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Saturday

馬、聖ミカエル教会そしてゴディバ伯爵夫人/ Antique Horse Head Dip Pen with Stanhope Lens "ST. MICHAELS COVENTRY"

 英国アンティーク、馬頭のスタンホープ覗き窓付ディップペン。


















英国のアンティークフェアで手に入れた、凝ったフォルムのディップペンのご紹介です。


柄の部分には小さな丸いレンズが嵌めこまれています。この仕組みは通称「スタンホープ」といいます。

まず、「スタンホープレンズ/Stanhope Lens(もしくはスタンホープ)」とは、18世紀後半に英国の化学者、Charles Stanhope伯爵が発明した両面共に凸形状の拡大鏡のこと。後にフランス人写真家の Rene Dagron が、自身が使い易いよう改良したものが一般的になったと言われています。このスタンホープは拡大率が高いため、ごくごく小さな写真(マイクロフォトグラフ)も拡大してみることが可能でした。

そのため、たとえばロザリオ等の中心にスタンホープを組み込み、なかにマイクロフォトグラフを仕込んで、各地のお土産物として販売することが、1870-1910年頃まで大層流行しました。レンズ自体が2ミリから3ミリとかなり小さい上に、マイクロフォトグラフを撮影するのも大変な作業だったとか。ただ、小さいが故に色々なアイテムに組み込みやすく、スタンホープコレクターもいるというこだわりの仕掛けとなっています。


今回のお品物のスタンホープレンズを光に向かって覗き込めば、そこにはモノクロ写真とタイトルを確認することが出来ます。


St Michaels Coventry

聖ミカエル教会 コヴェントリー


Coventry/コヴェントリーはイングランド中部に在る都市。チョコレートで有名な「Godiva/ゴディバ」とも縁のある町です。

ゴディバは1926年創業のベルギー・ブリュッセル生まれのショコラトリーですが、名前は11世紀イングランドのゴディバ(ゴダイヴァ)伯爵夫人からとられています。

それはこんな伝説から。


コヴェントリーという町は、1043年、領主であったレオフリック伯爵により大修道院が設立されたことがきっかけで発展したとされています(諸説あります)。

町を大きくすべく伯爵は次々と建物を建築しますが、費用が掛かるため領民への税は増え続け、民は貧困に苦しみました。

ゴディバ伯爵夫人は税を引き下げるように伯爵に嘆願しますが、「もしおまえが一糸まとわぬ姿で馬に乗り、コヴェントリーの町中を廻れたなら、その時は税を引き下げて建設計画を取り止めよう。」と言われてしまいます。

翌朝、夫人は一糸まとわぬ姿で馬に乗り町を廻りました。領民たちはそんな彼女の姿を見ないように、窓を閉ざし敬意を表しました。そして伯爵は約束を守り、ついに税は引き下げられました。


この伝説に感銘を受けたショコラトリー創業者の息子ジョセフと妻ガブリエルによって「ゴディバ」と命名されたそうです。よってゴディバのマークは「一糸まとわぬ姿で馬に乗ったゴディバ伯爵夫人」となっています。また、この伝説にちなんで、コヴェントリーの中心部には、馬に乗ったゴダイヴァの像が建っています。




そう、馬です。


今回ご紹介するディップペンには先端には馬の頭が彫られています。

スタンホープの中の聖ミカエル教会は14世紀後半から15世紀前半の建造物であり、ゴディバ伯爵夫人と直接の関係はありませんが、コヴェントリーの町のひとつの象徴として「馬」は大切なシンボルであるのかもしれません。(ちなみに聖ミカエル教会は第二次大戦時にドイツによる空爆でほぼ壊滅し、現在はグレードIの廃墟として保存されています)


恐らくこのディップペンは町の象徴である馬、そして聖ミカエル教会を封じ込めたコヴェントリーのお土産物であると思われます。


なお、嵌めてあるペン先はバーミンガムの「JOHN MICHELLE」のもの。ほぼ使われていないコンディションで、三つ葉のマークが可愛らしいペン先です。

実用でもあり、ディスプレイしても絵になる美しき筆記用具。そしてそこに仕込まれた今は無き聖ミカエル教会の姿。


聖地の風景を柄に閉じ込め、町の象徴を彫り込んだディップペンは、まさに大切な人へのメッセージを綴るために生まれた物といっても良いでしょう。


メッセージを綴り、心を綴る。100年越しの想いを込めた、稀有な筆記具を貴方の物としてください。




◆England

◆推定製造年代:c.1870-1890年代頃

◆素材:木、ガラス、金属

◆サイズ(ペン先が着いた状態で):全長約22cm 

◆在庫数:1点のみ

◆重量:7g




【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色がみられます。

*ペン先は取り外しが可能です。日本で一般的に流通している「Gペン」を取り付けることができます。

*ペン先着脱時には指先を傷つけないように十分ご注意ください。

*ペン先を取り付ける金属部分は抜けることがあります。また嵌めこめばご使用いただけます。

*詳細は画像にてご確認ください。

*新しいペン先や、画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。




アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

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Todd Lowrey Antiques

by d+A