英国アンティーク、ウィリアム&メアリー様式の小さなチェスト・オン・スタンド。
チェスト/chestとは一番古い家具の一種で、もともとは櫃(蓋つきの木箱)のことをさします。
日本で一般的な「引き出しのついた収納家具」のことは、「引き出す」の意味の「drawer/ドロワー」が加わり「チェスト・オブ・ドロワーズ」とよびます。
また、櫃(蓋つきの木箱)に脚がついたものを「チェスト・オン・スタンド」とよびます。先にまず箱状のチェストがあり、そののちに脚がついてきたものと思われます。
ただ、「引き出しのついた収納家具」に脚がついたものも、通称は同じ「チェスト・オン・スタンド」とよびます。
おそらく正式には「チェスト・オブ・ドロワーズ・オン・スタンド」なのでしょうが、さすがに長いせいでしょうか、「チェスト・オン・スタンド」と呼ばれることが多いようです。
前段が長くなりました。
今回ご紹介するのは、英国アンティーク家具のなかでも歴史の古い「チェスト・オン・スタンド」です。そして、実用に便利な引き出しタイプ。
イングランドの大きなアンティーク・フェアで手に入れた小さなチェスト・オン・スタンドは、単なる小さな引き出しではなく、まさに正統派英国家具のミニチュア版ともいえる完成度を誇っております。矩形の上部に対し、表情豊かなスタンド=脚部が出色。この意匠は「ウィリアム&メアリー様式」であるといえます。
ウィリアム&メアリー様式とは、ウィリアム3世と妻メアリー2世の共同統治時代(1689-1702)の様式のこと。オランダ人であったウィリアム3世がオランダから優れた家具職人を集め、英国ではそれまで以上に装飾性豊かな家具がつくられるようになりました。
流麗な曲線や躍動感溢れるカーヴィングは、重厚でありながら快活なスタイルを確立し、その後に続くクィーンアン様式とともに英国家具史の黄金期の始まりとなりました。
ウィリアム&メアリー様式とクィーンアン様式との大きな違いのひとつは脚。
しなやかなカブリオレレッグ(俗にいう猫脚)が特徴のクィーンアン様式に対し、
ウィリアム&メアリー様式は脚の間に入れられたストレッチャー(貫)があるのが主流。
それも直線ではなく、多くが円弧などの曲線を取り入れた形状をしており、脚の先端は球状となっている物が定番となっています。
今回ご紹介する小さなチェストの推定製造年代は1930年代頃。
ウィリアム&メアリーの時代から200年以上が経過しておりますが、それだけ長く愛されている英国家具のひとつの定番スタイルであるといえると思います。
仕上げはウォールナットの化粧張り。
天板はブックマッチと呼ばれる張り合わせで、杢目がまるで本のページを開いたように対称となっています。周囲はクロスバンディングとよばれる枠取りの張り合わせ。
引き出しの前板にもクロスバンディングが施され、上段下段の杢目は連続性があるように貼られています。
取っ手は真鍮製のドロップタイプ、全体の構造体はオークと、まるで本物の家具さながらのクオリティです。
ストレッチャー(貫)の部分に2か所補修跡がみられますが、裏から丁寧に補助の木をあてており、大切に直され、愛されてきた様子が伝わってきます。
デスクトップや棚に置けば、その存在感は抜群。
しっとりとした古艶をもつウォールナットは飴色に輝き、格式溢れるフォルムを彩っています。
英国アンティーク家具の歴史の1頁を確かに感じさせる、ミニチュア家具の傑作。
どうぞお手元でご鑑賞ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1930年代頃
◆素材:オーク・ウォールナット
◆全体サイズ:幅約19.6cm 奥行き約12cm 高さ約20.4cm
◆引き出し内寸上段:幅約16.3cm 奥行き約9.4cm 深さ約3.7cm
◆引き出し内寸下段:幅約16.3cm 奥行き約9.4cm 深さ約3.7cm
◆重量:716g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、補修跡などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*引き出しに現在の官製はがき(10×14.8cm)は入れることが出来ません。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A