英国アンティーク、パピエマシェのプレート。
英国のアンティークセンターで手に入れたパピエマシェのプレートのご紹介です。
「パピエマシェ(パピエマシュとも)/Papier mache」とは、フランスで1720年代頃から使われ始めた素材・技法のこと。
紙パルプに水、膠、スターチや腐敗を防ぐ為の塩、もしくはチョーク(白亜)や時に砂などが加えられ、型に入れ乾燥させたり焼き上げたりするもので、箱やトレイなどの小物から、後にテーブルや椅子などの家具にまで使われました。
英国には17世紀後期に入ってきたとされ、1830年代頃には改良され,耐熱性も強くなり,ビクトリア時代の複雑な曲面や曲線を必要とする椅子やテーブルなどの部材として広く使用されました。
基本的に黒い製品が主流であり、これにペイントや象嵌、蒔絵などが施すことにより芸術性が高まり、ヨーロッパで流行していた東洋趣味ともあいまって、かなりな需要があったようです。
今回ご紹介するプレートは、パピエマシェのセオリー通りの黒色ベース。全体にうっすらと金が乗っており、特にプレート上部のアカンサススクロールの優美な表現が目を惹きます。
中央には建造物が描かれており、右下には数人の人物像とともに以下の文字が見られます。
Kelso Abbey
「Kelso Abbey/ケルソー修道院」はスコットランドのケルソーにある廃墟となった修道院のこと。
建立は12世紀。当時発展途上のスコットランド王国の南の中心地に建てられ、その後幾度となくイングランド軍に破壊されましたが、何度も再建されました。1460年以降は安定を取り戻しましたが、16世紀半ばには、数々の激動の出来事が重なり、修道院は事実上機能を停止し、建物は廃墟となりました。
スコットランドにおけるロマネスク建築の最も壮麗な例の一つとされ、現在は史跡としてスコットランド歴史環境局により管理されています。ご興味のある方はより詳しい歴史が紹介されておりますので、よろしければご覧ください。
スコットランド歴史環境局
ケルソー修道院の頁
https://www.historicenvironment.scot/visit-a-place/places/kelso-abbey/history/
今回のプレートは残念ながら中央部にインクのような黒い染みがあり、修道院の全体像はよく見ることができません。それでも、覗き見えるアーチ型の窓や重厚な柱が、存在感溢れる史跡の雰囲気を感じさせます。
プレートの左右には穴が開いており、もともとはここに紐を通して壁にかけていたと思われます。エッジ部分二か所にカケがみられますが、表面からはそれほど目立たないかと思います。
ヴィクトリアンのお屋敷の壁を飾っていたであろうパピエマシェのプレート。ヴィクトリア時代には既にもう廃墟となっていたケルソー修道院が描かれたプレートは、装飾性のみならず、ゲストへのカンバセーション・ピースのひとつとして楽しまれていたのではないでしょうか。
重なる材と色、そしてモチーフや経年変化が織りなす景色は、重なる歴史を体現するよう。ひとつのアートピースとして愛でていただきたい、ヴィクトリアンの佳品をお届けいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.1850-1870年代頃
◆素材:パピエマシェ
◆サイズ:直径約21.9cm 厚み約1.3cm 中央の平らな部分直径約12.2cm
◆重量:126g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や傷み等がみられます。
*説明書きと写真にもございますが、2か所に欠けが、中央に染みがございます。
*目立ちませんが、向かって右下には少々ヒビがございます。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A