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Friday

緻密な美を極めたジョージアンの顕微鏡/ Antique CARY-GOULD Type Brass Pocket Microscope

 英国アンティーク、ケアリー・グールド型真鍮ポケット顕微鏡。




















とても珍しくも美しい光学機器のご紹介です。




手に入れたのは英国のアンティークフェア。


屋外にも沢山のディーラーが品物を並べておりますが、大きな倉庫のような場所に、ジュエリーや、お値段が高目なアイテムを扱うディーラーが軒を連ねるところもあります。

その中の1軒。

沢山の望遠鏡や双眼鏡、コンパスや機器類など「メカもの」を扱う小さなストールがあります。店主は小柄な眼鏡のおじさま。品物について質問すれば、必ず答えが返ってくる、愛すべき、そして信頼すべき店主です。



そのフェアに行くたびに訪れる彼のブースから、今回もスペシャルな逸品を手に入れました。


まず外見は、ミニマムなマホガニーの小箱。大きさはハガキより少し大きいくらいで、蓋の上隅が切られた幾何学的に美しい形をしています。凝ったフォルムのエスカッチョンプレート(鍵穴周りのプレート)は真鍮製で、蓋には真鍮の受けがはめ込まれています。


蓋を開けてみれば、みっちりと詰め込まれた真鍮製のパーツが現れます。ぎざぎざの段が彫られた支柱、円筒形の鏡筒。いくつかのレンズにプレパラート。そして小さなクリップがついたアームなどなど。



これは「CARY-GOULD Type Brass Pocket Microscope/ケアリー・グールド型真鍮ポケット顕微鏡」です。(もしくは「Gould-type microscope」ともよばれます)



まず、「William Cary/ウィリアム・ケアリー(1759-1825)」とは、ヨークシャー州ハリファックス出身の天文学者・数学者である「Jesse Ramsden/ジェシー・ラムスデン(1735-1800)」に師事し、ロンドンのストランドにおいて「CARY」ブランドの地球儀や光学機器、計測機器などを製造・販売していたことで知られる人物です。そして「Charles Gould/チャールズ・グールド」はケアリーの元で働いており、彼は1820年代にこのタイプのポケット顕微鏡を設計しました。


「CARY LONDON」の刻印が入った顕微鏡も存在するようですが、刻印がないものも多く、アンティーク市場では「CARY-GOULD Type」もしくは「Gould-type」の通称で、1825-1850年頃のものとして流通しています。今回は販売していたおじさまの言葉通り、1830-1840年代のものとしてご紹介させていただきます。



英国のサイエンス・ミュージアム・グループのサイトで、同タイプの顕微鏡が掲載されておりますので、よろしければご確認ください。


Gould-type microscope by Cary

https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co119339/gould-type-microscope-by-cary




使い方としては、まず支柱を蓋にねじ込み、その上に鏡筒をねじ込むことで使用可能となります。


そして鏡筒の下部に付属のレンズを挟むようにねじ込むことで、倍率の調整が可能となります。レンズは複数枚ございますので、組み合わせにより倍率を変えることができる、という仕組み。


小さなクリップ状のアームも付属しており、これをステージにはめ込めば(ねじ込みではなく穴に落とし込むだけです)、なにかを挟んで観察することもできます。元から3枚のプレパラートが入っておりましたので、そのうちの1枚をみたところを写真にしてみました。物が何なのかは不明です。他にもいくつか用途がよくわかならいものも入っており、そのあたりは是非お手元で使いながら推測していただければ、と思います。



なお、箱用の鍵が1点付属しますが、正直に申し上げて施錠には問題が少々ございます。鍵箱の中のバネが弱っているせいか、それとも鍵自体がぴったり合ったものでないのかは不明ですが、施錠できるときとできないときがあり、それはつまり解錠できるときとできないときがある、ということになります。


施錠をお試しになりたいときは、まず箱の蓋を開けたままで、鍵を回してみてください。鍵の差し込み具合で鍵箱の中の鎌がでることが観察できると思います。まずそこでコツをつかんでから、施錠・解錠されることをおすすめいたします。



ジョージアンの時代に設計されたケアリー・グールド型顕微鏡は、凝った繊細な設計のため大量生産には向いていませんでした。その後ヴィクトリア時代に、より効率的な顕微鏡が多く作られたこともあり、生産数はそれほど多くなく、良い状態で現存しているのは非常に珍しいと言えます。


英国光学機器の膨大な歴史のなか、ほんの一頁ではありますが、緻密な美を極めた顕微鏡が存在したことを、確かに伝えてくれる貴重な逸品。


ジョージアンの科学者のこだわりを、ぜひ貴方のお手元でご堪能ください。



◆England

◆推定製造年代:c.1830-1840年代頃

◆素材:木、真鍮、ガラス、他

◆箱サイズ:幅約16cm 奥行約10.9cm 厚み約5.2cm

◆顕微鏡を立てた時のサイズ:約30cm~

◆総重量:608g

◆在庫数:1点のみ(箱を開けた時に木箱に入っているレンズやプレパラートなどはすべて付属します)




【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。

*箱の鍵は付属しますが、施錠には問題があります。説明文をご参照ください。

*ミラーには若干傷みがございます。ガラス裏面のものですので、拭いてもとれません。

*箱の内蓋の生地には破れが見られます。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。 





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。




Todd Lowrey Antiques

by d+A