘムでこの高い加工技術か゛確立したのは15世紀頃、巡礼のためにベツレヘムを訪れた修道士たちによってもたらされたといわれています。品物としてはアクセサリーや小物類が多いですが、家具に象嵌したり、建物の装飾に使われたりと幅広い用途に使われています。



今回ご紹介するのは、そのベツレヘムパールのブックマークです。


艶やかで虹色を秘めた輝きをもつマザーオブパールを削り出し、小さなブックマークに仕上げてあります。フラットな部分には「Bethlehem」の文字。そして持ち手の部分は「DONKEY HOOF/ロバの脚」となっております。


ロバといえば、キリスト教において非常に象徴的な動物のひとつ。新約聖書によれば、イエス・キリストのエルサレム入城の際に乗っていたのは「子ロバ」です。

ソロモン王の時代にエジプトから馬が輸入され、王や貴族は立派で大きな馬に乗るようになりました。そして、ロバは庶民の乗る家畜、荷物を運ぶ家畜となります。つまり卑しい存在、価値の低い存在、取るに足りない存在、劣った存在とみられるようになります。そのロバに乗るという事で、自分から「神のしもべ」となり、神に完全に服従するということを表しているとされます。(諸説あります)




そんなロバの脚を模したブックマーク。

手に入れたのは英国のマーケットですが、販売していたディーラーによれば「Bible Bookmark/聖書の栞」であるとのこと。おそらくベツレヘムのお土産物で、かなり古い物であるけれども、ほとんど使用跡のない珍しいものである、との説明も受けました。

持ち主はベツレヘム旅行(巡礼?)の時に手に入れたブックマークを、大切に仕舞っておいたのではないでしょうか。


現在では受け継ぐ職人の減少や、世界情勢により年々少なくなっているというベツレヘムパール。ゆっくりと謙虚に、でも堅実に歩き続けるロバの脚とともに、古く美しい工芸品をお届けいたします。




◆Bethlehem

◆推定製造年代:c.19世紀

◆素材:マザーオブパール

◆サイズ:幅約1.5cm 長さ約11.9cm 厚み約0.5cm

◆重量:8g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古い物ですのわずかに小傷や汚れなどみられますが、とてもよいコンディションです。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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