英国アンティーク、スターリングシルバーとエボニーのウォーキングステッキ。
17世紀、男性が剣を持たなくなった代わりに持ちはじめたといわれるステッキ。剣のかわりにステッキを、盾のかわりに帽子を持った英国紳士は、武器であり装飾品であるそれらにどれほどの愛着を持っていたのでしょうか。
今回ご紹介するのは、その愛着のほどがわかるとても珍しいアンティークのステッキです。
形状としては「T型ハンドル」などと呼ばれる直線的なT型の持ち手、シャフトにはスターリングシルバーのカラー、そして南洋風な菱形の彫刻が施されているのが特徴です。
まずはスターリングシルバーのホールマークを確認してみましょう。
カラーのホールマークは、左からメーカーズマーク、ライオンパサント、チェスターのアセイオフィスのマーク。そして右端のデイトレターは大文字の「P」。チェスターでこの字体の「P」のデイトレターが使われていたのは1898年です。また、チェスターのアセイオフィスは1962年には閉鎖されていることを申し添えておきます。また、メーカーズマークはかなり潰れており、メーカーの特定はできませんでした。
そして特徴的な黒く固いシャフト。このシャフトは「Ebony/エボニー/黒檀」と思われます。
銘木、黒檀。
インドやアフリカなどで自生する南洋材で英国をはじめヨーロッパでは自生しない木です。黒く艶めく美しい材はヨーロッパでは大変貴重とされ、多くの最高級家具や贅沢な小物などが製作されてきました。フランス、ヴェルサイユ宮殿ではルイ14世の家具職人、「Andre Charles Boulle/アンドレ・シャルル・ブール(1642-1732)」が作り出す、鼈甲と銅板の象嵌技術で彩られた黒檀の家具が来訪者を驚嘆させていたといいます。また、憧れはあるがなかなか手に入らない・・・そんな需要にこたえ、通常の木材を黒く塗ることを「エボナイズド」とし、その手法でも多くの良い家具が作られました。
そんな憧れの材、黒檀。
ヴィクトリアンの富裕層では、黒檀でできたドレッシング小物がよく使われていました。小箱に手鏡、ブラシにピンディッシュ。シックな色合いと目の詰まった心地良い手触り、そして醸し出すオリエンタリズムと高級感は、当時の人々の心を強く掴んでいたようです。
当店では「エボニー」の小物類、そして「エボナイズド」のステッキは多く扱ってまいりましたが、「エボニー」のステッキは初めてのご紹介となります。
黒く重く、目を凝らしても見えないような杢目の部分が多いエボニーですが、このステッキは持ち手部分にわずかに杢目を感じることができます。そして、恐らくは適する材が長くとれないため、シャフトの中間あたりに継ぎ目がございます。その部分はおそらく真鍮で、当初は黒く塗られていたようです。現在は黒の塗装は半ばはがれており、程よい景色のアクセントとなっています。
1898年、ヴィクトリア時代の終わり頃。黒い神秘的な材で作られたステッキは、どんな紳士が愛用していたのでしょうか。
これだけの固さがあれば、軽く戦えてしまうくらいな印象ですので、護身用の一本としても活躍したのかもしれません。
これからは、是非あなたのお手元に。
頼りがいがある老練なボディガードに見立てて愉しんでみるのも一興かと思うのですが、いかがでしょうか。
◆England
◆Chester
◆推定製造年代:c.1898年
◆素材:木(おそらく黒檀)、スターリングシルバー、他
◆サイズ:長さ約86cm 持ち手幅約11.2cm 持ち手直径約2.2cm
◆重量:383g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、歪みや変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*シャフトはしっかりしています。体重をかけてもほとんどしなりません。
*石突部分の金属はございません。ご使用の際にはゴムキャップ等を付けることをお勧めいたします。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A

















